米スクウェアとクラーケン、FinCENの仮想通貨ウォレット規制案に反対表明
仮想通貨ウォレットの報告義務強化案に対する反応
米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)が12月に示した暗号資産(仮想通貨)の新たな規制案について、米スクウェア社や仮想通貨取引所クラーケンが公開書簡で反対意見を表明した。
FinCENは、2020年12月に、取引所と外部の自己ホスト型仮想通貨ウォレットについて規制の強化を提案。
3000ドル(約31万円)を超える引き出しに対してKYC(顧客身元確認)の強化が求められており、取引所など暗号資産サービスプロバイダー(VASP)は、その引き出しを行う顧客と、送金先の身元情報(名前や住所など)を確認しなければならない。さらに1万ドル(約103万円)を超える取引の場合には、FinCENへ報告する義務も発生する。
米スクウェア社
この規制案について、送金アプリ「Cash App」などを運営するスクウェア社は、仮想通貨ユーザーが規制された取引サービスから離れ、米国外の非管理ウォレットやサービスを使用して取引を行うようになりかねないと批判。「今日よりも仮想通貨取引の可視性が低くなるだろう」と述べた。
またFinCENの提案が実施されれば、より伝統的な金融機関に利益をもたらす「不平等な競争の場」が生まれるという。
スクウェア社によると、新たな確認・報告義務により、同社のサービスにユーザーとして登録していない人々に関してもデータを収集する必要性が生じる。FinCEN宛ての書簡には次のように記された。
この提案は、金融包摂を阻害し、実務上の問題を発生させ、恣意的で不必要に負担が大きいもので、またイノベーションと雇用が米国や規制された機関の外側で進むことにつながるだろう。
仮想通貨取引所クラーケン
仮想通貨取引所クラーケンも、公開書簡をFinCENに提出した。
新たなウォレット規制は、取引所による莫大な支出を継続的に必要とするもので、 銀行口座を持たない貧しい人々から金融アクセスを奪い、取引が法執行機関の手が届かない場所で行われるようになりかねないと指摘している。
特に、規制対応に必要な基本的なコストや実装のタイミングさえ考慮していないと訴えた。報告要件は、技術の限界を無視しており、コンプライアンス上の大きな負担を生じさせる一方で、FinCENにとっては限られた情報しかもたらさないという。
クラーケンは様々な技術的困難を具体的に列挙して示した。
今回の規制案については、スクウェア社やクラーケンが挙げたような金融包摂、関連業者が担う過度な負担、仮想通貨取引やイノベーションの国外流出などの他にも、当初からパブリックコメント期間が短いことも問題とされている。
Jake Chervinsky弁護士は、パブリックコメント期間が15日間しかないことについて「新しい規則を採用する前に、連邦政府機関が一般市民からの意見を受け入れて検討することを義務付け」る行政手続法(APA)に違反している可能性があると指摘した。
また規制案には12月時点ですでに複数の共和党議員、米大手仮想通貨サービス企業サークル社などからも反対声明が出されている。
国外保有の仮想通貨についても規制強化
ウォレット規制案に続けて12月末、FinCENは米国外で保有されている仮想通貨の報告義務についても変更する提案を行った。
現在は基本的に米国以外で保有されている仮想通貨についてはFinCENへの報告義務はなかったが、この提案が施行されれば、年間で海外の仮想通貨資産が1万ドル(約103万円)を超えた場合にも報告が求められることになる。
FinCENはこれらの新たなルールにより、マネーロンダリング等の犯罪対策を強化するとしている。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します