NEC:毎秒10万件超の取引を可能にするブロックチェーン技術を開発
- NECの新技術の優れたスピード・規模・安全性
- NECは大規模接続環境下で、毎秒10万件以上の記録性能を達成するブロックチェーン向けの合意形成アルゴリズムを開発しました。NECの新技術は規模、スピードの面で優れているだけでなく、情報の公開範囲を制限できたり、IoTデバイスの高速なデータ参照を可能にしています。
- NECの新技術によって新たなビジネスがブロックチェーン上で実行される
- パフォーマンスの高いNECの新技術を用いれば、ブロックチェーンの所々の制約により導入を断念してきた企業が、ブロックチェーンを通してビジネスをするようになるかもしれません。
2月15日、NECは自社のプレスリリースで、毎秒10万件以上の取引記録性能を達成する世界最速(※NEC調べ)のブロックチェーン向け合意形成アルゴリズムを開発したと公表しました。
NECおよびNEC欧州研究所は、取引記録に参加するノード数200ノード程度の大規模接続環境下で、毎秒10万件以上の記録性能を達成する世界最速のブロックチェーン向け合意形成アルゴリズムを開発しました。
これは、世界規模のクレジットカード取引を支えるシステムとして必要とされる毎秒数万件を超える性能であり、ビジネス用途でのブロックチェーンの本格的な活用を加速する技術です。
引用情報元:NEC プレスリリース
NECの新技術は何がすごいのか?
NECの新技術は以下の3つの点で優れています。
記録速度と参加ノード数
一般に、ブロックチェーンの記録速度と参加ノード数にはトレードオフの関係があります。
ビットコインのブロックチェーンには誰もが自由に参加できますが、毎秒約7件の記録速度が限界であるとされています。
記録速度が速いビジネス向けのブロックチェーンであっても、参加ノードが数十件増加すると、記録速度は激しく低下してしまいます。
一方、NECの新技術では、200ノード程度の大規模接続環境下で、毎秒10万件以上の記録速度が達成可能です。
VISAカードがトランザクション数でさえ、毎秒4000~6000ほどであることを考慮すると、この技術はビジネスにも十分適用可能であることがわかるでしょう。
安全性
多くのブロックチェーンは、全ての参加者がブロックチェーン上の全ての取引記録を見ることができるため、個人情報や企業秘密を記録することができません。
NECの新技術では、取引情報の公開範囲を限定し、関係者外にデータを公表しない仕組みが導入されています。
IoT
IoTデバイスがブロックチェーンのデータを参照する際、個々の参加ノードが故障などにより、実際の記録とは異なる情報を回答する場合があります。
これを防ぐために、IoTデバイスは複数のノードから回答を集め、情報の整合性を取っています。
そのため、処理能力が低いIoTデバイスにとって、大きな負担になります。
NECの新技術は、この問題点にも対処し、IoTデバイスからの高速参照を可能にしています。
新技術をどのようにして実現するのか?
NECの新技術は、優れたパフォーマンスを実現するために以下のような仕組みを作っています。
記録速度と参加ノード数
トラステッドハードウェア(TEE)のセキュリティ機能を最大限に活用して、参加ノードが合意形成するために必要な通信量と通信回数を削減しています。
TEEは、メモリ空間の一部を特定のプログラムからしか読み書きできない領域として保護する機能です。
たとえ管理者権限があってもその領域は読み書きできないため、サーバやPCが攻撃者に乗っ取られても、その領域内で行われる処理は正しいことが保証されます。
安全性
取引情報を全参加ノードに一律に公開するのではなく、取引情報の公開範囲を限定できる仕組みを開発しました。
これにより、特定グループ内の取引情報はグループに属するノードにのみ公開するという制御が可能になります。
IoT
IoTデバイスがブロックチェーン上のデータを参照の際にも、各参加ノードのTEEを活用して、高速な検証を可能にしました。
新技術はどのように利用されるか?
NECの新技術では、大規模接続環境下で超高速の記録が可能であり、参加ノード数や処理速度の制約から、ブロックチェーン導入を断念してきたケースにも適用可能かもしれません。
NECは金融機関との実証実験を進めるとともに、金融以外への社会インフラで求められることを実現するようなブロックチェーン開発にも取り組んでいます。
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します