米CNBC出演の専門家、NFT投資に関する「仮想通貨の税金問題」に注意を促す
NFTトークン購入時に課せられる税金
NFT(非代替性トークン)の市場規模が急拡大する中、米メディアCNBCの番組で、NFT購入に係る税金について注意喚起が行われた。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産(仮想通貨)を用いてNFTを購入した場合は、課税対象となる場合が多いという。
NFTは、分割不可能で唯一無二の価値を持つトークンで、美術品やゲーム内アイテムなど収集品の形で取引されている。
NonFungible.comによると、NFTの売り上げはここ数週間で急増し、2021年に入ってからすでに5億ドル(約544億円)を超えた。この中には、著名なオークションハウスであるクリスティーズにて先週約75億円で落札されたデジタルアート「Everydays:The First 5,000 Days」も含まれる。
その他にも、米プロバスケットボールNBAチームの収集カードや、ストリートダンスのパフォーマンス、ツイッター社CEO Jack Dorsey氏による史上初のツイートのトークン化まで、NFTを使った様々なプロジェクトがある。
仮想通貨で購入した場合のキャピタルゲイン
こうした中、仮想通貨の税務コンプライアンスに関するサービス等を提供する企業CoinTracker社の税務戦略責任者Shehan Chandrasekera氏は、NFT取引の際は税金のことも念頭に置くべきだと注意を促している。
最近の米内国歳入庁(IRS)のガイダンスでは 「資産の処分」に関する原則の一部として「資本資産として保有する仮想通貨を、商品や別の仮想通貨を含む、他の資産と交換する」ことは、キャピタルゲインまたはキャピタルロスが生じるイベントとみなされるという。
たとえば、数年前にイーサリアムを100ドル相当で購入し、約1,700ドル相当まで価値が上昇していた場合だ。このイーサリアムを使用して1,700ドルのNFTを購入した場合、差し引き1,600ドルがキャピタルゲインと認識され課税されることになる。
「したがって、キャピタルゲインにかかる税率を20%と仮定すると、320ドルの税金を支払う義務が発生する。ニューヨークやカリフォルニアのような多くの州はキャピタルゲインを所得として課税するので、州税も支払うことになるかもしれない」とChandrasekera氏は指摘した。
NFTを購入した者が、後になってそのNFTを、より高い価格で二次的に販売した場合にも、税金は課されることになる。この場合、NFTは収集品と見なされるため該当する税率は米国で28%と高くなるという。
まだこうした税金のことを意識していない人々は、多額の課税に驚く可能性もありそうだ。
現在は、NFTプラットフォームの方でも、購入者の得ることになるキャピタルゲインについては把握できていないのが現状だという。
Flow by Dapper LabsやOpenSeaなどNFTを取引する大規模なプラットフォームが知られている。こうしたプラットフォームは、購入に使用された仮想通貨が最初いくらで取得されたのかを把握しないため、購入者の利益については報告できない状況だ。
米国外の投資家は別ルール
こうした米国の規則は海外投資家に適用されるものではない。たとえば、先述のアート作品「Everydays:The First 5,000 Days」を約75億円で買い上げた投資家は、シンガポールを拠点としていた。
Chandrasekera氏によると、シンガポールにはこの場合に該当するキャピタルゲイン税がないため、作品購入するために使用したイーサリアムに税金を支払う必要はなかったという。もし仮に購入者が米国市民だったとしたら、1,000万ドル以上の税金が発生していた可能性もある。
尚、日本におけるNFT課税については、2019年2月に一般社団法人日本仮想通貨税務協会(JCTA)が見解を示した。
基本的に、売買や交換により所得が生じた場合は課税される。ただNFTの時価について把握が困難な場合には「課税上弊害がない限り円貨や他の仮想通貨との交換時に取引を認識することも容認されるものと思われる」としている。
この見解には「明確化されていない論点で今後取扱いが変わる可能性がある」との但し書きもされており、動向には注意が必要だ。
関連:NFT(非代替性トークン)の課税ルール、米国と日本の現状は
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します