米連邦地裁、コインベースによるゲンスラーSEC委員長のメール開示請求を批判

私的通信の開示要請は不適切

米ニューヨーク南部地区連邦地裁のキャサリン・ポーク・ファイラ判事は11日、証券取引委員会(SEC)に対する訴訟で米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースが、ゲイリー・ゲンスラー委員長の私的通信の開示を求める申し立てを行ったことについて強い懸念を示した。

コインベースとSECは複数の訴訟で争っているが、本件は未登録の証券を提供していたとして、SECがコインベースを提訴したもの。

コインベースは先月、ゲンスラー氏に召喚状を送り、この件に関連があるとみなされる通信に関する文書の提出を求めた。この召喚状では、仮想通貨に関する2017年から現在までの文書の開示が求められており、この中にはゲンスラー氏が現職に就任する前の4年間も含まれている。

SECは6月28日、裁判所に秘密保持命令を申請し、召喚状はゲンスラー氏個人ではなくSECに向けられるべきだったと主張。コインベースの要求は「公務員の私生活への不適切な侵入」であると訴えた。

SECの反論に対しコインベースは3日、ゲンスラー委員長の仮想通貨に関する個人メールは「適切な証拠開示情報源」であるとして異議を唱える書簡を提出した。

急遽開催された審理でファイラ判事は、「7月3日の回答には、良い意味ではなく、少し驚いた」と発言。コインベースの書簡で述べられた主張は「愚か」とも呼べるレベルに近いと批判した。

審理の終盤で判事は、ゲンスラー氏がSEC委員長に就任する前の発言の価値については「強い意見」を持っており、依然としてコインベースの要請は不適切であるというSECの見解に傾いていると語った。

関連:米コインベース、対SEC訴訟でゲンスラー委員長のメール開示を要求

裁判の今後

ファイラ判事は今回の審理では、「基本的にどの主張にも心を動かされなかった」と述べ、さらに詳細な説明を両者に求める形となった。

同判事はコインベースが召喚状を取り下げる意向がないことを確認し、SECの却下動議に反応する形ではなく、SECに対する証拠開示の強制動議を申し立てる方向でコインベースに手続きを進めるよう示唆した。

また両者に対し15日までに、自身の主張を裏付ける適切な説明を記した書簡を裁判所に提出するように求め、さらに両者間でブリーフィングのスケジュールを調整するように促した。

これまでの判事の見解

ファイラ判事は、これまでSECの提訴棄却を求めるコインベースの申し立て内容のほとんどを却下してきた。

ハウィーテストに照らすと、コインベースの「経営努力」は証券性を構成する可能性があると指摘。訴訟の継続という形で、コインベースが取引所、ブローカー、決済機関として運営を行い、ステーキングプログラムを通じて未登録の証券を販売していたというSECの主張を一部認める判断を示した。

一方、コインベースのウォレットアプリに関しては、SECの主張に異議を唱えている。ファイラ判事は、コインベースがウォレットサービスの提供を通し、未登録のブローカーとして有価証券の取引事業を行っているというSECの申し立ては却下した。

11日の審理でコインベースの弁護士は、SECからの情報提供や、ゲンスラー氏およびSECと建設的な話し合いを行うことに関して、同社は大きな困難に直面していると判事に訴えた。

判事は、当事者らがより効果的に協力し、過度の司法の関与なしに証拠開示の問題に対処するよう要請した。

関連:「SECは仮想通貨業界を破滅させようとしている」コインベース、明確な規制整備を改めて要請

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