バイナンスCZ氏、「FTXトークン(FTT)を全て売却する」
FTTをすべて売却へ
大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスのチャンポン・ジャオ(CZ)CEOは7日、バイナンスが保有中のFTXトークン(FTT)をすべて売却すると発言した。
バイナンスは、2021年時点で合計約3,090億円(約21億ドル)のBUSDとFTTを受け取っており、このうち、現在も手元に残っているFTTをすべて手放すと説明。正確なFTTの保有量や額は明かしていない。
CZ氏は、「市場への影響を最小限にする方法で売却する」「市況や限られた流動性などから、売却完了までには数か月かかる見込みだ」と述べた。
FTTは、バイナンスとも競合関係にある、米仮想通貨取引所FTXの取引所トークンだが、CZ氏は、競合他社であることは売却理由ではないと否定。
「最近判明した事」とフレージングしつつ、先週リークされていたアラメダリサーチのバランスシートの状況が売却要因であることを示唆した。
リークされた財政情報
CZ氏が言及しているのは、コインデスクが2日に報道した同社の財政情報だ。
FTXのサム・バンクマン=フリードCEOは、主要事業としてFTXと、トレーディング企業アラメダリサーチの2つを所有している。
コインデスクが入手したアラメダリサーチの非公開財務書類によると、アラメダリサーチは2022年6月30日時点で、約2.1兆円(約146億ドル)の資産を保有していたが、そのうち、姉妹会社FTXが発行したFTTの占める割合が大きかった。
最大の資産は、約5,400億円(約36.6億ドル)「Unlocked FTT」(ロックされていないFTT)で、3番目に大きな割合を占める資産としても、FTT担保の約3,200億円(21.6億ドル)が記載されていた。
業界からの反応
資産の大半が、流動性の低い関連会社トークンであったことで財務上のリスクが指摘された。例えば、投資プラットフォームSwan BitcoinのCEOであるコリー・クリップステン氏は次のようにコメントした。
アラメダの持つ資産の多くの部分が、(姉妹会社である)FTXが発行し管理しているトークンであることは驚きだ。
また、Huobiのスタートアップ育成部門のリサーチャーである0xLoki氏は、アラメダリサーチが「高いレバレッジと危険なバランスシート構成という深刻な問題を抱えている」「FTXとアラメダの資金源および資金の用途は不透明だ」などと意見している。
アラメダリサーチの反論
一方で、アラメダリサーチのキャロライン・エリソンCEOは、リークされた資産はバランスシートの一部だと釈明した。
リークされたバランスシートには載っていない、数十億ドル相当の資産が他に存在していると説明。また「リークされたバランスシートは、アラメダの最大のロングポジションをいくつか取り出したもの」で、「アラメダはヘッジ資産を有しており、過去に融資を受けた分についても、そのほとんどを返却している」とも続けた。
また、エリソンCEOは「市場への影響を最小限に留めるために今日バイナンスが売却するFTTを全て買い取る強気の姿勢を示した。
サムの声明
バイナンスのFTT売却の可能性が明らかになった直後、FTXのバンクマン=フリードCEOは「業界を前進させている全ての人の成功を祈っている」とコメント。「CZを含め」手段は違っても、この業界に貢献してきた全ての人に敬意を表すると語った。
その後、FTXの財政状況については「監査済の状態を保持している」と釈明。数十億ドル(数千億円)規模の大量出金が相次いでいるほか、米ドルからステーブルコインへの換金も活発化していると説明した。
規制草案も影響か
FTXは、サムCEOが起草した仮想通貨業界の規制草案を20日に発表していたが、この内容については業界から批判が集まっていた。
CZ氏は売却は「競合会社への動き」ではないと否定していたものの、この草案が心証に影響して、売却をさらに後押しするものになった可能性もある。
CZ氏は7日、名指しはしていないものの「他の業界プレイヤーを損なうようなロビー活動を行う人々は支持しない」ともツイート。また、FTTを手放すのは「リスクマネジメント」であり、そうした姿勢は「LUNAの一件で学んだ」と述べる。旧テラエコシステムの崩壊から、決別したプロジェクトはその後支持しない方針を学んだと示唆した形だ。
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