コインベース、新たに2つの訴訟に直面
株式売却に関する訴訟
米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースの株主は1日、同取引所に対して訴訟を起こした。コインベースの取締役らが、同社の株価が下がることを予期しながら株式を売却したと申し立てている。コインベースは同日、顧客データに関する訴訟にも直面している。
この訴訟は、コインベース株主の一人であるAdam Grabski氏が、デラウェア州の裁判所に提訴したものだ。コインベースのブライアン・アームストロング会長兼CEO、その他にマーク・アンドリーセン氏など取締役数名を相手取っている。
訴状は、コインベースが2021年にナスダックへ上場した際に、上場から数日以内に、被告らが同社の株式を約3,960億円(29億ドル)以上売却したと指摘。その後、5週間以内に、これらの株式の価値は約1,360億円(10億ドル)以上下落したと述べている。
また、被告は資本注入の必要性や、個人投資家の取引手数料からの収入が減る可能性を認識しており、株価が下がることも予測していたはずだと主張している。
さらに原告は、コインベースは、ナスダックへの直接上場を行っていたが、新規株式公開(IPO)という形を取ることもできたと申し立てた。
IPOの場合には、取締役が非公開の内部情報を保有していることを理由に、取引制限を課す会社が多い。しかしコインベースは、IPOという形は取らなかったため、取締役や役員も売買を行うことができたと主張している。
一方でコインベースの広報担当者は、米国で唯一株式公開されている大手取引所として「軽薄な訴訟」の標的になることがたびたびあり、今回の訴訟も、そのようなものの一例だとコメントした。
顧客の生体情報に関する訴訟
コインベースは同日、別件での訴訟にも直面している。
カリフォルニア州の地方裁判所に提出された訴状によると、原告は、コインベースが、顧客の生体情報を不適切に収集したとして訴えている形だ。
コインベースは、顧客身元確認(KYC)手続きにより、指紋と顔写真など生体データを収集したが、適切に行われていなかったとしている。
原告は、イリノイ州の生体情報プライバシー法(BIPA)では、生体データを収集しようとする企業は、そのようなデータが取得されることや、データが保存される目的・保存期間などを本人に書面で通知しなければならないと指摘。
さらに、顧客からの書面による同意も必要であり、企業は生体情報を将来的に破棄するためのスケジュールやガイドラインなども一般公開する必要があると続けている。コインベースは、こうしたBIPA上の手続きを施行していなかったと申し立てる格好だ。
また、コインベースは、そのアプリを土台とするプラットフォームをさらに強化するためにも生体認証データを収集しており、そのことで「不当に利益を得ている」とも主張。また、顧客の生体情報を、Jumio Corporationなど複数の第三者企業に開示したとも続けた。
SECとも裁判で争う構え
コインベースは、米証券取引委員会(SEC)とも裁判で争う構えを見せているところだ。
SECは3月、コインベースに対して法的措置を講じる予定だと伝える公文書「ウェルズ通知」を送付していた。同局は未登録証券を取り扱っていた可能性で、コインベースを調査していた経緯がある。
これに対してコインベースは4月27日に、SECへの反論を公開。有価証券を上場していないと改めて強調し、SECは明確なガイドラインを示さないまま、恣意的な取り締まりを行っていると批判した。
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