多くのイーサリアム投資家がASICに対抗するハードフォークに賛同
- 多くのイーサリアムユーザーはASICに対抗するハードフォークに賛成
- イーサリアムの創設者の一人であるVlad Zamfirが新たに行った投票によれば、6903の投票者の57%がイーサリアム対応ASICを利用したマイナーを排斥するためのハードフォークへの賛同を示しています。
- Moneroも同様にASICに対抗
- マイニング機器の生産、販売が一社独占状態であることは非常に危険です。一部の利益団体からの影響を受けてしまうだけでなく例えば企業や国家といった現実世界の中央集権的な組織、機関の管理下に仮想通貨が置かれてしまう可能性もあります。
イーサリアムがASICマイニングを阻む?
イーサリアムの創設者の一人であるVlad Zamfirが新たに行った投票によれば、イーサリアムユーザーはイーサリアムがASIC機器を利用したマイナーたちを排斥することに賛同するとみられています。
イーサリアムの創設者の一人であるVlad Zamfirがツイッター上で、イーサリアムのマイニングアルゴリズムでありASIC耐性を持つEthashに対してASICを利用するマイナーたちが起こすハードフォークに賛同するかどうかという投票形式での質問を公開しました。
6903の投票者の57%がイーサリアム対応ASICを利用したマイナーを排斥するためのハードフォークへの賛同を示しています。
一方で投票者13%はこのハードフォークに賛同しないという意見を示しました。
また10%はこの問題は簡単に解決できないものであると答え、残りの20%は、ただ結果が見たいと答えました。
こうした結果となった投票に関してZamfir氏は、明確に投票は何らかの計画、意図があって行ったわけではなく、ユーザーコミュニティが今回予定しているハードフォークに対してどのように考えているかどのような思いを抱いているかを知りたい、その好奇心で行ったことだと答えています。
ASICsとは
そもそもASICSとは何でしょうか。
ASICsはASICチップ(Application Specific Integrated Circuitの頭文字をとったもので、「特定の目的のために作られた集積回路」の意)を使用した仮想通貨マイニング用機器の総称です。
ASICチップは現時点で仮想通貨のマイニングにとって最も効果的でかつ最も利益をもたらすものだといわれています。
ビットコインなど多くの仮想通貨でも使用されているのです。
その一方で、多用途に使え、そしてそれゆえに多用なアプリケーションに適応可能な既存のマイニング用機器に使われているチップであるCPUやGPUとは異なり、ASICは基本的には単一のアプリケーションのみでしか使用できず、また仮想通貨マイニングのアルゴリズムのわずかなアップデートにすら適応することができないという欠点を持っています。
それ以外にも、マイニングを効率よく行うには向いているとはいえ、仕組みの開発には多額の資金が必要であり、このチップを使用することは一部の資金力があるマイナーにマイニング権が集中してしまう恐れがあるとされています。
そのため、今回のイーサリアムのようにASIC機器をマイニング利用することができないASIC耐性を備えた仮想通貨が生まれる、あるいはASIC耐性を付けるためのアップデートがこれまで行われてきました。
また、一部の利権を持つマイナーとその行為に反対するマイナーやユーザー側での闘争が行われてきました。
ビットコインとビットコインキャッシュのハードフォークなどがその代表的な例といえるでしょう。
Bitmainがイーサリアムに対応したASICマシーンを開発
ウォールストリートの株式調査機関であるSusguehannが最近行ったアジアでの調査の中で、中国に拠点を置くマイニング用ハードウェア生産メーカーであるbitmainが、すでにイーサリアムに対応したASICマシーンを開発し、そして第二期四半期中にはそれを販売する準備を行っていたことを明らかにしました。
今日まで、EthacashはGPUチップで運用することができASIC耐性があるマイニングアルゴリズムとして、イーサリアム以外にもイーサリアムクラシックやその他仮想通貨で利用されています。
こうしたイーサリアムの背景がありながらも、ビットマインはASICのマーケットで多大な支配力を持っているため、彼らの新たなPoWアルゴリズムに適応したマイニング関連機器の開発はいつも一部マイナーや利権を共有する団体への中央集権化に関する議論を呼び起こしています。
ただ、こうした中でビットメインのEthashASIC対応機器の開発は奇妙です。
最も著名である、ASIC耐性を有するアルゴリズムEthashを利用した仮想通貨イーサリアムが、アルゴリズム方式をPoS方式に移行する計画を立てているからです。
なぜなら、そもそもASICはPoW方式のマイニングに対応しており、Ethash事態もPoW方式をもとにしたものでした。
それに対してPoSは全く異なるマイニング方式で、もちろんASICも現時点では対応していません。
つまり、イーサリアムはより強固なASIC対策をとろうとしていると言えるのです。
こうした奇妙なbitmain社の動きに対して、いくつかの調査者はビットメイン社はイーサリアムが行う、PoWを廃止、あるいはPoSに移行するという施策は最終的にイーサリアムクラシックのようなハードフォークにつながるということを確信していることを意味している、と考えました。
ハードフォークになればソフトフォークになった場合と違い、分裂してできた通貨が残るため、PoWに似た方式を持つ通貨が残り、そこにASIC機器の販路が出来上がるのです。
Moneroも同様にASICに対抗
今回のイーサリアムのASIC耐性を維持するために行うハードフォークはこれ以外にも先例がいます。それが仮想通貨Moneroです。
匿名性に注力している仮想通貨のMoneroは以前からASICには反対の立場をとっていました。
そして2018年2月の公式発表で、ASICを使ったマイナーに互換性のあるXMRの発展を妨げるために、6か月ごとにCryptonightPoWのアルゴリズムを変更することを発表していました。
にもかかわらずBitmainは最近Moneroのアルゴリズム方式であるCryptonightに対応した ASIC搭載マシーン「アントマイナーX3」の開発を発表しました。
このことに対して、MoneroはMoneroとASICを使用するマイナーとの間にある互換性をなくす緊急の仕様追加を今後行われるアップデートで行うことを発表し、このビットメインの取り組みに抵抗を示しています。
こうしたMoneroとBitmain社の争いは一部メディアでは「戦争」と表現されており、大きな注目を集めているのです。
マイニング業界はBitmainがほぼ独占
ASIC自体はマイニングに限って言えば理想的なチップといえます。
その一方で繰り返しご説明してきたように、開発、実装には多大な費用が掛かってしまうものです。
そのため、多様な母体を持つユーザーのマイニング参入を妨げ、一部のASICマイナーにマイニングが集中、大きな利権構造を生んでしまいます。
こうした問題が表面化したあるいは未然に防ぐために行われるのが、ビットコインとビットコインキャッシュのハードフォークや今回のイーサリアム、moneroのハードフォークです。
ASICを搭載したマイニング機器の生産販売は現時点で事実上Bimain社の独占状態になっています。
その勢いはすさまじく、チップの生産に必要な素材であるシリコンウエハーの発注量は、既存の大手GPUメーカーであるNvidiaすらしのぐと言われています。
マイニング機器の生産、販売が一社独占状態であることは非常に危険です。
一部の利益団体からの影響を受けてしまうだけでなく例えば企業や国家といった現実世界の中央集権的な組織、機関の管理下に仮想通貨が置かれてしまう可能性もあるのです。
単純にこれは通貨の価値だけでなく、今後発展が予想されている基幹技術ブロックチェーン技術によってもたらされる新たな仕組みが、容易に一部の思惑によって操作されてしまう可能性を生んでいます。
仮想通貨やブロックチェーンの非中央集権的であること透明性が高く誰にでも平等であることといった、本質的な機能、あるいは目標が失われてしまうことも考えられるのです。
イーサリアムやMoneroなど仮想通貨とASIC事業者の交渉や戦いは今後も注視してく必要があるでしょう。
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します