イーサリアム、年初来高値更新の「背景」は
イーサリアム年初来高値更新
CMC時価総額2位に位置する仮想通貨イーサリアム(ETH)マーケットの躍進が続いている。週明け27日も堅調な流れを引継ぎ、3万4千円台まで高騰した。
22日に2万5千円で取引されていたETHは、わずか5日間で約30%高の3万4千円まで市場価格が続伸、年初来高値を更新している(bitFlyer)。
金融マーケットが軒並み沈んだ3月のコロナショック以降、仮想通貨市場の話題は、半減期を控えてゴールドに匹敵する急回復を見せたビットコイン(BTC)に話題が集中していた。しかし現在、コロナショック時の最安値比較では、イーサリアムのパフォーマンスはビットコインを上回っている。
時価総額の差からビットコインと単純なパフォーマンス比較を行うことは難しいが、DeFi銘柄などの投機性も強い価格変動を中心としたイーサリアムエコシステムに、7月の仮想通貨市場は活気付いている。
週末にかけて勢いが止まらないイーサリアムマーケットの高騰背景はなにか? 現在の状況を整理した。
DeFi銘柄から資金流入
CompoundのガバナンストークンCOMPや、BalancerのBALなどを中心に、時価総額上位の銘柄を遥かに凌ぐパフォーマンスを示したDeFi(分散型金融)マーケット。
最も取引が盛んに行われた7月初時点で、3ヶ月前から2倍を超えるパフォーマンスを示す銘柄が相次ぎ、2017年のアルトバブルを彷彿とさせるセクター買い(DeFi分野に特化した資金流入)が観測された。
注目を集めるこれらの銘柄は、イーサリアム上で発行されたトークンプロジェクトも多く、時価総額上位の銘柄では、Chainlink(LINK)やCrypto.com(CRO)、Kyber Network(KNC)、Compound(COMP)などが挙げられる。
市場規模が急速に拡大した関連銘柄の時価総額を受け、イーサリアムネットワークで発行される仮想通貨の時価総額はETHを含め600億ドルに。市場占有率(ドミナンス)60%を占めるビットコインの3分の1の時価総額規模まで、イーサリアムエコシステムが急拡大した。
利確先に
市況に変化が見られたのは、7月に入ってからだ。DeFi銘柄のボラティリティが急激に高まり投機対象として意識されるなか、過熱感を背景に「利食い」が先行し始めた。
COMPやKNC、ZRX、BNTなど11銘柄のDeFiトークンで組成したFTXの「DeFiトークン指数」を対イーサリアムチャートで比較すると、DeFi銘柄が天井をつけたタイミングからイーサリアムが買われており、逆相関を示している。
特に、同ブロックチェーン上で取引が可能なイーサリアム(ETH)とERC-20トークン(ERC-20規格に準拠し、イーサリアムネットワークで発行される仮想通貨)は、取引所の取引ペアも潤沢で、分散型取引所でも容易に取引ができる。絶好の利確からの「再投資先」として見られた可能性がある。
イーサリアムエコシステムの需要
また、DeFiが投機マーケットに限らず拡大していることを示す一つのデータに、イーサリアム上で発行するWBTC(Wrapped Bitcoin)の存在もある。
WBTCは、ビットコインのERC20準拠版で、BTCを担保にして同等価値をイーサリアムブロックチェーン上で反映する仕組みを持つ。DeFi領域の金融サービスで利用できる特性上、WBTCの発行量の増加は、DeFi分野で広範囲な利用の拡大も示唆するデータになる。
データ提供企業のCoinMarketCapによると、2019年1月のローンチ以降増加傾向にあるWBTCの時価総額は現在約15億ドルに増加。6月から3倍強を記録している。
イーサリアム2.0を目前に
直近でイーサリアムが買われた背景には、大型アップデート「ETH2.0」の存在も欠かせない。
ビットコイン(BTC)同様のPoWから、「PoS」アルゴリズムへの移行の第一段階であるフェーズ0ローンチは、来年に持ち越される可能性も示唆されていたが、イーサリアム開発者らも年内のローンチの重要性を強調し、メインネット稼働に向けた開発が進められている。
7月23日には、イーサリアム財団がETH2.0メインネット稼働のための最終段階にあたる、パブリック・テストネットのローンチ日を8月4日と正式発表。市場の思惑を加速させたことで高騰につながった。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します