貯蓄債券を小口化、ブロックチェーンで実現 タイ財務省
タイ財務省が債券をブロックチェーンで発行
タイの財務省が、ブロックチェーン技術を用いて、今までにない少額の貯蓄債券(Savings Bonds)を発行することが分かった。
タイ財務省に属する公共債務管理局(PDMO)が、一般向けに貯蓄債券を発行するもので、額面は1バーツ(約3.5円)合計2億バーツ(約6.9億円)の発行を予定している。最低購入上限は1バイヤーあたり100債券と少額から購入が可能な仕組みを取る。
低所得者がリスクのない資産に貯蓄するよう奨励する政府の経済復興計画の一部として導入されるもので、ブロックチェーン技術の導入で電子システムによる債券の販売や発行コストが削減されたことも、導入を後押しした。
債券は国有のクルンタイ銀行(KTB)のブロックチェーンプラットフォームと電子ウォレットを使用して配布される予定で、同銀行のブロックチェーンプラットフォームにより、銀行の支店に出向いたり、ATMマシンを使用したりすることなく、債券購入可能になるメリットもある。販売対象者は15歳以上のタイ人になるという。
より多くの人が債券購入可能に
購入には、KTBアカウントとeウォレットのクレジットが必要となり、KTBの電子ウォレットにサインアップする必要がある。
債券は六か月間保有した後は、流通市場で販売が可能で、三年債のクーポン利率は1.70%で、半年ごとに利息が支払われる。少額債権の導入に伴う流動性の向上にも注目が集まる。
タイにおける、貯蓄債券がブロックチェーンベースのシステムで発行されるのは初の事例。
公共債務管理局は最近、新型コロナウイルスによる経済へのダメージを軽減するための政府計画の一部として、500億バーツ相当の貯蓄債券の売却を終えたところだった。今回発表された少額債券は、これに続く発行となる予定だ。
公共債務管理局のPatricia Mongkhonvanit局長は、電子システムによる債券販売は、発行コストの削減に役立つと期待感を示した。
政府が債券の最小額面を通常の1000バーツから1バーツへと引き下げることが可能になり、草の根レベルでより多くの人々が政府の貯蓄債券を購入できる仕組みを整える。
各国でブロックチェーン債券発行事例
近年、ブロックチェーンを活用した債券発行事例が見られるようになっている。
世界銀行は2018年、2019年と二年連続で、分散型台帳の技術を用いた「ブロックチェーン債(豪州国内債)」を発行、オーストラリアのコモンウェルス銀行などに販売を委託している。2019年には5000万豪ドル(約37億円)を調達した。
世界銀行は、中央清算機関を介さないことにより決済速度を上げることができると説明。オーストラリア市場を選んだ理由としては、ブロックチェーン技術を金融に活用する環境が整っていることを挙げた。
2019年には、欧州の金融大手、フランスのソシエテ・ジェネラルと、スペインのサンタンデールがイーサリアムのブロックチェーンを活用して債券をセキュリティトークンとして発行している。
どちらも自社向けに債券を発行しており、外部の投資家には販売されていない。
ソシエテ・ジェネラルはブロックチェーン導入により、商品のスケーラビリティ、市場投入までの時間短縮、またコード自動化による透明性の向上や処理速度上昇など、様々なメリットがもたらされると述べている。
2019年は中国でも国有銀行の一つ中国銀行が、独自開発のブロックチェーン技術により零細企業支援の金融債権を発行した。債券の発行準備、需要予測、発行までの三段階をブロックチェーンで処理できるものだ。
日本でも、野村総合研究所(NRI)が今年3月、無担保社債をブロックチェーンを活用して発行。総額は3000万円で、日本の市場において、ブロックチェーン社債の発行は初のことだった。
またロンドンに拠点を置くメガバンク、HSBCホールディングスも、100億ドル(約1兆円)の私募債をR3のコルダ(Corda)ブロックチェーンへと移行している。債券をトークン化することを念頭に置いているという。
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します