米財務省、1万ドル以上の仮想通貨を受け取った企業に内国歳入庁(IRS)への報告義務を提案

1万ドル以上受け取った企業に報告義務

米国はジョー・バイデン大統領の下、米財務省が納税に関する法的遵守措置に関する報告書を発表した。

提案された措置のいくつかは、暗号資産(仮想通貨)を対象とするものであり、1万ドル(約108万円)以上の仮想通貨を受け取った企業について、内国歳入庁(IRS)への報告を義務づけることなどを盛り込んでいる。

財務省の分析によると、政府に支払われるべき税金と実際に支払われた納税額の差であるタックスギャップは、米国で2019年に6,000億ドル(約65兆円)近くにのぼる。米国政府の歳入が減ることにより、最終的には増税などにより納税者に負担を強いることにもつながるという。

この状況を改善するために、バイデン大統領は一連の税務コンプライアンス対策を提案した形だ。

報告書は、税務記録を逃れる方法として、現金と仮想通貨が使われる可能性についても指摘した。「時価総額が2兆ドル(約217兆円)まで成長した仮想通貨も大きな懸念材料だ」としている。(暴落後は約1.8兆ドル)

「これまで税回避国のオフショア銀行口座を利用して脱税行為を行ってきた者が、代わりに仮想通貨を利用するようになることも予想される」とする2013年の研究も参照しつつ、仮想通貨は脱税を助長し得ると説明。

現在、仮想通貨が事業所得に占める割合は比較的小さいものの、今後10年間で、税金徴収に関して仮想通貨取引の重要性は増していくと考えられるという。

バイデン政権は、脱税を防ぐために、新しい金融口座報告制度の導入を提案している。報告書によると、この制度は仮想通貨取引所や、仮想通貨決済サービスの口座も対象とする見込み。また現金の場合と同様に、公正な市場価格で1万ドル(約108万円)以上の仮想通貨を受け取った企業も米内国歳入庁(IRS)への報告を義務付けることも盛り込んだ。

今後注視すべき点

仮想通貨についての政策を研究するシンクタンクCoin Centerのディレクター、Neeraj Agrawal氏は、この新たな提案について「仮想通貨が現金と同じように考慮されることは、むしろ良いこと」だと捉えている。同氏は、新しい税務報告制度が、仮想通貨に対して「より厳しい」ものになるかどうかを注視していると述べた。

Agrawal氏によると、今回提案された1万ドル以上の報告義務は、個人管理のウォレットから別のウォレットへ送金されるようなピアツーピア(P2P)取引を対象とはしない可能性があるという。

中央集権型の仮想通貨取引所や、その他仮想通貨関連事業との間の仮想通貨取引にのみ適用されるものであると意見した。

Agrawal氏は「少なくとも現時点の理解では」、Uniswapのような分散型取引所には「適用されないだろう」と続ける。一方で、今後IRSがそうした分散型取引所にも規制を適用する可能性もあることには注意が必要とした。

監視を強化するIRS

IRSはここ数年、仮想通貨に関連する納税義務の監視を強化している。2019年には、仮想通貨所得について適切に報告していない可能性がある1万人に警告の手紙を郵送した。

2020年には、確定申告の様式において仮想通貨利用の有無についての質問を回答必須の項目としている。また税金申告漏れ調査のために、仮想通貨取引所KrakenやCircle社に顧客情報の照会を行った。2016年から2020年の間に、年間2万ドル(約217万円)以上を取引した米国ユーザーに関する記録を要請した格好だ。

関連米IRS、仮想通貨の納税調査で取引所Krakenにも顧客情報の提出を要求

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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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