イーサリアム以外のスマートコントラクト・プロジェクト
- スマートコントラクトとは
- イーサリアムやERC20トークンなどの概要で頻繁に出てくる、スマートコントラクトについて記載。またイーサリアム・ブロックチェーン以外で進められているスマートコントラクトを利用するプロジェクトを紹介している。
スマートコントラクトの仕組み
スマートコントラクトとは、紙やPDFのような契約書とは異なる形態の『契約』だ。
条件とそれを満たす・満たさなかった場合の行動基準を定めており、これまでも似たような自動化の仕組みは存在していた。
しかし、従来の自動化の仕組みとの大きな違いは、スマートコントラクトが企業の壁を超え、国境を超えて利用できることだ。
さらに、そのコードは世界中誰でも確認することが可能であり、隠蔽など不可能となる。
今回、イーサリアムのスマートコントラクトだけではなく、その他のブロックチェーン上で稼働するスマートコントラクトについてまとめてみた。
大半の人が『イーサリアム・ブロックチェーンとともに稼働するプログラムで、あらかじめ決められたルールを自動執行する仕組み』であると仮想通貨に携わっている方なら理解しているだろう。
しかし、実はスマートコントラクトはイーサリアムだけの専売特許ではない。
イーサリアム、EOS、NEO、ビットコインでもスマートコントラクトは利用可能だ。
今回、複数あるスマートコントラクトの中でも、注目すべきプロジェクトを紹介する。
復習も兼ねて
スマートコントラクトは、ブロックチェーン技術を使用し、取引(トランザクション)を実行するのに必要なプログラムのこと。
このプログラムには条件と実行内容が設定されていて、「もしAならば、Bを実行する」という命令文が記載されています。
この条件に合意したすべての人やノードの間での取引は、すべて自動的に実行される。
ポイントは、条件に合意すれば、あとはすべてが自動化されること。
そして、スマートコントラクトがブロックチェーン技術と密接に関わっているため、ネットワーク障害に強い、という点だ。
つまり、スマートコントラクトは高い安定性とセキュリティをもたらすため、今後の需要拡大が確実視されているのだ。
MyWish
ビットコイン、イーサリアム、NEOの3種類のブロックチェーンに適したスマートコントラクトを自分で作成できるアプリケーションが、MyWishだ。
MyWishの使い方でもっとも有名なのは、Digital Will(電子遺言書)としてのスマートコントラクトを作成できる機能だろう。
これは、遺言書(人の死後に、資産を誰に相続するかなどを生前に取り決めておくもの)をスマートコントラクトにすることで、死後に遺産相続などの争いを未然に防ぐことができる。
今はMyWishのひとつのスマートコントラクトとしてサイトでは紹介されているが、もともとはLastWillという名前でローンチされていた。
行方不明や死亡など、ユーザーが資産を使用できない状態になった際に、彼/彼女の相続人の間で予め契約されたユーザーの資金を分配するスマートコントラクトを作成するサービスだった。
今では、他の用途のスマートコントラクトも設計することができるサービスになっている。
Temco
韓国で注目を集めているブロックチェーン・スタートアップのひとつ、Temco。
このプロジェクトは、ICO(イニシャルコインオファリング)を実施する予定だが、実施するのはイーサリアム・ブロックチェーンではなくビットコイン・ブロックチェーン上で行う。
ビットコインのサイドチェーン開発を手がけているプロジェクトは複数ある。
その中で、TemcoはRSKによって作成されたサイドチェーンを採用。
中小企業向けにサプライチェーン・マネジメントを実施する上で必要なインフラストラクチャーと財政面での柔軟性を提供することをミッションとしている。
これが実現すると、サプライチェーン上でやりとりされる情報の透明性が高まり、事業者のみならず消費者は信頼できる情報にアクセスできるようになる、とTemcoは主張している。
安全性などを天秤に
イーサリアム・ブロックチェーン上で稼働するスマートコントラクト以外のスマートコントラクトに、注目が集まっている理由には、スマートコントラクトのバグを悪用した資産の盗難が相次いでいることがあるだろう。
一方、ビットコインは稼働し始めてから9年以上、ハッキングやクラッキングの被害を受けていない。この点は、高く評価されるべきであろう。
そして、このことがビットコインのサイドチェーンを使ったスマートコントラクト開発を後押ししていることは否めない。
イーサリアムには、コーディングの自由度が高い。
その反面、ビットコインは必ずしもイーサリアムほどの自由度はないが、すでに述べたようにセキュリティ面では、イーサリアムより優れている部分がある。
セキュリティ、開発のしやすさ、コスト効率。
これらを天秤にかけた開発者、およびプロジェクト推進の舵取りをしている経営者たちの試行錯誤は、もうしばらく続きそうだ。
(なお、本記事の内容に関しては、寄稿者個人の見解であり、所属する組織の公式見解ではございません)
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します