コインチェック記者会見まとめ:NEMの補償対応、凍結中の顧客資産を送金再開
- コインチェックのサービス再開の目処を示す
- コインチェックから不正送金されたNEMを保有していた顧客に対する補償に関して、来週中を目処に実施予定。また、同社で凍結中の顧客資産(アルトコイン)について、サービス再開の目処についても来週中を目処に発表予定とのことです。
- 仮想通貨市場にとってはポジティブ
- 今回の会見内容で、「コインチェック社が経営破綻したり、預けていた顧客のアルトコインが凍結されたまま戻ってこない」といった最悪な事態は免れました。これ機に金融庁などの監督・監視体制が確立することで、発展途上の仮想通貨業界における利用者保護に関する仕組みが整備され、仮想通貨、及びブロックチェーン業界が、健全に発展・繁栄されていくことが期待されます。
3月8日にコインチェックが記者会見を実施
2018年3月8日(木)、金融庁の立ち入り検査を受けていた仮想通貨取引所に対する「業務改善命令」が出され、コインチェック・Zaif・GMOコインを含む7社が行政処分されました。
これを受けて、コインチェック社が16時より都内で記者会見を実施。
質疑応答などの内容をまとめました。
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コインチェックの取引高と資産状況
コインチェック社の2017年12月の取引高は、3兆8537億円に到達。
NEM保有している被害者は、全体の15%だったということが明らかになりました。
大塚取締役は、ビットコイン及び他仮想通貨(アルトコイン)全体の取扱高を公開。
日付 | コインチェック取引高 |
---|---|
2017年7月 | |
2017年8月 | |
2017年9月 | |
2017年10月 | |
2017年11月 | |
2017年12月 |
取引高の内2割が、手数料を取らない販売所形式ではなく、取引所の収益に繋がるスプレッド(売買差額)のある販売所形式だということで、かなりの営業利益が上がっていたことが伺えます。
また、2018年3月8日時点での利用者のアカウント数が、累計170万口座に達していたことが明らかになりました。
コインチェック側の今後の対応説明
会見の前半で行われた、大塚取締役のよる今後の対応に関する情報まとめです。
NEMの補償について
不正送金されたNEMを保有していた顧客に対する補償について、来週中を目処に実施予定です。
詳細は、コインチェック公式ページで発表予定とのことです。
(送金停止中の仮想通貨)一部サービス再開について
システム面の安全性の確認ができました。
技術的に安全性等が確認できた仮想通貨から順次、来週中を目処に、一部再開予定です。
詳細は、コインチェック公式ページで発表予定とのことです。
経営管理体制の強化について
問い合わせ窓口の強化など、顧客保護を優先した経営体制を優先する。
今後の事業継続については、今後も一時停止中のサービス再開に向けて全力を挙げて取り組むとともに、金融庁への仮想通貨交換業者の登録に向けた取組も継続し、事業を継続していく予定とのことです。
本事案の発生の原因調査
コインチェック社内、外部の捜査機関に依頼をして、全従業員のPC、ネットワーク機器、サーバーのログの調査を行なったようです。
その結果、外部の攻撃者が、従業員のPCの端末にマルウェアを仕込んで感染させ、外部ネットワークからそのPCを経由して、NEMのサーバーに侵入した可能性があるとのことが判明しました。
今後の対策について
- ネットワークの再構築を実施
- サーバーの再構築
- 端末のセキュリティ強化(全従業員のPCを新規で準備)
外部専門家と対策を行い、ネットワーク再構築を実施。
ネットワークの入口では不審な物が入らないように、出口では多重防御によりセキュリティ強化を行ったとのことです。
また、常時監視体制を整えることでセキュリティの強化を図っていると説明しています。
システム管理体制の強化について
- システムセキュリティ統括責任者(CISO)を新設
- システムリスク管理対策委員会を新設
- 内部管理体制の強化(内部監視の強化)
システムセキュリティ統括責任者(CISO)は、金融機関出身の人材を置いた上、モニタリングを強化、金融セキュリティに強い会社に外部委託を行うとしています。
また、「内部管理体制の人員強化を図るとともに、セキュリティーの優先度をつけ、承認されたものを使えるように整備する」と述べました。
仮想通貨のセキュリティ強化について
仮想通貨の管理を「ホットウォレット」ではなく、よりセキュリティの高い「コールドウォレット」への対応等、安全に入出金等が行える技術的な検証を順次進めています。
これら対策については、金融系システムセキュリティ及びサイバーセキュリティ対応に関する実績のある外部専門家の確認・検証を経た上で実施予定としています。
経営体制の抜本的な見直しについて
どのような責任の取り方をするかについては、顧客保護を第一に考え、問題解決後に(大手の傘下に入ることや、経営陣の辞任を含めて)検討するとしています。
質疑応答まとめ
NEMについて
当初予定していた通り、日本円で補償する。 補償は、来週中を目処に、各自のアカウントに対して日本円で反映するつもり。
基本的に、KYC(本人確認)をしっかり行っている。
現時点でマネロン対象者などはいないと認識。
補償の方法としては、複数の法律事務所と相談した結果、日本円になった。
税金については、現在国税庁と協議中。
前回説明したレート(1NEM = 88.549円)通り。
複数使用のコールドウォレットを使用して、管理する方向で検討している。
NEM以外の仮想通貨について
問題ない。
口座の管理も別々に管理しており、大量の出金要請があっても経営に支障はない。
(利用規約にもある通り)、相場の下落による機会損失について、当社は責任を負わない。
取り扱い仮想通貨については、リスクの洗い出しを行った。
今後、何を扱っていくかを(慎重に)検討していく。
まずは、今まで通りの状況を確実に再開させたい。
匿名通貨について取り扱いについては、既存の通貨も含めて、精査した上再検討を行う。
現在13種類の取り扱いがあるが、リスクを洗い出した後、このまま続けて問題ないか確認中。決定事項は現段階ではない。
セキュリティについて
従業員のPCにメールから感染した。
詳細については、捜査情報が絡むのでお答えできない。
一人ではなく複数の従業員に届いていると認識している。
感染したPCも1台ではなく、複数台だった。
会社で支給された、社内で働く社員のPC。
そうだ。サポートするポジションとして、外部の者を配置する。
すでに取締役会を通っており、設置するのは確定事項。
システムの人員、内部管理などの人員が不足しており、求人はかけていたが、補充が間に合わなかった。
採用強化については、何度も取締役会で議論をしてき上、お金もかけてきた。
別々の口座に管理をしており、現時点では600億ほど日本円の出金も対応済み。
外部の知恵を借りつつ、(基本的には)社内で行なっていく。
今後の経営について
仮想通貨販売所で売買された際の手数料を得ている。
これにより、財務体制を強化してきた。
経営体制の抜本的な見直しは、これからしっかりと検討していく。
大手の傘下に入るなど、資本増強は(必要に応じて検討する)選択肢の一つであるが、顧客の保護が最優先であり、現時点では考えていない。
当然、そうなってしまった場合は、売上が下がってしまい行き詰まるので、そういった事態を避けるため企業努力をしていく。
しっかりと立て直す意思を持っている。
お客様にしっかり向き合い、きちんと対応していく。
経営体制の抜本的な見直しに監査役も入っており、今後も検討していく。
役割は、取締役会に対して監査をする人だ。
まずは顧客保護を第一に、今後検討していく。
「経営陣の辞任も視野に入れているのか?」というご質問については、そこも含めて検討をしている。
CoinPost考察
今回の記者会見の内容は、最大の焦点であった「凍結中の顧客資産に関する送金サービスの再開予定や、不正流出したNEMの補償時期について」も具体的に言及するなど、過去二回に渡って行われた煮え切らない会見から一転し、大幅に進展した印象を与えました。
ひとまず、コインチェック社が経営破綻したり、他のアルトコインが凍結されたまま戻ってこないといった最悪な事態は免れたことで、ほっと胸をなでおろした方も多いのではないでしょうか。
記者との質疑応答でも、概ね前向きな内容を示せており、コインチェックで凍結中の膨大な仮想通貨資産の送金などの取引再開の見込みを提示できたことで、市場の流動性の向上や、冷え込んでいた投資マインドの改善に結び付く可能性があります。
日本の最大手取引所の倒産、などといった”最悪な事態”を織り込みつつあった仮想通貨市場にとっては、解決に向けて大きく前進したポジティブサプライズといっても良いのではと思われます。
これを機に金融庁の監督・監視体制を確立することで、発展途上の仮想通貨業界における利用者保護に関する万全な仕組みが整備され、仮想通貨、及びブロックチェーン業界が、健全に発展・繁栄されていくことが期待されます。
なお、今回コインチェック以外の大手取引所、GMOコインとZaifが金融庁に業務改善命令を出されており、その動向も注目されています。
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