はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 取引所 WebX
CoinPostで今最も読まれています

「多様なイノベーション促進へ」金融庁・今泉参事官が語る、暗号資産規制やETFの展望

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

2025年7月8日、金融庁は総合政策局に「暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官」のポストを新設し、今泉 宣親(いまいずみ よしちか)氏が就任した。

このポスト名には、イノベーションという言葉が含まれており、暗号資産・ブロックチェーン分野における新たな取り組みへの意欲を示すものとして業界から注目を集めている。

金融庁の暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官 今泉宣親氏に取材をした。新設ポストの意義や今後の制度改革の方向性、そして「Japan Fintech Week 2025」など業界との連携について話を伺った。

インタビュイー紹介

金融庁 今泉宣親氏

金融庁において市場企画室長および資産運用改革室長を歴任。資産運用立国の取り組みを通じた、国民の資産形成と企業経済の成長を通じた国民の厚生増大に尽力。

過去にはサイバーセキュリティ関連業務にも従事。2025年7月8日、金融庁総合政策局に新設された「暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官」に就任。暗号資産交換業者のモニタリングとイノベーション推進の両輪を担う。

デジタル部門体制強化の背景と注目分野

暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官という新しいポストが設立された背景について教えてください

今回、金融庁の人事異動で、デジタル部門の体制強化が行われました。従来はフィンテック参事官一人で全体を所掌していたのに対し、私が担当する暗号資産・ブロックチェーン・イノベーション参事官と、資金移動業者や電代業、ネット銀行などを所管する資金決済参事官の二人に増強されることとなりました。

私の担当は、暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者のモニタリング、そしてJapan Fintech Weekなどを通じたイノベーション推進です。モニタリングという規制的な要素だけでなく、イノベーションを推進するチームが連携することで、利用者保護の確保とイノベーション推進の両立を目指します。

金融行政の目的は、国民の資産形成と企業経済の成長、この二つを実現することによって、国民の厚生を増大させることです。つまり、この国の富を増やし、国民が豊かな生活を送れるようにすることが我々のミッションです。今回の職務においても、この目的に沿って取り組みたいと考えています。

現在、暗号資産やWeb3分野で特に注目している分野はありますか

足元で特に注視しているのは、暗号資産に関する制度の議論が進展することで、投資家の裾野が拡大していく可能性です。これに合わせて暗号資産交換業者のあり方においても、さらなる高度化が必要になると考えています。

もう一つは、ステーブルコインなどの決済に関連する分野です。CBDC、トークン化預金、ステーブルコイン等、海外でも急速に取り組みが進展しています。この中でどういった方向に進むのか、進むべきか、さらなる選択肢が出てくるのかという点に特に注目しています。

制度改革がもたらす影響

暗号資産の金融商品取引法への移行や税制改革が実現した場合、どのような影響があるでしょうか

制度整備が進展して利便性が高まれば、アーリーアダプターだけでなく、多くのマジョリティ層が参入してくることになります。これはWeb3領域の裾野の拡大という観点からはプラスの結果でしょう。

他方、これは技術的な詳細に精通していない一般の利用者も参入してくることも意味します。インターネットやスマートフォンを使う際も、必ずしも技術を理解して使用しているわけではないのと同様に、技術の詳細を知らなくても安心して利用できる環境を整備する必要があります。そこで利用者保護の確保が重要な要素となります。

暗号資産市場が投資家により良い影響をもたらすものになるよう、私たちは業界の皆様との密接なコミュニケーションが不可欠だと考えています。

分離課税の導入はどのような方向性で進められるのでしょうか

昨年末に公表された与党税制改正大綱においては、「一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置づけ、他の金融商品と同等の投資家保護のための必要な法整備をするとともに、取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務の整備等をすることを前提に、その見直しを検討する」こととされています。この記載をもとに今後、関係者で議論が進められるのではないでしょうか。

ビットコインETFの影響とリスク管理

ビットコインETFが国内で承認された場合、どのような影響があるとお考えですか

一般的に考えられることとして、暗号資産交換業者を通さなくとも多くの投資家が暗号資産にリーチできるようになると思われます。

従来は暗号資産交換業者を通じてのみビットコインなどの暗号資産にアクセスしていたものが、証券会社に口座があればアクセス可能な世界が実現します。当然、投資家の裾野は拡大していくことが予想されます。日本全体の資産構成において、ビットコインが占める割合は従来より増えるかもしれません。

仮に、企業年金内のアセットオーナーがビットコインETFをポートフォリオに組み込んだ場合、その価格変動が基金の運用結果に影響を与えることになります。こうした影響の拡大についても注意を払うことが必要ではないでしょうか。

ビットコインETFがもたらす新たなリスクについて教えてください

暗号資産交換業を所管する私の立場から、業界の皆様ともよくコミュニケーションをとらないといけないのは、サイバーセキュリティ強化などの観点です。

暗号資産市場の影響が波及する範囲が従来とは大きく変わる可能性があることから、暗号資産交換業者のセキュリティ強化やマネーロンダリング対策の徹底など、暗号資産交換業者の皆様の社会的責任は従来以上に重大なものになると思います。

サイバーセキュリティと利用者保護

今後一年間で最も優先的に取り組む政策課題は何でしょうか

まず、制度改革の進展をモニタリング部門としても注視し、それに応じてガイドラインをはじめとした環境整備を行い、現場のモニタリングに繋げていくことが我々の重要なミッションです。

その際、利用者保護の確保とイノベーション推進を両立させていく観点が重要となります。利用者保護というとコンプライアンスコストの増大や、ブレーキ的な要素として捉えられがちですが、そうではありません。マジョリティの方々も安心して利用できる環境の構築は、Web3を広く普及させていく上で不可欠の要素です。

サイバーセキュリティに対する対策はどのように進めていきますか

暗号資産に限らず、サイバーセキュリティにおいて一般的に大事なことは、自助、共助、公助の三つの要素です。自助については各社でしっかり取り組んでいただき、公助という意味では金融庁でもDelta Wallといった業界横断演習で後押しをしています。

その上で重要なのが共助の部分です。サイバー攻撃は、各社共通の敵であり、業界全体で協力して対処していくことが重要と考えています。ビジネス上は競合関係にある事業者同士でも、サイバーセキュリティという共通の脅威に対しては協力して対応することは、金融を含めた多くの業界で行われています。

全体を底上げしていくことは業界そのものの信頼にも繋がるからです。暗号資産交換業界においても、こうした取り組みが今以上に進んでいくことは合理的ではないかと思います。

日本の競争優位性とステーブルコインの可能性

日本の暗号資産・ブロックチェーン産業の国際競争力をどう評価していますか

暗号資産にしても、ステーブルコインにしても、現在米国で議論がなされていますが、我が国は世界に先駆けて制度整備を進めてきました。これ自体、国際的に見ても決して引けを取るものではないと思っています。

そのうえで、例えばステーブルコインについていえば、日本国内では現在はドル建てしか発行されていませんが、円建てステーブルコインが登場した際の対応、また暗号資産との交換以外の用途、例えばリテール決済での少額決済への活用や、より広範なインフラ基盤としての可能性など、検討すべき課題は多岐にわたります。
(※取材後の8月18日に円建てステーブルコインの国内第一号発行を目指すJPYC株式会社について、第二種資金移動業の登録が行われた)

国内外で様々な実証実験と試行錯誤が進み、可能性が広がる中で、日本のプレイヤーにも、ぜひイノベーションを進めていただきたいと考えていますし、我々も制度整備などを通じて、後押ししていきたいと思っています。

米国のプロジェクト・クリプト構想についてどう見ていますか

プロジェクト・クリプトやクラリティ法案の具体的な内容がどのように展開していくのか、強い関心を持って注視しています。

例えば、CFTC(商品先物取引委員会)とSEC(証券取引委員会)の所管の判断基準がどのように整理されるのか、つまり暗号資産を商品として扱うのか証券として扱うのかの線引きなど、今後どのように具体化されていくのか関心をもって見ていきたいと思います。

業界との対話と今後の展望

業界団体との今後の連携についてどのようにお考えですか

お互いに遠慮することなく、双方向のコミュニケーションが行える関係を築きたいと考えています。金融審議会の暗号資産ワーキンググループにおいて業界関係者がプレゼンテーションを行っているのも、我々が独自に制度設計を進めるのではなく、実際にビジネスを展開している方々の意見を聞きながら進めたいと考えているからです。

関連:金融庁が仮想通貨WG第1回会合を開催、金商法活用で本格検討へ

お互い遠慮して意見を言えない状況、逆に一方的に意見を言っ放しになる状況はどちらも健全ではありません。官民がともに、社会全体にWeb3ビジネスが付加価値をもたらす形をどう実現していくか、その方法を手を携えて考えていきたいと考えています。

コインポストの読者へメッセージをお願いします

読者の皆様には、ビジネスを展開されている方、投資家として関わっている方など、様々な立場の方がいらっしゃると思います。Web3領域のブロックチェーン技術や関連ビジネスが、最終的に社会に付加価値をもたらすものになることを期待していますし、そのような方向に向かうよう、ステークホルダーの皆様と共に取り組んでいきたいと考えています。

信頼性が損なわれ、マジョリティ層が不信感を抱いてしまうと、広がりは停滞してしまうかもしれません。現在は成長期にあると認識していますが、この状況をいかに持続させるかが重要な局面にあります。

サイバー攻撃や詐欺的な金融商品など、負の側面を最小限に抑制し、イノベーションのプラスの側面を社会全体が享受できる環境を構築することが必要です。これは規制当局だけで実現できるものではなく、投資家、事業者、メディアを含むすべての関係者と協力して、より良い環境を構築していきたいと考えています。

総括

今泉参事官が強調した「利用者保護とイノベーションの両立」という理念は、日本の暗号資産産業が健全に発展していくための重要な指針となるだろう。サイバーセキュリティの強化、ステーブルコインの活用、ビットコインETFに関する見解など、今後の展望について貴重な話を伺うことができた。

業界と行政が双方向のコミュニケーションを深めながら、日本発のイノベーションが世界に広がることが期待される。

CoinPostの関連記事

関連:SBI、仮想通貨ETFの国内上場を計画 金融庁の制度検討で実現に前進

関連:金融庁、金商法移行を本格検討 分離課税やビットコインETFの機運高まる

CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
05/23 土曜日
14:00
米バンカメ、84億円相当仮想通貨ETF保有を開示 ビットコイン増加・ETH減・XRP維持
米金融大手バンク・オブ・アメリカが2026年第1四半期の13F報告書を提出。ビットコイン・イーサリアム・XRP・ソラナのETFを合計約5300万ドル分保有し、株式含む仮想通貨関連総額は22億ドルを超えた。
13:25
カルシとポリマーケット、米控訴裁判所で敗訴 違法賭博訴訟は州に差し戻し
米国の控訴裁判所は、予測市場大手カルシとポリマーケットが求めた州裁判の一時停止を却下した。違法賭博をめぐるネバダ州・ワシントン州との訴訟は州裁判所で続行される。
12:00
米グレースケールのHYPE現物ETF申請、修正案を再度提出 3本目のETF実現間近か
仮想通貨資産運用企業グレースケールがHYPE現物ETFの第3次修正申請を提出した。承認されればビットワイズ・21シェアーズに続く3本目のHYPE ETFとなる。
11:30
米SEC、ナスダックのビットコイン指数オプション上場を承認
米SECは5月22日、ナスダックPHLXによるビットコイン指数オプションの上場規則変更を加速承認した。現金決済・ヨーロピアン型の新商品で、上場にはCFTCの免除承認が別途必要となる。
10:25
ビットコイン1200万円割れ、米「100万BTC購入期待」後退で失望売り広がる|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは5月22日から23日朝にかけて下落し、円建てでは節目となる1,200万円を割り込んだ。背景には、米国で新たに議論されている「ビットコイン準備金法案」において、市場で期待されていた「100万BTCの購入義務」といった強い内容が盛り込まれず政策期待が後退したことがある。
10:00
NEARトークン価格高騰、6月末までに動的リシャーディング導入 AIエージェント対応も視野
ニアプロトコルが次回アップグレードの一環として動的リシャーディングを2026年6月末までに導入する計画だ。シャードの自動分割でAIエージェントによる商取引への対応も目指す。
08:40
米ビットワイズ・21シェアーズのHYPE現物ETF、25億円相当HYPEを追加購入 累計流入は100億円超
ビットワイズと21シェアーズのHYPE現物ETFが直近24時間で合計1610万ドル分HYPEトークンを購入。累計純流入は6396万ドルに達し、5月21日には過去最高値62.18ドルを更新した。
07:55
予測市場大手ポリマーケット、9000万円超が不正流出
予測市場大手ポリマーケットは、資産が不正流出したことを公表。流出額は約9,123万円であることやユーザーの資産は影響ないこと、事業は通常通り継続していることなどを説明した。
07:20
トランプメディア、320億円相当ビットコインを取引所へ送金
ブロックチェーン分析企業アーカムのデータによると、トランプ・メディアに帰属するビットコインアドレスが2650BTCを取引所Crypto.comのアドレスへ送金した。送金の目的は不明。
07:00
米下院がカルシ・ポリマーケットにインサイダー取引調査、議員の参加禁止立法も視野
米下院監視委員会のジェームズ・コマー委員長が5月22日、予測市場カルシとポリマーケットのインサイダー取引調査を開始したと発表。両社CEOに内部記録の提出を求めた。
06:20
SEC、米国株トークン化の免除制度公表を延期 第三者発行の株主権利保証が課題
米証券取引委員会(SEC)は株式トークン化資産の取引を対象とした「イノベーション免除」制度の発表を延期した。証券取引所関係者や市場参加者から、発行企業の同意を要しない第三者トークンの取り扱いへの懸念が相次いでおり、投資家の権利保護や制裁回避リスクが制度設計の焦点となっている。
05:50
新たな米ビットコイン準備金法案の詳細判明、100万BTC購入義務含まれず
米下院に提出されたARMA法案の草案が明らかになった。政府保有ビットコインを最低20年間売却禁止とする一方、一部で報じられた100万BTC購入目標の条項は法案に存在しないことをThe Blockが確認した。
05:00
米ICEとOKXが原油の永久先物を共同提供、1.2億人規模の仮想通貨ユーザーにアクセス開放
ニューヨーク証券取引所を傘下に持つインターコンチネンタル取引所(ICE)と仮想通貨取引所OKXが、ICEのブレント原油・WTI価格を基準とした永久先物契約を共同提供すると発表した。OKXが許認可を持つ地域で順次展開へ。
05/22 金曜日
17:14
JPYC、シリーズBで累計約50億円の調達完了へ 日本円ステーブルコインの社会実装を加速
JPYC株式会社がシリーズBラウンドで累計約50億円の資金調達を完了予定。発行7ヶ月で総取引高350億円超を達成し、日本円仮想通貨の社会実装を加速する。
15:58
グラスノード分析、ビットコイン供給量の30%超で公開鍵露出を確認 量子リスクへの備えを提言
グラスノードの分析によると、ビットコイン発行済み供給の約30%にあたる604万BTCがすでに公開鍵露出状態にあり、量子コンピュータによる将来的なリスクにさらされている。
今から始める仮想通貨特集
通貨データ
重要指標
一覧
新着指標
一覧