bitFlyerハル氏 vs TAOTAO仮想NISHI氏 直接対決(後編)|仮想通貨は今後どうなる
3年前の仮想通貨バブルと今
2017年の仮想通貨バブル。世界的なルールが定まらないまま、通貨価値が急ピッチで高まった市場環境はバブルの崩壊を招いた。 日本の仮想通貨業界における出来高も減少し、一般投資家の関心も一時離れていたが、バブル崩壊から2年たった今、リアルな仮想通貨業界はどうなっているのか。
未だに拭えない問題があるか。改めて可能性を見出すフェーズにきているのか。 CoinPostの取材に対し、日本の仮想通貨交換所で働く2名のメンバーが、業界の現状を赤裸々に語る。
▶️対談前編
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ハル -
bitFlyer社長室所属。bitFlyerグループ全体のPRとbitFlyer Blockchainにてブロックチェーン事業の新規開発を担当する。ソフトバンクグループ社長室から2019年3月にbitFlyerへ入社。
個人Twitter:(@kasou365)
取引所Twitter:(@bitFlyer)
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仮想NISHI -
「新しいお金。新しい世界。」を掲げる取引所TAOTAOのクリプトアナリスト。自身をユーザーから取引所へ送り込まれた「刺客」と語る著名トレーダー。DECOCHARTやTASKALの企画・監修者としても、日本の業界に必要な投資関連情報の配信に携わっている。
個人Twitter:(@Nishi8maru)
取引所Twitter:(@taotao_ex)
17年の仮想通貨バブルを振り返る
仮想通貨の一トレーダーとして有用な情報発信を続け、コミュニティ内の繋がりを広げたお2人ですが、17年と今の市場環境の変化ですが、どのようにお考えですか?
その話、待ってました!!
私の場合は、17年の7月頃に仮想通貨と出会い、18年は相場変動時の録画動画をTwitter配信してました。
あれは画期的でしたね。相場の臨場感が伝わるというか。
私は「習うより慣れろ」という考えの持ち主なので、直ぐに口座開設をしてビットコイン現物を購入しました。1BTC=20万円程度の時だったと記憶しています。それが数週間で1BTC=30万円を超え、「ぬぉぉ??!!」と驚きながら、他の通貨も買ってみようという軽い気持ちで追加でアルトコインも購入したのが最初です。
ちょうどBTCがハードフォークしてBCHが誕生した時期(17年8月1日)だったので、自分のウォレットにBCHが勝手に増えていて「???」となり、後日ニュースを読んでハードフォークの意味を知りました。値動きが気になるので日々、仮想通貨のブログやニュースを目で追いかけ、気づけば大体の用語を理解できるようになっていました。
NISHIさんは、当時から投資家としてマーケットを追っていたと思いますが、どう感じましたか?
17年に交換業者のライセンス制度が整備されたり、黒田日銀総裁が仮想通貨に対して言及するなど、マーケットが拡大する予兆はありましたね。規制ができると、マーケットへお金も入りやすくなるので。
結論から話すと、2000年頃に見られたITバブルに似ていると相場を見ていました。当時、「IT」とつくものにはどのようなものでも資金が流入し、株価が高騰しましたが、その後、ITバブルは崩壊。しかし、再び大きく成長する時期が来ました。
20年後の現在を見てください、世界の株価時価総額の上位10社のうち、7社がIT分野の企業です(2020年2月時点)。
仮想通貨業界もこれに似ていて、17年のバブルはブロックチェーンに対する今後の期待をいち早く織り込みすぎたのかと思います。バブルが一旦落ち着いた今後、仮想通貨は着実に成長していくものと私は確信しています。
17年12月は、飲食店や電車の中、銭湯の中ですら、至る所で仮想通貨の話がされているのを耳にした記憶が強く残ってます。「あれがバブル真っただ中の状態なんだな・・・」とあとになって理解しました(笑)NISHIさんは17年のピークの時は仮想通貨持っていましたか?
正直に話すとショートしてました(笑)
仮想通貨の一般認知度という面では、現在も、17年当時も非常に高い水準か、と言われるとそうではない気がします。よく指摘される「仮想通貨バブル」の観点ではどう映りましたか?
17年の仮想通貨時価総額をみると、実は80兆円台まで拡大していたんですよ。これを実際の通貨などに置き換えると、日本円とポンドの間ぐらいの流通量にまで拡大したことになります。要するに、市場規模からすれば相当大きく拡大していたことがわかります。
一方で、バブルが業界にもたらした恩恵もあります。それは、”優秀な人材”の業界参入です。その恩恵もあり、数年経った今、技術も育って来ているので、実を結ぶ部分も出てくると考えています。
例えば、今はLINEを使っている時にインターネットを使っているって感覚はないですが、ITバブル当時はインターネットを使っているって感覚がありました。当時考えられないような使い方が現在は出てきてもいます。
インフラ的な技術であるからこそ、同じような流れで進むと考えていまして、技術者が集まり、意識しないでブロックチェーンを使う時代は間違いなく来ると思っています。
NISHIさんに同意で、ブロックチェーンや仮想通貨の業界で働いている皆さん、とても優秀で意欲的な方が多い印象ですね。
また、TaoTaoもそうですが、大手資本の参入でこれから業界がどのように変わっていくのか、世の中にどのような良い影響をもたらすことができるのか、選択肢を自分たちで作っていけるのが楽しみです。
ブロックチェーン市場の市況感としては、仮想通貨のバブルが起きた17年は「過度な期待」のピーク期、2020年→2021年にかけては幻滅期から啓蒙活動期へ移行する成長ステージであることをガートナー社は示しています。
ハッキングや詐欺ICO等のマイナスイメージの報道が先行した時期から2年程が経過し、新サービスや新通貨の上場を各社が発表するなど、業界再始動のうねりを感じています。
改めて考える:仮想通貨マーケットと日本市場の凄さ
私は、海外のトレーダーもたくさんフォローしていますが、日本の投資家は海外の投資家も使用しないような投資用語を日常的に使っている凄さがあります。
例えば、未決済建玉(OI)、先物乖離(コンタンゴ・バックワーデーション)、限月交代など。
また、株や為替クラスタと違って、自分の投資体験や投資スキルを他人と共有する傾向が強いということが、仮想通貨クラスタの素晴らしい特徴です。これは、投資家年齢層の違いも大きな情報流通に変化を与えています。
NISHIさんをはじめ、有益な情報を惜しげもなく共有してくれるインフルエンサーが多いのは、仮想通貨クラスタのとても素晴らしいところですね。しかも、お茶目な方が多い印象です。私も自宅で24時間チャートを録画して、値動きがあったポイントに絞って動画をTwitterで公開したのがきっかけでいろんな方と繋がり、今に至ります。
有益な情報を気軽にTwitter等で入手できる点は、日本の仮想通貨市場の素晴らしさであり、投資初心者でも参入しやすい理由の一つとだと思います。
新たな投資の選択肢
直近ではステーキングサービスなど、仮想通貨の保有インセンティブを設けるサービスが拡大しつつありますが、初心者の方でも利用しやすい投資方法はまだまだ増えていない印象です。
一方、熟練のトレーダー向けの選択肢が広がるようなサービスは拡大傾向にありますね。
NISHIさんはどうお考えですか?
そうですね。そういった文脈ですと、金利を上手に利用した投資方法がよりメジャー化したと思います。いわゆる金利収入を目的としたデルタニュートラルというポジションを組む人が増えたことです。
実際どれぐらいの利益率がでているんでしょうか?
先進国の国債と比べて、高い年間利回りが期待できたデルタニュートラルポジションもありましたね。
また、BitMEXでは新たにリップル(XRP)も取り扱いが開始されたため、金利という面では、さらに多様な投資方法が広まっている側面もあります。
基礎的な内容が知りたい方は、先日CoinPostに寄稿された「響」さんの記事をご覧ください。
私の周りでもデルタニュートラル組は、一定程度の資産を持っている人を中心に広まっているように感じます。
一方で、投資はまだちょっと怖いな、という方には、ぜひbitFlyerの「ビットコインをもらう」のサービスをご紹介したいです。ふるさと納税や旅行予約、ショッピングを行えば購入金額に応じてビットコインがポイント感覚で貰えるというサービスです。少額でも仮想通貨を保有することで世の中のニュースへのアンテナが高くなるかと思います。
ここからが面白い 仮想通貨とブロックチェーン
今年から仮想通貨は金商法下におかれることにより、取引がよりフェアになることが期待されます。
機関投資家としてトレードした経験から言えることですが、他の伝統的市場では機関投資家と個人投資家にはかなりの情報格差があり、個人投資家はどうしても不利な戦いを強いられます。
一方、仮想通貨は法定通貨と違い、政策決定が密室で行われることがなく、マイナーの稼働状況がリアルタイムで把握でき、もともと機関と個人との間で情報格差の小さい市場です。さらに金商法下で風説の流布や馴合売買が法的に禁止されることにより、個人投資家は機関投資家とより対等に戦える土俵が整ってくると考えられます。
TAOTAOはこれからも、透明性の高い情報をユーザーの皆様にお届けしたいと考えております。
仮想通貨業界の再始動感は中の人として感じているので、17年のバブル期には仮想通貨を持っていたけど休眠口座化している方や、まだ仮想通貨を保有したことがない方が興味を持ってくれるような取組みをして、業界を盛り上げていきたいですね。
また、「ブロックチェーン」というワードが、全国紙一面に掲載される回数が急激に増えてきていますし、これから更にに注目を集めるでしょう。
bitFlyer Blockchainでは、2019年に複数のPoC(概念実証)を行い、2020年は商用化を見据えたブロックチェーン事業を同時並行的に推進しています。ブロックチェーンが世の中を簡単にして、人々の生活を豊かなものにしていく姿が、実際のサービスを通して徐々に見えてくる様になると思います。
世界では、複数の国がブロックチェーンを国家戦略に掲げるような動きがあります。我々も「ブロックチェーンを国家戦略に!」というキャッチフレーズを掲げ、皆さんと共に、日本がブロックチェーン大国になるための動きを後押ししていきます。
この2年間、荒波に揉まれ続けた日本のブロックチェーン・仮想通貨業界こその強さがある。
インタビューの最後、このような見解で一致した両者。
ようやく各国の規制が整い、業界の健全な発展に道筋が立ち始める中、2人の挑戦が今後も期待される。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します