全世界への仮想通貨配布を目指す「Worldcoin」がウォレットをリリース World ID保有者はガス代が無料
使いやすいシンプルなウォレット
OpenAIの共同創業者サム・アルトマン氏の暗号資産(仮想通貨)プロジェクト「Worldcoin」は8日、同エコシステム初のウォレット「World App」のローンチを発表した。ウォレットは80カ国以上で提供される。公式ブログによると、World Appは、誰でも使いやすいように主要な機能に限定され、シンプルかつ親しみやすさを重視した設計となっているという。
World Appは、ベータ版は現在Polygon上に構築されているが、フルバージョンではイーサリアムロールアップ上となる予定。規制に準拠した仮想通貨取引所MoonpayやRampなどとの提携により、複数のオプションから選べるスムーズな入出金が可能で、電話番号や仮想通貨アドレスを使用する送金にも対応している。
現在サポートしている通貨は、ステーブルコインのUSDCおよびDAI、イーサリアム(ETH)、ラップドビットコイン(WBTC)、Worldcoin(WLD)。ウォレットにはUniswapが統合されており、トークンの取引も可能だ。
しかし、World Appは、Worldcoinプロジェクトの中核を成す「World ID」の取得によって、本来の機能を発揮する設計になっている。World IDの取得方法は後述するが、World IDを使うことで、さまざまなアプリケーションやサービスにアクセスできるようになる。
まずは、名前やメールアドレスなどの個人データを共有することなく、SNS等のアカウント認証が可能になることだ。また、World IDを登録することで、送金のためのガス代が無料となるとともに、対象国(米国は除外)では、毎月、Worldcoin助成金の付与申請が可能だ。さらに、イーサリアムとビットコインについて、学ぶことで稼ぐプログラムも用意されている。
AI時代の「人間の証明」
WorldcoinはChatGPTの開発企業OpenAIの共同創業者・CEOのサム・アルトマン氏と物理学者アレックス・ブラニア氏が2020年に設立した仮想通貨プロジェクト。世界中の人々に仮想通貨を配布するという壮大な野望を掲げており、目をスキャンすることで個人を識別して、仮想通貨Worldcoinを受け取るという仕組みを構築した。
バレーボールほどの大きさの球体である生体認証装置「オーブ」を使って、目の網膜をスキャンすると、オーブは各人に特有の目の虹彩をデジタルコードに変換して記録。ゼロ知識証明によりプライバシーを保護する形で個人を識別する。
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「すべての人にグローバル経済へのアクセスを提供する」という使命を掲げるWorldcoinだが、当初はオーブで生体認証をする手法が、プライバシーを侵害しディストピア的だと厳しく批判された経緯がある。創設者らは、スキャンした虹彩の画像は、コード生成後は永久に削除され、コードはWorldcoinの受領の有無の確認のみに使用されると説明していた。
しかし、その後のChatGPTの大々的な躍進により、AIと人間の区別が議論に上るようになり、AI時代の「人間の証明」の一つとして、Worldcoinの手法も受け入れられる機運が高まってきたようだ。Worldcoin を運営する「Tools for Humanity」の製品責任者は、「この半年でAIに起こったすべてのことによって、人々のこのプロジェクトに対する理解を深めることとなった。」と述べている。
World Appの広がり
公式ブログによると、World AppはWorld ID取得者に向けたベータ版のリリース以来、すでに150万人が参加し、毎月50万人以上が利用。世界各国で1日10万人以上の人々が、約6万件の取引と2万5,000件のWorld IDチェックなどに利用しているという。
Worldcoinは、2021年10月と2022年3月の二度にわたり、Andreessen Horowitz(a16z)やCoinbase Venturesなどの投資家から、それぞれ34億円と135億円相当を調達済みだ。Worldcoinの評価額は約4,000億円(30億ドル)とされる。Worldcoinは今年2月、最大158億円の資金調達を計画していることが、情報筋の話として報道された。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します