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構造的売り手の主役は、DAT企業だけではない|HashHub Research

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

上場ビットコインマイナーの売り圧力分析|DATとマイナーの構造的違いを解説
※本記事は、HashHub Researchの許諾を得てCoinPostに転載しています。 執筆者:Lawrence 執筆日:2026年06月23日

目次

  1. DATの売りは局面的、マイナーの売りは恒常的
  2. AIピボットが、止まらない売りを膨らむ売りに変える
  3. 総括

Strategy社が2026年5月末、32 BTCを売却しました。約250万ドル、保有のわずか0.004%にすぎません。それでも市場がこれを象徴的に受け止めたのは、下落すれば買う側だった最大のDAT(デジタルアセットトレジャリー)企業が、ついに売り手に回るのではという懸念からです。

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しかしStrategyは数日後に1,550 BTCを買い戻し、年初来では依然として買い越しです。MetaplanetやTwenty One Capitalなど他の主要DAT企業も、2026年は買い増しか保有継続で、目立った売却は確認できません。

一方、2026年第1四半期には、上場ビットコインマイナー事業者が32,000 BTC超を売却しています。決算未提出分を除いた速報集計で、実数はこれを上回る公算です。Strategyの32 BTCの、およそ1000倍にあたります。1社の数日間と業界の四半期で母数はそろいませんが、それでも桁の差があります。

図1 ビットコイン売却規模の比較(一次開示ベース・BTC枚数):上場マイナーは2026年第1四半期に確認5社で約35,700 BTC、対するDAT企業は2026年のStrategyの32 BTC(5月末)にとどまる。

マイナーがビットコインを売ること自体は事業構造上当たり前で、驚くにあたりません。ですが、巨額の設備投資を債務で賄うAI・HPC(高性能計算)データセンターへの転換が、その当たり前の恒常売りを、取り崩しを伴う膨らむ売りに変えつつあります。構造的売り手として目を向けるべきは、DAT企業よりむしろマイナーである、というのが本稿の見立てです。

DATの売りは局面的、マイナーの売りは恒常的

DAT企業もマイナーも大量のビットコインを抱えますが、関わり方は正反対です。

DATは、資本市場でドルを調達して買い、積み上げるストック型です。だから売りは調達が詰まったときの取り崩しにとどまり、株価がプレミアムを取り戻せば再び買い増せます。

マイナーは、電力と設備を投じて毎月生産し、換金で事業を回すフロー型です。売りは恒常的な換金として組み込まれ、採掘を続けるかぎり売り手であり続けます。

この性質差が危うさを分けます。CleanSparkは2月、採掘した568 BTCのうち553 BTC、ほぼ全量を売却しました。下落局面では、運転資金のために売却比率を上げる企業も出ます。

売りの向きは年によって変わります。半減期後の2024年は主要マイナーがむしろ買い越しで、業界全体でもネット+17,593 BTCの積み増しでした。2025年も開示分は四半期数千BTC台にとどまります。

潮目が変わったのが2026年第1四半期です。売却量は32,000 BTC超と、2022年のTerra-Luna崩壊時(約21,000 BTC)を超えて過去最高に達しました。しかも採掘分の換金ではなく、保有の取り崩しが主因でした。

MARAは売却した20,880 BTCのうち15,133 BTC(約11億ドル)を社債の買い戻しに充て、Cangoは担保返済とAI転換で保有の大半(約7,000 BTC)を売りました。貯めていた主体が、取り崩しに転じたのです。

図2 上場マイナーの四半期ビットコイン売却量:2024年は買い越し、2025年も限定的だったが、2026年第1四半期に取り崩しで過去最高へ転じた。

この流れはQ2に入っても止まっていません。CleanSparkは5月も生産をほぼ全量売却し、MARAは2026年に保有分の売却へ踏み込んで、保有を年初来で3割超減らしました。

AIピボットが、止まらない売りを膨らむ売りに変える

マイナーの恒常売りに、いま新しい圧力が重なっています。AI・HPCデータセンターへの転換です。

この転換は、採掘の薄い利益からAI計算需要の太い収益へ、というマイナーを救う物語として語られてきました。ですが巨額の設備投資が要り、各社は主に債務で賄っています。

IRENは約36.9億ドルの転換社債を、Cipherは約37.3億ドルのシニア担保付社債を抱えます(いずれも2026年3月末)。先に触れたMARAの社債買い戻し売りはその先行事例で、Core Scientificも第1四半期に2,385 BTCを売っています。

設備投資は債務で前倒しされます。建設遅延やテナント未獲得で収益が出ないまま返済期日が来れば、有力な原資は手元のビットコインです。

株価を見ると、マイニング株は2026年、ビットコインを大きく上回って上昇しました。ビットコインが年初来で下落するなか、Hut 8やTeraWulf、Riotは数十%から100%超の上昇です。

図3 主要マイニング株とビットコインの年初来パフォーマンス(2026年初=100):4月以降、マイナー株はビットコインと逆方向に動いた。

この乖離は、株価が採掘事業よりAI転換を織り込んでいることを示唆します。実際、売却量が最大で、純粋な採掘事業として評価されているMARAは株価で劣後し、先頭を走るのはAI転換を進めるHut 8やTeraWulfでした。とりわけ2026年5月初は、Hut 8が投資適格テナントと約98億ドルのAIデータセンターリースを結んで株価が一日で3割近く、IRENもNvidiaと約34億ドルの契約を加えて1割弱上げるなど、AI大型契約の発表が相次ぎました。

VanEckは、縮小する採掘事業と、まだ十分なキャッシュフローを生まないAI事業の間に挟まれた企業を市場が値付けしていると評します。契約済みのAIリースを持つ企業には、稼働電力を基準にした評価の10倍超の倍率がついています。株価は、AI転換の成功を前借りしているのです。

前借りした期待が外れると、Strategyで論じたのと同じ型のループが、マイナーでも回り始めます。株価が下がれば調達コストが上がり、新株や社債での調達は難しくなります。残る原資は、保有ビットコインの売却です。恒常売りの土台がある分、DATより底が深くなりえます。

DATの逆回転が「買い手が消える」話だとすれば、マイナーの逆回転は「売り手の勢いが増す」話です。

総括

構造的売り手の議論は、DAT企業に偏りすぎています。DATの売りは資本市場が開けば和らぎますが、マイナーの売りは採掘が続くかぎり続き、そこにAIピボットという債務依存の資金需要が重なりました。市場はStrategyの32 BTCに注目しましたが、売り圧力の規模で見れば、注視すべきはその1000倍を売るマイナーの側です。

ただし、これは恒久的な売り圧ではなく、移行期の逆風と見るべきです。投資適格のテナントを確保し、容量を期日通りに稼働させてAI収益で債務をまかなえる企業は保有の取り崩しから降り、それができず返済をビットコイン売却に頼る企業へ、売り圧力は次第に集約していきます。

需要側ではトレジャリー企業の買いも続いており、投資家にとってこれは監視可能で範囲の限られたリスクであり、ビットコインマイニングセクターが次の成長軸へ移る過程と読み取ることもできます。

※免責事項:本レポートは、いかなる種類の法的または財政的な助言とみなされるものではありません。

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