ビットコインへの資金流入でテザーの乖離減少、米クラーケンでは1000倍の異常値
- テザー、ビットコインへの資金流入で乖離減少
- 仮想通貨市場でのビットコイン高騰に伴い、米ドルに裏付けられたステーブルコイン「テザー(USDT)」からの資金流入が増加傾向にある。米取引所クラーケンでは、USDT/USDが1000ドルを付ける異常事態も観測された。
テザー(USDT)からの資金流入が増加傾向に
仮想通貨ビットコインの高騰に伴い、テザーからの資金流入が増加傾向にある。海外の仮想通貨データサイトcoinlibでマネーフローを確認すると一目瞭然だ。
相場に影響する問題も
4月26日、ステーブルコインのテザー(USDT)の裏付け資産、約950億円の不正利用が発覚。親会社iFinex社が米NY州の司法長官から裁判所命令を受けた事が確認され、ビットコインが前日比5%安の56万円に急落するなど、その影響は仮想通貨市場全体に波及した。
それからまもなく、当のBitfinex社とTether社が公式声明を発表。
当局の指摘を全面否定したほか、「USDT担保資産から資金を借り入れる形をとった理由は、Crypto Capitalの資産が政府に差押えられたことが要因であり、適切に管理されている。」「資産消失ではなく、Tether社は健全な財務体制を維持している。」などと真っ向から否定したこともあり、市場は落ち着きを取り戻しつつある。
米テザー社が発行するUSDTの裏付け資産を巡っては、4月30日にテザー社の顧問弁護士が、「全発行量の内、26%のテザー(USDT)は米ドルの裏付けがない(債権に裏付けられている可能性はある)」とする宣誓供述書が明らかになるなど、複数の見解が入り乱れている。
4月26日時点の新たなテザー問題発覚時は、ネガティブサプライズとして市場が動揺。テザー価格も連動して1USDT=0.9550ドルとなる乖離4%強まで急落するなどの現象が見られたが、その後のビットコイン高騰に伴い市場は落ち着きを取り戻し、問題視されていた「マイナス乖離」も縮小しつつある。(下図)
以前までBTC価格に対して正の相関を示していたテザー価格であったが、直近のBTC高騰に対しては逆相関を示して推移している。
先ほど掲載したマネーフローと合わせると、2018年までの下落トレンド時に避難先として使用されていたステーブルコインから、直近のビットコイン急騰で転換した市況を背景に、テザーからビットコインへの資金移動を示唆している。
なお、仮想通貨リサーチ企業Diarの調査によれば、仮想通貨市場全体の時価総額は、2018年から2019年にかけて1.64兆円増加。この内、米ドル基軸のステーブルコインは8%以上という高い割合を占めている。
テザー(USDT)とは
2018年以降、米ドルに裏付けられたステーブルコイン「テザー(USDT)」を発行するTether社をめぐり、仮想通貨市場を度々揺るがしてきた。
テザーは基本的に「1USDT≒1USD」というほぼ等価の図式が崩れることはなく、1USDTに対して1USDがテザーの口座に担保されることで、その価値を維持してきたものだ。USDTの総発行量に対し、同量の準備金が銀行口座に担保されていなければならない。
しかし2018年1月には、発行されたテザーが準備金に裏付けられていない可能性があり、価格操作に疑いがあるとして、CFTC(米商品先物取引委員会)がテザー社に召喚状を送付したことが判明、同年2月に米上院が「公聴会」を開催するなど、以降も度々取り沙汰されている。
そのほかのステーブルコインが台頭しつつあるものの、様々な取引所でUSDT(USD Tether)が基軸通貨の1つとして採用されており、その影響は無視できない。
米クラーケンでUSDTが1,000ドルを記録
なお、直近の相場の急変動を受け、米大手取引所クラーケンで米ドル建てのUSDT/USDが1,000ドルを付ける異常事態が発生した。
それ以前のチャートは1USDT=1ドル付近で正常に動作しており、現時点では原因は明らかになっていない。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します