ICOの問題点:調達した約2,140億円の大半がプライベートセール

成長を続けるICO市場
2018年に入ってから、ICO市場ではすでに「$20億(約2,140億円)」を資金調達。2017年の「$57億(約6,100億円)」という規模を確実に上回る情勢です。
ICOの実状
しかし、2018年に入ってから一部投資家向けの「プライベートセール」をより優先するようになり、富裕層がさらに金を稼げる仕組みが加速。このことで一般投資家が恩恵を得にくく、「資金調達の民主化や、コミュニティの多様化」といった本来の目的から逸脱しつつあるという現状があります。

ICOを取り巻く環境の変化

2018年のICOは安定した水準を保っていたものの、投資家たちのICOに対する渇望は未だ満たされていません。

今年はすでに「$20億(約2140億円)」が調達されており、2017年に調達された「$57億(約6100億円)」を確実に上回る情勢です。

しかし、このICOは徐々にプライベートセールに焦点が当てられて来ており、一般投資家たちは「不利な条件」で戦わなくてはならなくなって来ています。

データによると、2018年のICOの84%は、プライベートセール及びプレセールによるものだとされています。

富裕層がより豊かになるプライベートセール

ICOが開始された当初は、「資金調達の民主化や、コミュニティの多様化」を目的としていました。

しばらくの間はその目的に沿っていましたが、近年ではその状況が変わりつつあります。

昨年にも、プライベート投資家は優良ICO参加への優先権を持っており、「BAT(Basic Attention Token)」が、ものの数分で完売。

クジラ(大量の仮想通貨を保有する人物)によって買い占められたのは有名な話です。

2018年にその動きが加速したことで、一般投資家が参加可能な「クラウドセール」は補足のような扱いになっています。

大半のアクションが、プレセールやプライベートセールによって行われ、一般販売ではわずかな旨味しか残されていないのです。

「Tokendata」によって公表されたデータによると、ICOに投資された「$19.7億(約2,108億円)」のうち、84%にも上る「$16.3億(約1,745億円)」がプライベートセールに参加した投資家によるものだとされています。

さらにこのデータには、先日報道されたTelegramが募集した「$8.5億(約910億円)」のプライベートセールにおける数字は含まれていません。

Telegramは、2月末に「$6億(約642億円)」のプレセールを終了予定ですが、先行投資家たちは、その時点ですでに2倍近い利益を手にしていると思われます。

このようなプロジェクトは、富裕層をより豊かにするのに成功するかも知れませんが、実際にプラットフォームを使用するユーザー達をプロジェクトに引き入れるという目的に適しているとは言えません。

ICOによる、ささやかな利益分配

「Tokendata」に含まれている、2018年に行われた「94のICO案件」のうち、28案件はすでに取引所で実際の売買が可能になっています。

この段階で、ICOにて購入したトークンを取引所で売却した場合の平均ROI(投資利益率)はわずか2.17倍で、ETHはほんの0.75倍に過ぎません。

したがって、大抵の場合は「イーサリアムを年初からそのまま保有しているよりも、トークンに変えたほうが利益率が高い」と言えます。

2018年ICO過程

-プライベート事前シードラウンド -95%オフ

-プライベートシードラウンド -90%

-シードラウンド -85%

-友人、家族ラウンド -75% ボーナス

-企業組合事前販売 -60%

-プライベート事前ICO -50% ボーナス

-事前ICO -40% ボーナス

-一般公開ICO

このように、プレセールでの過剰なディスカウントによって、プライベート投資家の方が、一般投資家よりも遥かに利益を出しやすいことがわかります。

また、プレセールで購入した投資家は、販売されたトークンが取引所に上場され次第、初値で売り抜けることが可能です。

一般のクラウドセールの場合、プライベート投資家が売り抜けたタイミングとほぼ同時に購入を始まるため、どうしても不利になるのです。

未だかつてなく過熱しているICO市場ですが、実際のところは「強いコネクションを持ち、十分な資本を持つ”上位1%の人々”が最大の恩恵者」と呼べるでしょう。

ICOs Have Raised $2 Billion This Year – Mostly from Private Sales

Feb 21, 2018 by Kai Sedgwick

参考記事はこちらから

関連記事:

投資家や事業者から注目を集めるICOについて、IPO(新規上場株式)と比較しながらメリットやデメリットを言及していきます。

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