SBIグループは、暗号資産交換業を軸に、ステーブルコインや決済までを含むオンチェーン金融の社会実装を複数領域で進めている。
2026年6月には国内で暗号資産取引所ビットバンクの完全子会社化を発表したほか、7月にはシンガポールの大手暗号資産プラットフォームCoinhako社を連結子会社化した。
ステーブルコインの領域では、SBI VCトレードにおいて米ドル建てステーブルコイン「USDC」や、国内初の4号電子決済手段となる米ドル建てステーブルコイン「RLUSD」の取扱いを行っている。また円建てステーブルコインの領域でも業界をリードした取り組みを進めており、国内初となる信託型ステーブルコイン「JPYSC」を6月に発行した。
WebX2026でタイトルスポンサーとして参画したSBIホールディングス取締役の奥山真史氏と、SBI VCトレード代表取締役社長の近藤智彦氏の両名に取材を実施。
両者が語ったのは、「全てのアセットがオンチェーンで取引される」世界を見据えた、グループ横断のオンチェーン金融構想だった。
01PARTSBIのオンチェーン金融構想
オンチェーン金融の全体構想
私たちが最終的に行き着こうとしているのは、グローバルに全てのアセットがオンチェーンで取引されるようになる世界です。そこでは決済でステーブルコインのような媒体を使い、24時間365日、いつでもどこでも取引ができるようにする。これが私たちの目指すところです。
対象は銀行だけではありません。証券も、アセットマネジメントも、あらゆる金融機能を含みます。
必ずしも、全部を内製にこだわっているわけではありません。自分たちで手がけたほうが早い場合もあれば、外部に頼るにしても、ある企業を丸ごと買ってくると価格が高すぎる、という場合もあります。内製にこだわるというより、オーガニック(自社開発)とインオーガニック(買収)を組み合わせて、必要なものを逸早く揃えていく、という考え方です。どちらか一方に固執することなく、その時々で最適な選択をしていくことが大切だと考えています。まさに社是である融通四海の具現化ということです。
たとえば取引所でいえば、直近のビットバンクの子会社化もそうですし、昨年はSBI VCトレードでは、DMM Bitcoinの顧客移管も受けました。4年前にはビットポイントもグループ入りしています。内製だけにこだわっているわけではない、というのは、こうした実例からも見ていただけると思います。
シェアを大きく伸ばすうえでは、必ずしも自社の純増顧客だけで勝負する必要はない、というのが前提にあります。もちろん、もともとのSBI VCトレードのサービス改善もしっかり進めなければなりません。そのうえで非連続の成長も重ねていけば、より早く優位に立てるのではないか、と考えています。
暗号資産とステーブルコインの役割分担
私たちはこれまで、リアルワールドアセット(現実資産)のトークン化に取り組んできました。エクイティや資産運用といった分野で、日本をリードしてきました。ただ、それらをトークン化して売買できるようにしても「では決済をどうするのか」という問題が残ります。法定通貨の円でも決済はできるでしょうが、それではオンチェーンエコノミーが持つ本来の強みを引き出せていません。
オンチェーンエコノミーで決済用通貨となるのは、やはりステーブルコインだと考えています。だからこそ、私たちはステーブルコインの普及を進めています。最初にドル建てから取り扱いを開始したのは、それが最も早い手段であったからであり、日本円建てが可能になった現在は、円でも取り組んでいます。
日本円のステーブルコインは、海外発行のものと比べて日本における規制上の制約が相対的に低く、リテールだけでなくコーポレート、すなわち企業間取引を支えるインフラになり得ると見ています。まだ残された課題はありますが、それが解消されれば、大きく動き出すとみています。
02PARTステーブルコインの実装と応用
大口の発行・償還に対応するJPYSC
1回あたりの取引金額に100万円という上限があると、まとまった額を扱う場面では、できることが限られます。
たとえば貿易金融や、私たちが投資を行う際に、ステーブルコインで決済できるとよいという場面もあります。しかし、100億円規模の資金を100万円ずつしか動かせないとなると、その手続きを一体何度繰り返さなければならないのか、という話になります。大きな金額を一度に扱えなければ、経済の中でインフラとしては使いにくい。そこは明らかだと思います。
クロスボーダー送金への応用
これまでの国際送金は、銀行同士が資金を預け合う、いわゆるプレファンディング(事前に送金先へ資金を預けておく方式)によって資金を動かす仕組みでした。中継銀行をいくつも経由するので、時間もコストもかかります。ブロックチェーンを使えば、それらを削減して円滑に取引できるようになります。
私たちは以前から、SBI VCトレードやSBIレミット、SBI Ripple Asiaといったグループ各社で、Rippleの送金ソリューションを活用した国際送金に取り組んできました。ベトナムやフィリピンから日本へ働きに来ている方々が、稼いだお金を本国の家族へ送る郷里送金などを、早くから手がけています。利用者からは見えませんがその裏側ではXRPを用いて送金していました。
ただ、送金では価格の安定性が重要になります。その点、法定資産と連動し、その名の通り値動きがStableなステーブルコインは、送金の手段として適しています。
RLUSDと4号電子決済手段
現時点では、まだ大きくは変わりません。ただ、RLUSDが4号に分類されたこと自体に意味があります。発行国のスキームを、日本において信託型と同等とみなしたうえで、4号として整理しました。
信託型に類似する型として認定された場合、現状海外発行型ステーブルコインで最大の課題となっている100万円規制への突破口となります。国内の3号(信託型)に100万円規制がないのであれば、信託型に準じた外国発行の電子決済手段、つまり4号についても規制緩和を期待しています。
民間としては、そうした働きかけを続けていきたいと考えています。仮に規制が緩和されれば、先ほどの法人利用や、ドル対ドルの貿易といった場面でも使えるようになります。現状は変わりませんが、規制が変化すれば活用の幅は広がり得る、というのが現在の状況です。
ビジネス側は「緩和的であるほど良い」という発想になりがちですが、こうした規制が成り立っているのはAMLやCFT、つまりテロ資金供与などに使われるリスクがあるからで、国がしっかり規制を設けて対応していることには意味があります。
ただ、100万円規制が使い道を大きく制限しているのは事実です。USDCを1年数か月運営してきた立場から見ても、そのように感じています。その代わりに別の規制を強化するというのは十分あり得ますが、単純に金額で線を引くのは難しいのではないかと考えています。
03PARTグループ基盤と今後の競争環境
ビットバンク完全子会社化の意味
私がこの子会社化に期待している効果を一つ挙げるなら、私たちが名実ともに「国内で1番のVASP(暗号資産交換業者)グループになる」ということです。
日本での取引量が増え、プレゼンスが高まるのはもちろんですが、たとえばWebXといった大規模な国際イベントに海外から訪れた方たちが、「国内で1番の暗号資産交換業を担う企業と組みたい」と考えます。その際に、私たちが真っ先に候補に挙がる。結果として世界中の優れたアイデアが集まりやすくなりますし、グローバルなパートナーシップも組みやすくなります。
日本で事業を展開したい海外企業にとって、国内最大級の顧客基盤を持つ私たちと組む意味は大きく、「まず組みたい」と考えていただける立場になれる。証券で実現できたことが、VASPでも実現できるようになった、ということだと思います。
日本は経済規模で見れば、世界のなかでも依然として強い国であり、個人の預貯金は1,200兆円あるとも言われます。それをどう引き出すかと考えたとき、世界中の投資家やビジネスコミュニティから見れば、日本はいまだ魅力的な市場であり、羨望のまなざしで見られている面もあります。だからこそ、日本で誰と組むかとなれば、最も良い相手と組みたい。そうした効果は間違いなくあると考えています。
JPYSCの実需とレンディング
口座内限定ということは、現時点では日本円とJPYSCの交換が中心で、用途はこれから広げていく段階にあります。
ただ、JPYSCのレンディングサービスが7月16日から始まりました。口座から出金するわけではありませんが、SBI VCトレードに入金してJPYSCに交換し、レンディングに申し込んで、12週間預けておけば年率3%が付いて戻ってきます。
ここで皆さんにお伝えしたいのは、ステーブルコイン、法律上の名称でいう電子決済手段は「決済用途だけのものではない」ということです。海外送金での決済用途はもちろん期待できますが、安定した資産運用という側面も、ステーブルコインで提供できると考えています。暗号資産を購入して値上がり益を狙うだけではなく、安定的に、しかも銀行より高い年率で日本円を運用していただく。これは投資志向のない方にとっても、非常に有用なサービスになり得ます。そうした資産運用面での残高拡大を期待しています。
当面は年率3%での募集を継続する見込みです。既存の金融を上回るサービスを、ブロックチェーンとステーブルコインを用いれば提供できる。そこも大きな魅力だと考えています。
金商法移行・分離課税後の競争優位
まず、SBI VCトレードとビットバンクの現在の合算規模が約300万口座、約1兆円です。暗号資産市場は足元では下落基調ですが、半減期のサイクルで4年に一度のアノマリーのような動きもあり、市場の推移にも大きく左右されると考えています。それでも、規制面のピークが2027年後半から2028年初頭に訪れるというのは非常に前向きに捉えています。
その手前の時点で、グループとして日本において既に約300万口座を有していること自体が大きな強みです。金商法移行後は、口座をお持ちのお客さまによる暗号資産やステーブルコインを活用した資産形成がより活発になると見込まれることから、その300万口座のスケールメリットが得られると考えています。また、暗号資産はSBIグループがNo.1ということで口座を開かれるお客さまも増えるでしょう。
一方で、これまでも、SBI証券で株取引をされているお客様がグループ内に数多くいらっしゃり、そうした方が暗号資産に関心を持たれたとき、第一の選択肢としてSBI VCトレードやビットバンクを選んでいただきやすい環境があります。そして、この環境を活かし、グループ内の連携で、そうした導線を整えてきました。金商法移行後は、暗号資産を始めたいSBI証券をはじめとしたグループのお客さまによる暗号資産の新規口座開設件数も明らかに増えると見ています。
「貯蓄から投資へ」の流れのなかで、投資の一つとして暗号資産が位置づけられるようになったとき、国内で最も強い導線になれるのではないか。そこに期待しています。
04PART読者の皆様へ
法律や税制、規制が変わることで、事業者側もさまざまなサービスを提供しやすくなります。ただ、制度が整うだけでは十分ではなく、大切なのは投資環境そのものを良くしていくことだと考えています。
投資家の皆さんが国内で安心して投資できるツールやサービスを、日頃から揃えていかなければなりません。そこは常に課題として認識しています。制度の追い風を、実際に使える形で投資家の皆さんに届けることが私たちの役割だと考えています。
もともと関心を持たれているCoinPost読者の方々にとっても有益なサービスを、SBIグループからしっかり提供できるよう努めてまいります。
CoinPostを読まれている方は、暗号資産への投資に関心のある方が多いと思います。私自身、各国で当局やリーディングカンパニーの方々と話をして強く実感するのは「ブロックチェーンのエコノミーがいよいよ本流に入りつつある」ということです。
金商法への移行や税制といった規制面のインフラが整えば、これまで暗号資産を扱ってきた投資家の方々にとっても、より取引しやすい環境になっていきます。SBIグループとしては、この潮流に乗り、SBI証券やSBI VCトレード、ビットバンクといった各サービスを通じて、投資家の皆さんにもっと魅力を感じていただける市場をつくっていきたい。SBIグループの力で、その実現に取り組んでいきたいと考えています。
関連特集ページ
関連 CoinPost インタビュー特集|Web3業界の第一線を担う人物に聞く → 関連 WebXとは?アジア最大級Web3カンファレンスの全記録|2027年8月ビッグサイト → 関連 MoneyXとは?次世代金融カンファレンス|ステーブルコインと通貨の進化 → 関連 Web3イベントカレンダー2026|国内外の開催日程・スケジュール一覧 →


WebX完全ガイド
TOP
新着一覧
取引所
WebX














