イーサリアムのガス代高騰改善に貢献、研究開発組織Flashbotsの実態
ガス代高騰の解決策となるか
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)のガス代(取引手数料)問題の改善に明るい兆しが見え始めた。
2020年以降の分散型金融(DeFi)市場急拡大とともに、イーサリアムネットワークでは、トランザクション処理の遅延やガス代高騰が大きな問題となってきた。dAppsアプリやNFT利用者が、高額の手数料でまともにサービスを使えなくなるからだ。
イーサリアムガス代の高騰が長引いたことで、バイナンス・スマートチェーンを利用した分散型取引所PancakeSwapなど競合サービスの台頭をもたらした。しかし、ガス代削減の効果をもたらす「Flashbots」のツール採用が進んでいることで、状況は改善しつつある。
仮想通貨市場大幅下落の影響もあり、4月20日以降、イーサリアムの取引コストは低下傾向にある。
EtGas Stationのデータによると、標準ガス価格は41Gwei(1 ether = 1,000,000,000 gwei)となっている。EthHubの共同設立者であるAnthony Sassano氏は、手数料が安くなった大きな要因として、ガスリミットの上限引き上げとともに、Flashbotsの採用を挙げている。
Flashbotsは、イーサリアムをはじめとするスマートコントラクトを実装したエコシステム(経済圏)において、より公正で透明性のあるマイナー報酬の実現を目指す研究開発組織だ。MEV(Miner Extractable Value=マイナーが抽出可能な価値)と呼ばれるアービトラージ戦略に係る、MEV収益へのアクセスの民主化、MEV活動の透明性の向上、そしてMEV収益の再分配の3点の目標を掲げている。
ガス代高騰の要因
イーサリアムネットワークにおけるガス価格の決定には、これまでオークション形式で、より手数料の高いトランザクションを優先させる形式が用いられてきた。このため、DeFiやNFT関連トレードで一刻も早くトランザクション承認されたい投機家の存在は、ガス代高騰に影響を及ぼしてきた。
PGA(Priority Gas Auction)ボットを利用したシステムでは、イーサリアムのメモリープール(memory poo)で承認を待つ数々のトランザクションから、多くの利益を得られるような取引を見つけだし、さらに収益を上げるような技術も確認されている。
例えば、あるボットがプール間のアービトラージを検知すると、同じトランザクションを作成し、メモリープールに送信する。しかし、他のボットが同じトランザクションを使用していることがわかると、自身のトランザクションが最初に処理されるようガス価格を上げ始め、最終的にはガス代の高騰につながるという。
このようなボットのMEV活動から抽出された利益は、今年1月だけで最低でも4万7600ETH(約125億円)にのぼるとFlashbotsは分析している。
マイニングプールによるFlashbotsの採用
Flashbotsは、これまでに2つのプロジェクトをリリースしている。
- Flashbots Alpha:マイナーとサーチャー間の概念実証の通信チャネル。透明で効率的なMEV抽出が目標
- MEV-Explore:MEV活動の公共ダッシュボード及びライブ・トランザクション・エクスプローラー
Flashbotsはマイナー用のイーサリアムノードを作成して、メモリープールを監視するとともに、Flashbotsが運営するサーバーにも接続する。このMEVリレーが、マイナーとトランザクションを含めようとするボットを直接接続する一種のパラレルチャンネルの役割を果たし、メモリープールの入札競争や、ブロックチェーンに過重をかける失敗したトランザクション数を削減するため、全般的にユーザーが負担するガスコストの軽減するに繋がるという仕組みだという。
Flashbotsが発表したレポートによると、4月13日時点で、イーサリアムネットワークのハッシュレートの58%以上を占める12のマイニングプールがFlashbotsのツールを利用して採掘しているという。その中には、Spark PoolやF2Poolなどの上位を占めるマイニングプールが含まれている。
イーサリアムの改善案:EIP1559
イーサリアムのコア開発者は、ガスシステムについての改善案「EIP1559」の実装を決定しており、その「ロンドン」アップグレードは7月頃に予定されている。
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オークション形式ではなく、ネットワーク全体で標準化された手数料がアルゴリズムで設定されることになる。また、手数料の一部はバーン(焼却)されるためマイナー報酬が減少することになるが、イーサリアムの供給量が減ることで、希少価値と価格上昇に寄与することになると考えられている。
イーサリアム投資家のAftab Hossain氏は、EIP1559の実装だけで、手数料を劇的に下がるとは考えていないが、トランザクションの入札競争が減少することで、結果的に手数料の削減に繋がるだろうと述べている。Flashbotsの機能も、同じく入札競争を減らすことで手数料を抑えることに貢献していると付け加えた。
イーサリアムネットワークの足かせとなってきたガス代の高騰問題が解消は、エコシステムの発展にも大きく寄与することになると期待されている。
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