Polygon Labsが欧州の「データ法」に修正要求 スマートコントラクトに深刻な影響を与える可能性を懸念
EU議会などに公開書簡を提出
暗号資産(仮想通貨)ポリゴン(MATIC)のネットワークを開発・普及を推進するPolygon Labsは18日、EU議会、EU理事会、EU委員会に対して異議を示す公開書簡を提出した。スマートコントラクトが意図しない形で規制対象になるリスクが持たれる「データ法第30条」について、適切な修正と規制の明確化を求めている。
30条が適用されるのは、データ法で定義される「個人データ」の共有に関して、企業などが契約を結ぶ許可(パーミッション)型スマートコントラクトに限定されることを明確にすべきと述べる形だ。
仮想通貨ブロックチェーンの多くが、管理者の許可なしでネットワーク上の取引を検証・承認するノードとして参加できるパーミッションレスの仕組みを取っている。
Polygon Labsも様々なパーミッションレス型ブロックチェーンを開発しており、それを土台として第三者の参加者がスマートコントラクトによるアプリケーションを展開している状況だ。
ポリゴンは、こうしたオープンで透明性のあるパーミッションレスなコントラクトを、30条が意図せず「規制対象」としてしまう結果にならないよう、修正することを提案している。
パーミッションレスとは
ブロックチェーンにおいては、管理者の許可(パーミッション)なく、誰でもネットワークにアクセスできるという意味。ブロックチェーンは政府や銀行などの中央機関を介在させずに送金などを可能にしている点でパーミッションレスであると言える。パーミッションレスな仕組みの特徴としては、透明性、データの可用性、データの相互運用性などを挙げることができる。
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背景
背景として、欧州(EU)理事会が今年3月に、データ法に基づく法案に合意したことがある。データへの公正なアクセスと利用に関する規則を定めるものだが、範囲が明確に定義されない場合、スマートコントラクトにも影響を与えるのではないかと警戒する声が上がっている。
この法案はまだ成立はしていない。今後、欧州委員会の仲介の下、欧州議会と欧州理事会の間で最終的な内容が議論されることになる。
関連:欧州理事会、スマートコントラクトを制限する可能性のある法案に合意
問題点と修正案
Polygon Labsはまず、データ法30条が「スマートコントラクトを提供する当事者(party)」を前提としていることを問題視した。分散型アプリ(dApps)には、そのコードを書く開発者はいても、ブロックチェーン上で展開した後は自律的に稼働し、ユーザーと取引を行うことになると説明している。
企業などが運営管理・提供するシステムとの違いを述べる形だ。このために、コードを書くソフトウェア開発者がスマートコントラクトを「提供する当事者」と見なされないように文言を修正する必要があると論じている。
この点については、EUの包括的な仮想通貨法案「MiCA」と矛盾しているとも続けた。MiCAが、「完全分散型で提供される仮想通貨サービス」を対象範囲から除外していることを指摘する格好だ。
MiCAとは
「Market in Crypto Assets」の略で、EUが2020年9月に発表した包括的な仮想通貨規制案。ステーブルコインやその他のデジタル資産取引の規制に重点を置いており、ライセンス制度や消費者保護要件なども定めている。
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一方で、「分散型」「dApp」と銘打っているものでも、中央集権的なシステムを有していたり、「自然人や企業」など当事者がシステムをコントロールしている場合には、30条の対象に該当し得ることは認識しているという。
他の問題点として、現状ではデータ法30条が定義する「データ」の範囲が広範すぎるために、スマートコントラクトを通じて個人間でやり取りされる、あらゆる情報が補足されてしまう点を挙げた。
Polygon Labsは、30条の指すデータを「個人情報」および「業務上の機密情報および営業秘密」に絞ることを提案している。
以上のことを考慮して、30条は「当事者(party)」の範囲を次のように明確化すべきだと意見する形だ。
当事者:他社との合意の下で、個人情報または機密のビジネス情報および営業秘密にアクセス可能にするスマートコントラクトを提供する企業
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します