ベネズエラ:仮想通貨に価格連動させる新法定通貨を発表
- 石油にペッグする仮想通貨にペッグする法定通貨
- ベネズエラのMuduro大統領は、新通貨ソブリン・ボリバル(ボリバル・ソベラノ)の流通を8月20日から開始することを発表した。新通貨は、現在の法定通貨ボリバル・フエルテの単位を5桁切り下げるデノミを行い、さらに石油価格と政府の信頼性で価格決定する仮想通貨”ペトロ”にペッグする通貨となる予定。
石油にペッグする仮想通貨、にペッグする法定通貨
独裁色を強める南米ベネズエラのマドゥロ政権に対する、米国などの経済制裁を受け、深刻な経済不況に陥っているベネズエラで、仮想通貨”ペトロ”にペッグする新しい法定通貨の流通が8月20日から開始されると発表されました。
仮想通貨ペトロとは石油の埋蔵量が豊富なベネズエラ政府が発行する仮想通貨です。
価格は石油価格と政府の信頼性によって決まるとなっているようですが、不明瞭な部分も多くあります。
新通貨ソブリン・ボリバル(ボリバル・ソベラノ)は、現在の法定通貨ボリバル・フエルテの単位を5桁切り下げるデノミを行い、さらに石油価格と政府の信頼性で価格決定する仮想通貨”ペトロ”にペッグする通貨となる予定です。
ペッグとは
ペッグとは、為替レートを一定に保つということです。米ドルにペッグしている通貨を保有することは、米ドルをデジタル化して保有していることと同じになります。
地元のニュース放送局teleSURによると、ベネズエラ大統領Nicolas Maduro(以下、Maduro大統領)はソブリン・ボリバルの流通、発行によって経済の再転換が始まると発言しています。
Maduro大統領は「抜本的な方法で、国の財政、金融状況を変革し、安定化させる」ことを考えており、「生産的で、多様性に富み、そして持続可能な経済モデルが必ず誕生する」と語っていることから、今回の措置に大きな期待を抱いていることが分かります。
仮想通貨ペトロに関しては、以下のように強気な発言を繰り返しています。
「最終的には、技術的にも、金融的にも強固なものになる」
「国内外の経済活動に普及する」
「ベネズエラ経済のあるべき姿についての正しいビジョンが見えている、私たちでそれを実現しよう」
ベネズエラのハイパーインフレ
今回の措置は、ベネズエラのハイパーインフレに対応するためのものでもあります。
ベネズエラでは月に2倍のペースで物価上昇が続き、6月時点で、インフレ率は4万6000%でした。
当初、1000ボリバルを1ソブリン・ボリバルに切り替える予定していましたが、IMF(国際通貨基金)が、同国の物価上昇率が年内には100万%に達すると発表したことから、この上昇の加速に対応しきれないと判断し、10万ボリバルを1ソブリン・ボリバルにする、としました。
IMFは、ベネズエラの現状は1923年のドイツや2000年代後半のジンバブエに似ていると指摘しています。
1923年ドイツではパン1個が1兆マルク(当時のドイツの通貨)まで物価が上昇し、2009年ジンバブエでは、中央銀行が1兆ジンバブエ・ドルを1ジンバブエ・ドルに切り替えたという歴史があります。
インフレの加速と外貨不足により、ベネズエラ国内ではほとんど現金は使われていないため、今回のデノミも、金融システム上では、既存のボリバルと新通貨ソブリン・ボリバルの交換レートを操作するだけで済むと考えられています。
しかし、今回の措置に対し反対意見も上がっており、CNBCによると、議員で経済学者のÁngel Alvarado氏は以下のように発言しています。
「デノミを行ったところで、自体はよくならない。インフレは止まらない」
Marcos Salgado
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します