米金融機関の経営危機でビットコイン大幅続落、苦境続くか|bitbankアナリスト寄稿
今週(3/4(土)〜3/10(金))の仮想通貨相場
国内大手取引所bitbankのアナリスト長谷川氏が今週のビットコインチャートを図解し、今後の展望を読み解く。
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bitbankアナリスト分析(寄稿:長谷川友哉)
3/4(土)〜3/10(金)の週次レポート:
今週のビットコイン(BTC)対円相場は、300万円台中盤での揉み合いが続いていたが、週央を境に上値を重くし、足元(10日正午時点)では2万ドル水準となる275万円まで安値を広げている。
前週のBTC相場は、シルバーゲート銀行の経営存続への懸念からパートナー企業の提携解消が相次ぎ、シルバーゲート・キャピタル(SI)の株価暴落に連れて320万円を割り込んでいたが、BTC対ドル相場が1月18日安値と2月13日安値を基点とする上昇トレンドラインで下げ止まり(第2図)、今週のBTC対円は305万円周辺での取引で初めった。
当初は、7日から8日にかけてのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の上下両院での議会証言を控え様子見ムードが広がっていたが、議会証言初日の発言内容が想定以上にタカ派的だったことで、BTC対ドルはトレンドラインを僅かに下回った。
一方、証言を機に市場は3月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ幅拡大を急速に織り込み、米国債利回りが急上昇。外国為替市場ではドル高円安が進行し、BTCの対円相場は乱高下の末、元の水準に戻した。
一方、BTC対ドル相場がトレンドラインを割り込んだことで、週央からはやや上値の重い展開となると、シルバーゲート・キャピタルが銀行業務閉鎖と資産の任意精算を発表し、株価が再び急落。BTC相場はまたも連れ安となり300万円を割り込むと、9日米時間には、シリコンバレー銀行(SIVB)が預金額減少を背景に株式売却を発表。こうした金融機関の経営難が波及する可能性が嫌気され、この日の米株市場は銀行株主導で軟化し、BTC相場も上値を重くした。
さらに、この日発表された米バイデン大統領の2024年予算案には、マイニングに使用される電力への課税や、暗号資産(仮想通貨)をウォッシュセール規則の対象とすることが示された他、N Y司法長官が、KuCoinを未登録の証券・商品ブローカーの疑いで提訴し、訴状でETHを証券であると指摘したことで、市場全体が軟化しBTC相場は安値を広げた。
先週、BTC対ドル相場は昨年11月高値周辺で一旦は下げ止まるかと指摘したが、木曜に悪材料が重なり、同水準のサポートはいとも簡単に陥落した。足元では、相場は心理的節目の2万ドルを挟み込み揉み合いを演じている(第3図)。
また、今週のパウエルFRB議長の議会証言はサプライズだった。「ディスインフレの工程が始まったと初めて言える」と前回のFOMC後の記者会見で発言していたが、今週はインフレ指標のコアとなる項目に「ディスインフレのサインは殆ど見られない」とスタンスをこの短期間で一転させた。
ただ、その影響で、3月での利上げ幅拡大織り込みが進んだほか、金利の最終到達点の大勢の予想も引き上がったことも事実で、雇用統計でのある程度のサプライズに市場は耐えられるか。
また、相場は木曜日の下落で日足RSIが30%を割り込み過熱感が確認される他、1月のCMEBTC先物相場にできたギャップの窓埋めも達成しており、雇用統計通過後は一時的な自律反発の余地もあると見ている。
さて、苦境が続くBTC相場だが、来週も2月の米消費者物価指数(CPI、14日)に生産者物価指数(PPI、15日)と、3月FOMCでの利上げ幅のヒントとなり得る材料が待ち構えている。
先週も指摘の通り2月のインフレ指標は引き続き物価上昇圧力の粘着性を示唆する公算が高いと指摘され、BTC相場には厳しい状況がまだまだ続くか。
関連:bitbank_markets公式サイト
前回のレポート:シルバーゲート問題などでビットコイン急落、警戒ムードで厳しい市況続くか
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