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AIエージェントは「銀行口座を持てない」のか? ブロックチェーンが補う5つのインフラ|a16z crypto

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

AIエージェントに欠けるインフラ:ブロックチェーンが貢献できる5つの方法|a16z crypto
※本記事は、a16z cryptoの許諾を得てCoinPostに転載しています。

AIエージェントが、いよいよインフラ整備より先に経済主体として動き始めました。

これまで普及してきた対話型AIとは異なり、AIエージェントではタスクを自律的にこなし、取引を完結させるほどの能力を持つようになった一方で、一つの根本的な問題が解決されないままになっています。

「自分が誰で、何をする権限があり、どう報酬を受け取るか」を証明する標準化された方法が、まだ存在しないのです。

a16z cryptoの研究チームは、この構造的ギャップに対してブロックチェーンが提供できる5つのソリューションを整理しました。公開台帳・ウォレット・ステーブルコインは「未来の技術」ではなく、すでに機能している現実のインフラです。本稿では、各領域における具体的な役割を解説します。

1. 人間以外のアイデンティティ確立

金融サービス業界だけでも、自動取引システムやリスクエンジンといった非人間のIDは、すでに人間の従業員の約100倍に達しているとされます。そして最新のエージェントフレームワークが普及するにつれ、この比率はあらゆる業界で上昇していくと予想されます。

しかし、これらのエージェントは事実上「銀行口座を持てない」状態にあります。金融システムと接続できても、自分自身の身分や権限を証明する手段がなく、プラットフォームをまたいで自律的に動けず、行動に対する責任も負えません。

この課題を解決する概念がKYA(Know Your Agent:エージェント確認)です。

人間がKYC(身分確認)や信用履歴に頼るように、エージェントにも「誰を代理しているか・何を許可されているか・どう報酬を受け取るか」を証明する暗号署名付き認証情報が必要になります。その点において、ブロックチェーンは、チャットアプリ・API・マーケットプレイスを横断して機能する中立的な調整レイヤーを提供します。

オンチェーンのエージェントレジストリ、USDCを使用するウォレットネイティブエージェント、「信頼度最小化エージェント」向けのERC規格など、初期実装はすでに登場しています。共通の認証基準が確立されるまでは、サービス提供側はエージェントをファイアウォールでブロックし続けるでしょう。

2. AI運用システムのガバナンス

エージェントが資本配分やサプライチェーン管理といった重要なリソースを動かし始めると、新たな疑問が生じます。「では、実際に誰がコントロールしているのか?」という問題です。

たとえガバナンス層が分散化されていても、その下のAIレイヤーが単一のプロバイダーに支配されている場合、そのプロバイダーがモデルを更新したり、決定を覆したりする力を持ち続けます。表面上は民主的に見えても、実態は不透明なモデルの挙動に動かされるシステムになってしまうのです。

ブロックチェーンはこの問題に対応できます。集団的な意思決定がオンチェーンに記録・自動執行される場合、AIシステムは検証済みの結果に従うことが強制されます。エージェントが暗号化された実行ログを持ち、AIレイヤーがユーザー所有で移植可能であれば、どの企業もモデル更新によってルールを書き換えることはできません。

真の権威はシステム自体に組み込まれた強制力にあります。AIガバナンスは政策の問題ではなく、インフラの問題なのです。

3. AIネイティブな決済インフラの構築

AIエージェントはすでに、ウェブスクレイピングや画像生成といったサービスを自律的に購入し始めています。StripeとTempoが共同開発したMPPマーケットプレイスは60以上のAI向けサービスを集約し、開設初週に3.4万件以上の取引を処理。手数料は最低0.003ドルで、ステーブルコインがデフォルト決済手段の一つとして採用されています。

これらのサービスにはチェックアウトページがありません。エージェントはスキーマを読み込み、リクエストを送り、支払いを完了し、出力を受け取る。店舗も営業チームも持たない「ヘッドレスマーチャント」という新たな商取引形態です。

Coinbaseのx402プロトコルはエージェント主導の決済を月間約160万ドル処理しており(ウォッシュトレード除外後)、Stripe・Cloudflare・Vercel・GoogleがいずれもX402を自社プラットフォームに統合しています。ステーブルコインがこのインフラに選ばれる理由は明確です。ヘッドレスなサービス提供者は従来の審査プロセスを通過しにくく、一方でステーブルコインはオープンネットワーク上でパーミッションレスにプログラム可能だからです。

4. エージェント型経済における「検証」の価値

AIは実行の限界コストをゼロに近づけています。しかし知能の利用コストが安価になったとき、逆に希少になるのは何でしょうか。それは「検証」です。

エージェントの処理能力はすでに人間の監視能力を凌駕しており、人間が関与する状況は物理的に不可能になりつつあります。検証されないエージェントを導入すると、システムは代理指標を最適化しながら人間の意図から静かに逸脱し、大量のAI負債を蓄積していきます。

ブロックチェーンはこの問題に対して、信頼性をアーキテクチャ自体にハードコーディングする手段を提供します。オンチェーン認証と分散型デジタルIDにより、エージェントの行動履歴は誰でも監査できる形で記録されます。ステーブルコインやスマートコントラクトによる資金移動には「誰が何をしたか?」を示す暗号化された領収書が付随し、問題発生時の責任の所在が明確になります。

5. ユーザーコントロールの維持

エージェント型の世界では、ユーザーは行動ではなく結果を指定し、システムがその実現方法を決定します。ユーザーの役割は「インタラクション」から「監視」へと移行し、デフォルトは「常時オン」になります。

この構造変化は新たなリスクをはらんでいます。曖昧な入力による意図しない行動、障害の無報告、単一承認から連鎖するマルチステップのワークフロー——これらはいずれも、ユーザーが気づかないうちに進行する恐れがあります。

暗号技術は「盲目的な信頼を最小化する」という思想を持ちます。MetaMaskのDelegation Toolkit、CoinbaseのAgentKitといったスコープ付き委任フレームワークでは、エージェントができることとできないことをスマートコントラクトレベルでユーザーが定義できます。NEAR Intentsのようなインテントベースのアーキテクチャでは、「トークンをブリッジしてステーキングする」といった望む結果を設定するだけで、その方法はシステムが最適化します(2024年Q4以降、累計150億ドル超のDEX取引を処理)。

エージェントが経済に直接参加するインターネットのインフラは既に構築されつつあります。問題は、それが最大限の透明性・説明責任・ユーザー制御を念頭に設計されるかどうかです。

A16Z CRYPTO

a16z cryptoは、暗号資産・Web3領域に特化した米大手ベンチャーキャピタル Andreessen Horowitzのクリプト部門です。

プロトコル・インフラ・アプリケーション層への投資に加え、政策提言・リサーチ・教育コンテンツを通じて業界の発展に取り組んでいます。

【注意事項】
本記事は情報提供を目的としており、投資勧誘・法的・税務上のアドバイスを構成するものではありません。暗号資産への投資はご自身の判断と責任において行ってください。本記事で言及される数値・データは各種公開情報に基づきますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。

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