リップル社は、すでに75以上の規制ライセンスを取得し、世界規模の金融インフラを整えてきた企業です。そのリップルが次に見据えるのは、不動産や債券など、実際の資産をブロックチェーン上で扱う「RWA市場」と、そこで使われるステーブルコイン「RLUSD」です。
2024年末にローンチしたRLUSDは、わずか1年足らずで流通額10億ドル(約1,500億円)を突破しました。マスターカードとの提携(2025年11月発表)や米デリバティブ市場での担保採用など、機関投資家向けサービスでの採用が進んでいます。
目次
企業情報
Ripple Labs
ティッカーなし直近資金調達:$500M(2025年11月)。主要投資家:フォートレス、シタデル、パンテラ・キャピタル等
RWAトークン化とRLUSDステーブルコイン
暗号資産(仮想通貨)XRP(エックス・アール・ピー)を支援するリップル社は、実世界の資産(RWA)をブロックチェーン上でトークン化する流れに注目し、複数のサービスを展開しています。RWAは不動産や株式、債券、MMF(マネー・マーケット・ファンド)などを含む分野で、2030年までに2兆〜4兆ドル規模に拡大する可能性があると予測される成長領域です。
このRWAトークン化を支える要素として、リップル社が2024年末にローンチしたステーブルコイン「Ripple USD(RLUSD)」も注目されています。RLUSDは2025年11月時点で流通額10億ドルを突破し、マスターカードとの提携や米デリバティブ市場での担保採用など、機関投資家向けサービスで急速に存在感を高めています。
RWAトークン化に向けたリップル社の主な取り組み
リップル社は10年以上にわたり各国の規制環境下で事業を行い、75を超えるライセンス・登録を保有(2025年11月時点)。グローバル規模で支払いサービスを提供できる体制を築いています。
1. カストディサービスの強化
2024年、リップル社は資産保管(カストディ)領域を大幅に拡充し、暗号資産だけでなくRWAの管理にも対応します。
- MetacoやStandard Custody & Trust(SCTC)を買収してエンドツーエンドのソリューションを提供
- NYDFS(ニューヨーク金融サービス局)の信託ライセンスを取得しており、厳格な規制要件を満たす
- プライムブローカーHidden Roadを12.5億米ドルで買収。1日100億ドル以上の取引を処理し、300社超の機関投資家を顧客に持つ。FINRA認可も取得済み。買収完了後、社名を「Ripple Prime(リップル・プライム)」に変更し、2025年11月に米国で機関投資家向けプライム・ブローカレッジ事業を開始
2. マネー・マーケット・ファンド(MMF)のトークン化事例
英デジタル資産取引所「Archax」と連携し、投資会社abrdnの大型ファンドをブロックチェーン上にトークン化。決済やコスト面の効率化を狙った事例として注目され、将来的には他のRWA(株式・債券など)へも応用が検討されています。
MMFとは
短期金融資産(国債、社債、CPなど)を運用対象とする投資信託で、安全性と流動性が比較的高い金融商品と位置付けられています。
3. RWA市場を見据えたRLUSDの導入
RWAトークン化を支える決済通貨として、リップル社は「Ripple USD(RLUSD)」を2024年末にリリースしました。
- 米ドルと1:1で連動し、現金や短期国債で100%裏付け
- NYDFS承認の下で発行され、XRPレジャーとイーサリアムの両方に対応
- ガーリングハウスCEOは「エンタープライズグレードのステーブルコインのゴールドスタンダード」を目指すとコメント
- 2024年12月のローンチから1年足らずで流通額10億ドル(約1,500億円)を突破。2025年だけで顧客数を2倍に拡大
RLUSDは、価格変動を抑えることでRWAのオンチェーン取引をより安全にし、企業や金融機関の受け皿通貨として機能することを狙っています。
なぜRWAにステーブルコインが必要なのか
RWAの売買には、USDと1:1で連動するステーブルコインがあるとリスク管理が容易になります。価格変動の大きい暗号資産では、不動産や債券などの高額取引においてリスクが増す一方、RLUSDのような安定資産であれば、安心してオンチェーン決済や証券化商品を扱えるというメリットがあります。
リップル社はRLUSDを通じて、RWAトークン化に必要な決済・流動性インフラを整備し、機関向けDeFiの基盤として育てる構想を持っています。
RLUSDは、規制対象の企業がトークン化された株式/債券を取引し、信頼性の高いステーブルコインを必要とするXRPレジャー上の機関向けDeFiエコシステムの基幹となる可能性があります。
XRPレジャーの特徴
リップル社が支援するパブリックチェーン「XRPレジャー」は、RWAの発行や取引に適した設計を備えます。
- 高速決済(3~5秒) / 低コスト:従来のブロックチェーンよりも迅速に決済可能で、手数料も抑えられる
- 標準搭載の分散型取引所(DEX):2012年から運用を続け、28億件以上のトランザクションをセキュリティ侵害なく処理
- 規制対応機能:DID(分散型識別子)やVC(検証可能な資格情報)のサポートなど、コンプライアンス上の要件を満たしやすい
RLUSDはXRPL上でも流通し、RWAと安定通貨を統合的に利用できる点が評価されています。
ステーブルコイン「RLUSD」とは
リップル社の子会社Standard Custody & Trust Company, LLC(SCTC)が2024年12月に発行開始し、ニューヨーク金融サービス局(NYDFS)の承認を得ています。ERC-20としても発行され、イーサリアム系DeFi(例:Curve Finance)との互換性を持ち、開発者や企業、機関投資家が利用しやすい設計です。
2024年12月のローンチから1年足らずで流通額10億ドル(約1,500億円)を突破し、企業・決済での採用が進んでいます。
| トークン基本情報 | |
|---|---|
| 総発行量 | 10億RLUSD超 |
| 時価総額 | 10億ドル超 |
| 流通チェーン | XRPレジャー(XRPL)、イーサリアム |
| 主な取引市場 | Bitstamp、Uniswap v3、Bullish |
| 公式情報 | ホワイトペーパー, Github |
RLUSDの特徴と最新動向
- 100%米ドルペグ:現金や短期国債などを裏付け資産とし、第三者による毎月の証明を実施
- イーサリアム上の互換性:DeFiプラットフォームとの連携が容易
- 機関投資家を想定:開発者や企業がアプリケーションへ簡単に統合可能。Rippleを通じた直接購入・償還も可能
- 規制準拠:NYDFS認可の信託型ステーブルコインとして、厳格な規制要件を満たす
企業・決済での採用事例が急拡大
RLUSDは金融機関や決済プラットフォームでの採用が急速に進んでおり、実需ベースの利用が拡大しています。
マスターカードとの提携(2025年11月発表)
リップル社は2025年11月、マスターカード、WebBank、Geminiとの4社提携を発表しました。この取り組みは、XRPL上のRLUSDを使用したブロックチェーン基盤の決済プロセスを可能にすることを目的としています。
- Gemini Credit CardでRLUSDを活用した法定通貨ベース決済処理を実現
- 規制対象の米国銀行がパブリック・ブロックチェーン上の規制されたステーブルコインを使用して従来のカード取引を決済する初期の事例の一つ
- マスターカードのデジタル商業化担当グローバル責任者シェリー・ヘイモンド氏は「規制されたオープンループのステーブルコイン決済を金融界に導入する」と述べた
- WebBankのジェイソン・ロイド社長兼CEOは「RLUSDのようなステーブルコインにより機関投資家向け決済をより高速かつ効率的にできる」と説明
今後数カ月間、パートナー各社は必要な規制承認を条件にXRPL上でRLUSDの初期導入を実施し、既存のマスターカードおよびWebBankの決済プロセス内での統合計画を開始します。
米デリバティブ市場での担保採用(2025年11月)
米デリバティブ取引所Bitnomialは2025年11月3日、RLUSDとXRPを証拠金資産として受け入れると発表しました。
- 米CFTC(商品先物取引委員会)認可の清算機関(DCO)としては、米国で初めてステーブルコインをマージン担保に採用する事例
- 機関投資家の運用における柔軟性と効率性が向上
- リップル社のジャック・マクドナルド氏(SVP of Stablecoins)は「RLUSDは、企業・市場・支援機関を結ぶ実需型の安定通貨として機能している」とコメント
非営利団体による人道支援での活用
リップル社のモニカ・ロング社長は、2025年11月にニューヨークで開催された「Ripple Swell 2025」において、非営利団体によるRLUSD活用事例を紹介しました。
- World Central Kitchen(WCK):災害時の緊急支援での資金移動に活用
- Water.org(マット・デイモンとゲイリー・ホワイトが設立):途上国での水資源プロジェクトへの資金提供
- ブロックチェーンを通じた金融支援の即時化・透明化が実現
モニカ・ロング社長は「Real adoption and Real impact(実需と社会的インパクト)」と強調し、RLUSDが単なる投機的資産ではなく、実社会での課題解決に貢献していることをアピールしました。
プライム・ブローカレッジでの活用
2025年11月、リップル社が運営する「Ripple Prime」は米国で機関投資家向けプライム・ブローカレッジ事業を開始しました。
- XRPやRLUSDなど複数のデジタル資産の現物取引をOTC(相対取引)で提供
- OTC取引における現物を、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)における先物取引やオプション取引などの証拠金に使用可能
- 機関投資家の運用における柔軟性と効率性が大幅に向上
今後、リップル社はRLUSDをXRPレジャーやイーサリアム以外のブロックチェーンやDeFiプロトコルにも導入する可能性があるとされ、さらなる拡張が期待されています。
XRPに投資したい方に
リップル社の注目情報
1. プライム・ブローカレッジ事業の開始
リップル社は2024年にプライムブローカーHidden Roadを12.5億米ドルで買収し、買収完了後に社名を「Ripple Prime(リップル・プライム)」に変更しました。2025年11月、米国で機関投資家向けプライム・ブローカレッジ事業を正式に開始しました。
- XRPやRLUSDなど複数の著名なデジタル資産の現物取引をOTC(相対取引)で提供
- 機関投資家に対し、シームレスにデジタル資産取引、外国為替証拠金取引(FX)、デリバティブ取引、スワップ(交換)、債券取引が行えるサービスを提供
- OTC取引における現物を、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)における先物取引やオプション取引などの証拠金に使用可能
- FINRA認可を取得済みで、1日100億ドル以上の取引を処理し、300社超の機関投資家を顧客に持つ
Ripple Primeの国際CEOであるマイケル・ヒギンズ氏は「OTCの現物サービスの開始は、デジタル資産の既存のOTCサービスやデリバティブサービスを補完するものだ。これで、米国の機関投資家の戦略やニーズに合わせた包括的なサービスを提供できるようになる」とコメントしています。
2. 米政府・規制当局との対話
リップル社はSEC(米国証券取引委員会)との係争を通じ、米国政府との規制対話を重視するようになっています。2025年1月8日には、トランプ大統領とリップル社CEOのガーリングハウス氏、CLO(最高法務責任者)のアルデロティ氏が会食を行い、新政権下での規制緩和やETF承認の可能性が注目されています。
3. 日本SBIとの協業
「SBI Ripple Asia」は2016年に設立されたジョイントベンチャーで、XRPレジャーによる国際送金や分散型金融ソリューションをアジア地域へ導入しています。
- RippleNetの提供:リアルタイム国際送金を可能にするほか、分散型金融技術を応用して効率化を図る
- アジア地域への展開:40以上の通貨・70カ国以上へ対応し、金融機関や送金事業者へのサービス提供を拡充
- 開発者や企業がアプリケーションへ簡単に統合可能。Rippleを通じた直接購入・償還も可能
SBIグループの最新動向(2025年10月決算発表)
SBIホールディングスは2025年10月31日、暗号資産事業の収益が330億円(前年同期比8.9%増)で過去最高を更新したと発表しました。北尾吉孝社長は決算説明会で「トークンエコノミー時代」への全面移行を宣言し、ステーブルコインを中核としたデジタルアセット事業の本格展開を表明しています。
ステーブルコイン戦略:ドル建て・円建ての二本柱
北尾社長が特に注力するのがステーブルコイン事業です。SBIグループは、ドル建てと円建ての2種類を軸に展開します。
- ドル建て:米Circle社のUSDCに加え、リップル社のRLUSDの取り扱いを計画。RLUSDは日本国内での認可取得後、SBI VCトレードでの取り扱いを開始予定。北尾社長は規制準拠の企業グレードステーブルコインとして、国際決済や機関投資家向けサービスでの活用を期待
- 円建て:SBI VCトレードと三井住友銀行が2024年8月に基本合意書を締結済み。Startaleグループとの連携も進行中
信託銀行による規制対応

出典:SBIホールディングス 決算資料
日本では海外発行ステーブルコインに100万円の移転上限規制が存在します。この制約を回避するため、SBIグループは新生信託銀行をステーブルコイン発行体およびカストディアン(保管機関)として活用。取引額制限を受けずに、暗号資産やRWAトークンの保管・決済サービスを提供できる体制を整えています。
XRPエコシステムへの投資

出典:SBIホールディングス 決算資料
- Ripple株式保有:SBIグループはRipple Labsの主要株主として9%を保有
- XRPトレジャリー事業:米Evernorth Holdings(機関投資家向けXRPトレジャリー事業)に2億ドル(約300億円)を出資。同社はNasdaq上場を予定
政府への規制緩和要求
北尾社長は決算説明会で、日本市場の競争力強化に向けた規制緩和を政府に要求しています:
- 暗号資産の利益に対する雑所得課税を分離課税へ移行
- 暗号資産ETFの解禁
- レバレッジ規制の緩和(現在の最大2倍から以前の最大25倍へ)
RWAトークン化への展開
SBIグループとRipple Labsは戦略的パートナーとして技術展開を継続中です。決算発表(2025年3月期)では、2025年夏の大阪・関西万博でXRPLedger上のNFT提供が計画されています。
「SBI Ripple Asia」を通じた国際送金サービスに加え、今後はRWA(不動産、債券など)のトークン化においても連携が期待されます。ステーブルコイン(RLUSDや円建て)を決済手段として活用し、既存金融とデジタル資産を融合させる構想が進んでいます。
まとめ
RWA(リアルワールドアセット)のトークン化とステーブルコイン事業を、XRPベースの決済と並ぶ中核サービスとして確立することで、リップル社はエンタープライズ向け暗号ソリューションのリーダーを目指しています。
2025年11月時点での主要な成果として、RLUSDは流通額10億ドルを突破し、マスターカードとの提携、米デリバティブ市場での担保採用、プライム・ブローカレッジ事業の開始など、機関投資家向けサービスで急速に存在感を高めています。
カストディ領域の強化、NYDFS承認のステーブルコイン発行、SBIとの協業によるアジア展開など、多角的な戦略を展開しています。
- RWA市場の潜在的成長:不動産や債券を含む資産のトークン化が拡大するほど、規制対応かつ安定通貨を求める声が高まる
- ステーブルコイン(RLUSD)の役割:RWAや機関向けDeFiの決済・担保手段として活用され、マスターカード、Bitnomial、非営利団体など多様な分野で採用が加速。リップル社の収益源として成長の可能性が高まっている
- プライム・ブローカレッジ事業:Ripple Primeの開始により、機関投資家向けの包括的なデジタル資産サービスを提供。OTC取引と伝統的金融市場の橋渡し役として機能
- 米国での規制とIPO:新政権やETF承認への期待が高まる中、SECとの法的問題が解決すればIPOの可能性も見えてくる
- 日本市場での展開:SBIグループとの協業により、RLUSDの日本国内認可申請、XRPトレジャリー事業への投資、大阪・関西万博でのNFT提供など、アジア市場での存在感を強化
今後、リップル社がRWAおよびステーブルコイン事業をどのように成長させ、国際的な金融サービスを展開していくかが大きな注目ポイントとなっています。特に、RLUSDの流通額拡大、マスターカードをはじめとする大手企業との連携深化、そして日本を含むアジア市場でのさらなる展開が期待されます。



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