欧州理事会、スマートコントラクトを制限する可能性のある法案に合意

データ法に基づく法案に合意

欧州(EU)理事会は24日、データ法に基づく法案に合意した。この法案はデータへの公正なアクセスと利用に関する規則を定めるものだが、暗号資産(仮想通貨)のスマートコントラクトにも影響を与えるのではないかと懸念されている。

法案は、特にネットに接続された家電など、つまりモノのインターネット(IoT)のデータを対象とするものだ。しかし、仮想通貨業界からは、データ法の範囲が明確に定義されない場合、仮想通貨にも大きな影響を及ぼす可能性があると警戒する声が上がっている。

法案の最終的な内容は、今後、欧州委員会の仲介の下、欧州議会と欧州理事会の間で議論されることになる。欧州理事会は、法案の主旨について次のように説明した。

この法案は、すべての経済部門において、EU内で生成されたデータの使用権やアクセス権についての新しいルールを提案するものだ。デジタル環境における公平性を確保し、データ市場における競争を促進し、データ駆動型イノベーションの機会を開き、すべての人がデータにアクセスできるようにすることを目的としている。

スマートコントラクトは、データ法第30条の「データ共有のためのスマートコントラクトに関する必須要件」に該当。規定には、スマートコントラクトの設計に「厳格なアクセス制御メカニズム」を組み込むことや「企業秘密の保護」などが含まれる。

さらに、スマートコントラクトがその活動を中断したり終了できるような仕組みが必要とされるものであり、「自動化された変更不可能なプログラム」であるというスマートコントラクトの強みが減少するのではないかという懸念を引き起こしている形だ。

スマートコントラクトとは

あらかじめプログラムされた条件に応じて、自動的に契約を執行する仕組みを指す。スマートコントラクトの機能が実装されているブロックチェーンで代表的なのはイーサリアム。契約を締結する際には、仲介者や契約書作成などの事務作業が必要になる場合が多いため、自動的に契約を執行できるようにすることで、効率性向上やコスト削減などが期待できる。

▶️仮想通貨用語集

業界の声

欧州議会は、理事会の合意に先立つ14日に、今回の法案を賛成500票、反対23票で採択していた。

この際、ブロックチェーンを促進する非営利組織「欧州暗号イニシアチブ(EUCI)」の代表であるMarina Markezic氏は「現在存在している、ほとんどのスマートコントラクトは、この条文に準拠することが困難であり、ほとんど不可能に近いだろう」と意見した。

また、「提案されたルールは、私たちが今日知っているスマートコントラクトに沿うものではない。そのため、法案の提示する型にはまるような、スマートコントラクトとは別の技術の開発を促進する可能性がある」とも続けている。

一方で、これよりはやや楽観的に見る向きもある。ブロックチェーンソフトウェア会社ConsenSysの法律顧問を務めるNatalie Linhart氏は、次のようにコメントした。

データ法第30条は、IoT製品のデータ転送を行うスマートコントラクトに適用される限定的な規定であり、分散型金融(DeFi)アプリケーションに適用されるものではないと考えられる。

ただ、Linhart氏も「将来の立法案で、今回の標準が、仮想通貨など他のスマートコントラクトに対象範囲を広げられないようにすることを望む」と続けた。

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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