米SECクリプトママ、ETF非承認の姿勢に物申す
ETF非承認の姿勢を改めて批判
米国証券取引委員会(SEC)において、暗号資産(仮想通貨)支持を表明しているコミッショナーが、「成熟するデジタル資産エコシステム」と題されたオンラインイベントで、SECの姿勢を改めて批判したことが判明した。
イベントでは、SECがビットコインETF(上場投資信託)の申請を却下し続けていることが話題となり、「クリプトママ」とも呼ばれるHester Peirceコミッショナーが、改めてこうした方向性に異議を示した。
同コミッショナーは、先月に米連邦議会上院の公聴会で2期目が承認、2025年6月まで任期が延長されている。
Peirceは、取引所上場資産の中でベース投資となるものには、ビットコインの他にもボラティリティが高いものは存在しており、しかしそうした製品の上にも、きちんと秩序立ったプロダクトを構成することは可能だと主張した。
成熟する仮想通貨市場
また、仮想通貨市場が成熟してきていることも指摘。
潤沢な資金が流入しており、非常に洗練されたプレイヤーも多く参加、特にビットコイン取引を規制遵守させるために多くの作業が行われてきたことなどを挙げて、仮想通貨市場は十分に成熟しており、それを土台として何か他の製品を構築できる段階だと論じた。
Peirceコミッショナーが指摘するように、近年仮想通貨分野には伝統的な大企業も参画を始めている。
クレジットカード最大手企業VISAもその一つであり、例えば仮想通貨取引所コインベースと提携してVISAカードを発行。このカードを使えば、ユーザーは事前に仮想通貨を法定通貨に両替しておくことなく、世界中のVISA加盟店でショッピングを行うことが可能だ。
またVISAはカストディ企業アンカレッジへの投資や、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の政策提言に関する協力なども行っている。
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米大手仮想通貨投資ファンド、グレースケールの第2四半期流入額は過去最高の9億580万ドル(約970億円)を記録。それまでの最高値を記録していた第1四半期の、さらに倍になった。
機関投資家からの資本流入が8割を超えており、米国で普及している個人積み立て型の老後貯蓄制度である個人退職金口座(IRA)や、確定拠出型個人年金制度401Kなどを通じた仮想通貨購入を検討する層も増えているという。
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米国政府の中にも、仮想通貨を一般的な資産として認める動きが見られ、7月に米通貨監督庁(OCC)は米貯蓄貸付組合および国民貯蓄銀行に対し、仮想通貨のカストディサービスなどの提供を許可する声明を発表している。
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イノベーションを促進する制度も提案
9月15日にSECが、オンライン・ゲーミングプラットフォームを運営するUnikrnに対して、無登録証券を提供したとして告発した際にも、Peirceコミッショナーは弁護に回っていた。
この件は、Unikrnが2017年に「UnikoinGold(UKG)」という独自トークンの提供を通じて資金調達していたことに関わる。Unikrnはこの資金で、ゲームプラットフォームで利用可能な機能を増やし、UKGトークンの追加アプリケーションを開発することを計画していた。
最終的にUnikrnは、610万ドルの違約金を支払うことになったが、「クリプトママ」は明確な指針がないために、あるトークンが有価証券であるかどうかの判断は恣意的になってしまうと述べた。
さらに、イノベーションを促進するためにも、不正防止法の適用を受けながらも、企業がプラットフォームを開発し改良するための期間を与える制度の構築を提案している。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します