仮想通貨イーサリアムのASIC対策「ProgPoW」の実装に大幅な遅れか
- ProgPoWの実装に大幅な遅れか
- イーサリアムの非中央集権化を進める新たなアルゴリズム「ProgPoW」のコード監査に遅れが生じているようだ。ProgPoWの実装が次期大型アップグレード以降になるとの見立ても。
ProgPoWの実装に大幅な遅れか
イーサリアムの一層の非中央集権化が期待されるアルゴリズム「ProgPoW」に対する監査が、次の大型アップデート「イスタンブール」までに終了しないとの見立てが強まり、ProgPoWの導入時期の延期の可能性が浮上している。
イーサリアム財団の責任者Hudson Jameson氏は、現状について以下のように説明を行った。
監査企業「Least Authority」と共に監査を行う予定であった、ASICsに特化したハードウェアの監査者が離脱した。
現在ハードウェア部分の監査ができるパートナーを探している。
監査パートナーの離脱により、監査終了時期のずれ込みが予想される格好であるが、その離脱した監査パートナーの詳細は明らかになっていない。
なお、この状況を受け、Jameson氏は二つの提案を行っている。
- アップグレード「イスタンブール」後まで、ProgPoWの導入延期
- 監査が終わり次第、ProgPoW導入のための単独アップグレードを実施
先月、「ProgPoW」のコード監査費用の調達を完了したと公表された。今年1月から、開発者コミュニティは、コード監査の依頼費用の収集のために、クラウドファンディングを実施し、約550万円を調達したという。
本来の監査スケジュールでは、5月31日には最終監査レポートの提出が予定されていた。なお監査内容は以下となる。
- イーサリアムセキュリティへProgPoWが与える影響(アルゴリズムセキュリティ、攻撃領域、51%攻撃リスク、その他潜在的なセキュリティリスク)
- 目標とするASIC耐性の達成
- ハッシュパワーとマイナーバランスの変化
- “フェア・マイニング”の見地からのProgPoWがEthashと比較して与える潜在的なメリットとデメリットの特定
- ProgPoWが非中央集権化を促進するか
- その他エコシステム全体に与えうる影響(分散性、経済規模、コスト等)
また、「イスタンブール」とは、次に予定されるイーサリアムの大型アップデートの名称で、今年1月に、イーサリアム元コア開発者のAfri Schoedon氏は、イスタンブールのスケジュールについて「今年10月16日前後」にメインネットアクティベーションが可能になることを示唆している。
ただ、これまでのアップデート延期を鑑みると「イスタンブール」の日程の変更も十分にありえるだろう。
こうした点も考慮すると、年内でのProgPoWの導入は厳しいのかもしれない。
「ProgPoW」とは
「ProgPoW」とは、ASICマイニングの効率を下げ、GPUに優位性を与えるアルゴリズムである。
つまり「ProgPoW」の実装は、ASIC対策を目的としたシステム変更ということになる。
以前からコミュニティ内で実装の必要性が議論されてきたものであるが、その背景には2018年にイーサリアムに特化したASICの開発が相次いだことがある。イーサリアムにおけるPoWのアルゴリズムであるEthashには、元々ASIC耐性が備えられていたが、2018年にはそれに対応したASICの開発が盛んになった。
例えば、2018年4月にマイニングマシン製造最大手bitmain社が発表した「アントマイナーE3」がそれにあたる。また、同年9月には、マイニングマシン製造ベンチャーのLinzhi社もEthashに対応したASICの発売予定を発表した。そして、そのようなEthashに対応したASICの登場へのコミュニティの懸念は、「マイニングの寡占」による中央集権化である。マイニングのみに特化したASICは、個人もしくは中小規模によるGPUマイナーを排除していくことが予想される。
また、個人でもASICの購入は可能であるがGPUと比較しても高価なため、個人によるマイニングへの参入障壁は高くなる。その結果として、少数のマイニング業者による寡占状態が生み出される可能性が以前から指摘されてきている。
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