へデラハッシュグラフとIBMが提携強化、プライベート&パブリックチェーンの相互運用性向上へ
Tech Previewの発表
分散型台帳技術開発プロジェクト、へデラ・ハッシュグラフ(Hedera Hashgraph、以下ヘデラ)が、大手IT企業IBMと本格的に提携を開始。「Tech Preview」という名の下、プライベートチェーンおよびパブリックチェーン間での相互運用性向上を目指していくという。
IBMは既に、19年にヘデラのガバナンスを担当する組織「運営審議会(Governing Council)」に加盟しており、Tech Previewの発表は、両組織間での連携をさらに強化するものになるという。
ヘデラおよびIBMは、今回の提携強化に伴い、相互運用性に関するウェビナーを今月30日に共同開催する予定だ。
相互運用性強化を目指した提携
今回Tech Previewが発表された背景には、CBDC(中央銀行デジタル通貨)分野や既存の金融機関において、ブロックチェーン技術への需要が増加していることが関係している。プライベートチェーンの限定的かつ許可制のネットワーク、およびパブリックチェーンの透明性という二つの異なる利点が特に求められるこのような分野においては、相互運用可能なネットワークへのニーズが拡大しているという。
このようなニーズのに応えるためにTech Previewでは、ハイパーレジャー・ファブリック(Hyperledger Fabric)を土台にしたIBMのプライベートチェーンプラットフォームに、非中央集権型のヘデラ・コンセンサスサービス(HCS; Hedera Consensus Service)を統合することによりもたらされる利点を、エンタープライズ向けユースケースに適用することを目指している。
ハイパーレジャー・ファブリックとは、Linux財団が開発を行いIBMも支援しているオープンソースのプライベートチェーン・フレームワークだ。IBMのブロックチェーンプラットフォームは、このハイパーレジャー・ファブリックを基盤に構築されている。
またHCSとは、ヘデラの分散型台帳技術(DLT)によって形成される非中央集権的な「信頼(コンセンサス)」を、外部のアプリケーションまたはプライベートチェーンへ持ち込むことを可能にするサービスであり、HCSの統合先では、分散型台帳の特性を利用し、改ざん不可能で検証可能なメッセージの記録が可能になる。
ステーブルコイン・NFTに注目するヘデラ
ヘデラはIBMとの提携以前から既に、とりわけCBDCおよびステーブルコイン領域における相互運用性への需要拡大に注目している。20年にはプライベートチェーンおよびヘデラの分散型技術HCSを同時に活用したステーブルコインのフレームワークを構築。イーサリアム2.0等著名プロジェクトの監査を担当していることで知られるQuantstampにより、監査が行われた。
プライベートチェーンおよびHCSを用いた技術は、現在注目を集めているNFT分野での活用も見込まれており、実物資産、金融商品および保険証券など、プライバシーを必要とする資産をNFT化する際の利用が想定されている。
また21年に入ってからは、ヘデラの分散型ガバナンスを担当する「運営審議会(Governing Council)」に、CBDC、ステーブルコインやNFTなど、資産のトークン化に関連する企業および組織が増加。この分野においてヘデラの存在感が増していることが推察できる。
既存金融機関向けユースケース
プライベートおよびパブリックチェーン間での相互運用性が向上することにより、CBDCやステーブルコイン、NFTの実用化に取り組む既存金融機関は特に、その恩恵を受けるだろうと考えられている。相互運用性向上に期待している組織の一つが、南アフリカを拠点とするアフリカ最大級の銀行、スタンダード銀行だ。
スタンダード銀行は、南アフリカの銀行全てがデジタル通貨経済圏に参加できるようにするために、プライベートおよびパブリック両チェーンモデルを活用した、ハイブリッドなソリューションを求めている。ハイブリッドモデルにより具体的には、規制遵守のために必要な証拠を規制当局に提出する際に、ユーザーのプライバシーを保護した形で、改ざん不可能なデータを用いることができるという。
これに加えスタンダード銀行は、このようなハイブリッド構造においては、ステーブルコイン発行およびCBDC利用が促進され、銀行および顧客両者にとって、金融サービス効率が向上するだろうと期待している。
スタンダード銀行グループのDLTおよびブロックチェーン代表、Ian Putter氏は、相互運用性の可能性について以下のように述べた。
スタンダード銀行では現在、プライベート兼許可型のIBMブロックチェーンプラットフォーム上に、4つのブロックチェーンを構築および運営している。パブリックおよびプライベートのハイブリッドにより、監査可能性、ネットワークの拡大、および多くの人の参加などのユースケースが可能になるだろう。
スタンダード銀行は21年2月に、ヘデラの運営審議会に加盟。CBDCおよびステーブルコイン関連の開発に注力している。
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