はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 取引所 WebX

フィデリティ・インターナショナル担当者に聞く、日本の仮想通貨関連の規制改革に期待感

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

フィデリティ・インターナショナル(Fidelity International)は、デジタル・アセットビジネスで先行する米国フィデリティ・インベスメンツからインサイトの共有を受け、仮想通貨業界に早期から関与してきた資産運用大手だ。

同社は5月13日、欧州およびアジアの一部地域で、初の機関投資家・プロ投資家向けトークン化流動性ファンド「フィデリティUSDデジタル流動性ファンド(Fidelity USD Digital Liquidity Fund:FILQ)」の提供を開始した。

※FILQは日本居住者向けには提供されていない。

この新たな一手は、機関投資家によるデジタル資産採用が本格化する潮流を背景としている。同社のデジタル資産戦略の現在地と、日本市場への視点を探るべく、CoinPostはグローバル・デジタル・アセットビジネス推進責任者のエマ・ペセニシック(Emma Pecenicic)氏に単独取材を行った。

「もはや『投資するかどうか』ではなく、『いつ投資するか』という段階に入っています」とペセニシック氏は語る。日本の仮想通貨ETF市場の潜在性や規制改革の行方についても、同氏に見解を聞いた。

エマ・ペセニシック氏
フィデリティ・インターナショナルのデジタル・アセットビジネスの推進責任者。欧州・アジアにおける仮想通貨関連事業をリードする。

日本市場の評価

フィデリティ・インターナショナルは欧州・アジア全域でデジタルアセット事業を拡大しています。現時点で日本市場をどのように評価していますか?

日本はフィデリティ・インターナショナルにとって重要な市場です。金融庁が投資家保護を真剣に考え、規制に取り組む姿勢を高く評価しています。現時点では、日本における規制の動向を注視しているところです。日本がWeb3分野への展開を目指していることは、非常に喜ばしいことだと受け止めています。

日本市場についての見方を少し詳しく説明させてください。私どもは、日本における仮想通貨ETF市場の成長に大きな機会を見出しています。

まず、グローバルな仮想通貨市場全体の成長を前提として考えています。2030年までに仮想通貨市場は10兆ドル規模に達すると見ています。株式市場におけるETFの浸透率が市場全体の30〜40%であることを踏まえると、仮想通貨市場においても同様に、ETFが市場全体の10〜30%程度を占めるようになると考えられます。

日本のETF資産はグローバル全体の3〜5%を占めていますが、その多くは日本銀行(BOJ)が保有しています。こうした背景から、日本の仮想通貨ETF市場シェアはグローバル全体の1〜3%程度になると見込んでいます。

この試算をもとにすると、日本の仮想通貨ETF市場の潜在規模は200億〜600億ドルと算出されます。2030年までに最大600億ドル規模に達する可能性があり、日本にとって非常に大きな市場機会だと考えています。フィデリティとしても、現在この市場への参入を積極的に検討しています。

日本市場には他市場と異なる特徴があると思いますか?

日本の投資家の行動傾向について特定の見解を持っているわけではありませんが、日本の仮想通貨市場の発展が「前進と停滞」を繰り返してきたことは事実だと思います。15年前の仮想通貨黎明期を振り返ると、金融庁が未成熟な市場から個人投資家を守ることを優先したのは、もっともな判断でした。

その上で、現在日本が再び仮想通貨市場の最前線に立とうとしていることは、非常にポジティブな動きだと受け止めています。規制環境の観点から、成熟度という点では他市場に比べてやや遅れている部分もありますが、日本の投資家はテクノロジーへの理解・関心が高い傾向があり、日本市場の将来には明るい可能性があると見ています。

日本ETF解禁の影響と新商品

日本はまだ仮想通貨ETFの導入について広く議論している段階です。もし日本が仮想通貨ETFを解禁した場合、機関投資家にどのような影響をもたらすと思いますか?

仮想通貨ETFの解禁・承認がもたらす影響は、大きく二つあると考えています。

一つ目は、機関投資家だけでなく個人投資家も含め、証券口座から簡単にアクセスできる規制された運用商品を通じて、仮想通貨への投資機会が広がることです。仮想通貨、とりわけビットコイン(BTC)は、ポートフォリオにおける分散投資の効果が高く、資産配分の一部として組み入れる価値があると考えています。

個人・機関投資家の双方において、他市場と同様の需要が日本でも生まれてくるはずです。米国市場を見ると、当初は個人投資家が中心でしたが、現在は急速に機関投資家化が進んでいます。

SECへの四半期ごとの保有開示義務(13Fファイリング)を通じて仮想通貨ETFの保有状況を確認すると、ETF承認から昨年末までの間に機関投資家の保有が約200%増加していることがわかります。

もはや「投資するかどうか」ではなく、「いつ投資するか」という段階に入っています。日本においては規制が参入障壁となっていますが、長期的には日本の投資家もデジタル資産を正式な資産クラスとして認識し、ポートフォリオに組み入れるようになるでしょう。

こうした流れを踏まえ、フィデリティ投信は、5月27日に、日本の投資家が株式を通じて仮想通貨ユニバースにアクセスできる商品の第一弾「フィデリティ・クリプト・デジタル決済関連株ファンド」を設定しました。

その新商品について詳しく教えていただけますか?

日本のチーム(フィデリティ投信)がいま日本の投資家の皆さんに提案しようとしているこのファンドは、仮想通貨関連株式に投資するものです。仮想通貨市場との相関が高く、日本の投資家が仮想通貨ユニバースへのエクスポージャーを得るための、迅速に活用できる投資手段となると考えられます。

直接投資であれ間接投資であれ、仮想通貨ユニバースへのエクスポージャーはポートフォリオの分散効果をもたらします。

機関投資家化の加速

グローバル市場ではビットコインETF承認後、機関投資家の仮想通貨に対する姿勢に変化はありましたか?

この2年間で、機関投資家による採用という点で大きな変化がありました。

仮想通貨ETF自体の影響に加え、ETFを基盤として構築されたオプションや先物取引などの派生商品が充実してきたことも大きな要因です。ウォール街が「自分たちの土俵で仮想通貨を取引したい」という姿勢を明確に示すようになったことは、非常に興味深い変化です。

ヘッジファンドだけでなく、プライベートウェルス(富裕層向け資産運用)アドバイザーや事業法人も、この新しい資産クラスへの投資を始めています。私どものプライベートウェルスのクライアントからも、「どの程度の割合で仮想通貨を配分すべきか」という質問が増えています。

リスク許容度や投資期間に応じて、ビットコインの最適な配分を一緒に考えることが、私どもの役割の一つになっています。

ビットコインの位置づけとボラティリティ

数年前と比べて、機関投資家がビットコインを保有する理由はどう変化しましたか?「デジタルゴールド」という見方は今も続いていますか?

ビットコインについては、「デジタルゴールド」や「テクノロジー株をさらに進化させたもの」など、さまざまな見方があります。私どもの立場は、「それらすべてを兼ね備えている」というものです。これがビットコインの興味深いところです。

発行上限が2100万枚に設定されているため、インフレ環境下でも魅力的な資産です。ビットコインのインフレ率は0.8〜0.9%であり、この点でも非常に魅力的です。

また、いかなる政府にも管理されておらず、発行の仕組みが完全に公開・プログラム化されているという特性が、他のあらゆる資産とは異なる独自の位置づけをもたらしています。

その結果、ビットコインの価格挙動は他の資産と大きく異なります。現在の地政学的リスクが高まる環境においても、たとえば最近のイラン・米国間の制裁局面を見ると、ビットコインは他の資産とは異なる動きをしています。こうした特性が、世界の投資家のビットコインへの関心を再び高める要因となっています。

ビットコインのボラティリティについて、多くの投資家が懸念を抱いています。この点はどう考えますか?

もっともな懸念です。それを否定するつもりはありませんが、歴史的な観点から見ることが重要です。ビットコイン草創期のボラティリティは180%に達していました。しかし現在のボラティリティは、史上最低水準にあります。

これは市場の成熟化、機関投資家の参入増加、ビットコインを基盤とした商品の多様化、そしてエコシステム全体の発展によるものです。このボラティリティの低下傾向こそが、仮想通貨市場の成熟を示すものだと考えています。

投資家はこうした状況を踏まえた上で、ボラティリティに見合ったポジションサイズを設定することが重要です。

ビットコイン以外に、イーサリアムやソラナをどう位置づけていますか?

それぞれ投資家に対して異なる価値提案を持っています。

ビットコインは、ピアツーピアの決済システムとして生まれ、デジタルゴールドへと進化しました。仮想通貨市場全体の時価総額の約50%を占める、市場全体の代理指標ともなっています。

イーサリアム(ETH)は、スマートコントラクト技術とプルーフ・オブ・ステーク(PoS)を備えた最初のレイヤー1ブロックチェーンです。パブリックブロックチェーン上に資本市場を構築するという将来性への投資として位置づけられます。決済、ステーブルコイン、物流など多様なユースケースも持ちます。

ソラナ(SOL)は、イーサリアムネットワークの分散化に伴う処理速度の遅さを解消するために誕生しました。NFTブームを追い風に成長し、現在は金融市場への展開を進めており、ステーブルコインの発行やDeFiの拡大が進んでいます。ステーキング報酬が得られる点も特徴です。

ブロックチェーンには「不可能な三角形」という概念があります。分散性、セキュリティ、スケーラビリティの三つを同時に完全に実現することはできないというものです。イーサリアムは依然として最も分散性の高いネットワークです。

これらを踏まえ、フィデリティ・インベスメンツは米国でソラナETFを提供しており、ステーキング報酬も含まれています。

日本の投資家へ

最後に、日本の個人投資家へのメッセージをお聞かせください。

まず、現在進んでいる資金決済法から金融商品取引法への移行については、税制改革とともに、日本の投資家向けにより安全な仮想通貨商品を提供するために必要なステップだと考えており、金融庁がこうした変更を検討していることを私どもは歓迎しています。

デジタル資産は、グローバル金融の一部として確固たる地位を築きつつあります。日本を含む各国の規制整備の進展、インフラの強化、そして機関投資家の参入拡大がこれを後押ししています。

日本における規制改革は、世界有数の資本市場である日本が、デジタル資産・ブロックチェーンを基盤とする資本市場の次のフェーズを切り拓く上で、重要な役割を果たすと考えています。

私どものメッセージは、直接投資であれ間接投資であれ、仮想通貨関連へのエクスポージャーはポートフォリオに分散効果をもたらすということです。フィデリティ・インターナショナルとして、この急速な変革期において投資家のナビゲートを支援する旅は、まだ始まったばかりです。

CoinPost App DL