米SEC委員長、AI関連の詐欺行為に対する警戒を表明
SECがAI関連詐欺に警鐘
米国証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長は15日、AI(人口知能)関連技術の動向を緊密に監視しているとX(旧ツイッター)で明らかにした。ゲンスラー委員長は、AIを「現代で最も革命的な技術」と位置づけ、それを利用する「悪質な行為者」によって資本市場への影響が生じるリスクを強調した。
私たちSECは技術に対して中立の立場を取っている。重要なのは技術そのものではなく、その技術のもたらす結果である。
ゲンスラー委員長は、「AIは人間の知能の自動化に関わるものだから、その課題の重要性は非常に高い」と述べた。悪意を持った者たちがAIを悪用する可能性にも触れ、「AIを用いて選挙への影響や資本市場の操縦、公衆を驚かせる行為など、悪質な利用のリスクが考えられる。1938年の『宇宙戦争』ラジオ放送で火星人襲来報道で生じたパニックを超える、さらに大きな影響が生まれる可能性がある」と警戒を呼び掛けた。
さらに、AI技術の利用方法によっては証券取引法に抵触する場面が考えられると指摘。「SECとして、AI関連の課題から市場を守るための対策を強化している」と述べた。
最後にゲンスラー委員長は、「証券法の観点から言うと、詐欺は詐欺だ。SECは、投資家や市場を脅かす全ての形態の詐欺を特定し、それを厳しく取り締まる方針を貫いている」と強調した。
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AIと仮想通貨市場の新たな関係性
対話型のAI言語モデルChatGPTが2022年11月にリリースされて以来、AI関連プロジェクトの資金調達が加速。仮想通貨(暗号資産)市場でもフェッチAI(FET)やオーシャン(OCEAN)をはじめとするAI関連銘柄の価格が急騰した。Coingeckoのデータによれば、AI関連の仮想通貨の時価総額は3,700億円に達している。
この流れに乗じて、新しいプロジェクトも多く立ち上がっている。仮想通貨取引データプラットフォーム「DEXTools」で「ChatGPT」や「OpenAI」といったキーワードを検索すると、計800以上の取引ペアがヒットする。OpenAIが公式にブロックチェーン分野への参入を宣言していないにもかかわらず、詐欺師たちがAIのブームを利用してトークンを乱立させている現状だ。
AI技術の進展により、詐欺師たちが作業を自動化し、ターゲットリーチを効率的に高めるリスクも増している。新たな詐欺コインをAIを利用してソーシャルメディアで大々的に宣伝するケースが増加。AIツールの力を借りて、より多くのユーザーを惹きつけ、実際には存在しないファンベースを作り上げることが可能になっている。
一方で、仮想通貨市場における詐欺活動の抑制策として、AI技術を駆使した新しい取り組みが始まっている。カリフォルニアのサンディエゴ州立大学の研究チームは、仮想通貨の詐欺を特定・追跡するためのシステム「GiveawayScamHunter」を開発した。このAIを活用したシステムは、特にツイッター上で行われる無料仮想通貨プレゼントと称する詐欺活動を検出することを目的としている。
「GiveawayScamHunter」により、2022年6月から1年間で87,617アカウントからの95,111の詐欺リストを検出。この結果、365人以上が詐欺の被害に遭遇し、その損失額は約87.2万ドルとなっていることが判明。その結果と関連するアカウント、ドメイン、ウォレットアドレスがXに報告されている
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ChatGPTとは
ユーザーの質問に対し、人間との会話感覚で回答できるように設計された対話型のAIで、OpenAI社が開発。コンテンツ制作、レポート作成、コード設計など用途は多岐に渡るが、プライバシーや著作権の侵害など懸念事項も多い。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します