仮想通貨交換業等に関する研究会(第四回)重要論点まとめ

仮想通貨交換業等に関する研究会(第四回)重要論点まとめ
今回はMITの伊藤教授や同元米商品先物取引委員会(CFTC)委員長を務めたこともあるゲーリー教授、ripple社のサガール氏などによる仮想通貨市場と規制に関する現状への説明があった他、そのほか討議でも51%攻撃を行なった者に対しどう規制をかければいいのかなど、興味深い議論がなされました。
目次
  1. MIT伊藤穰一教授・MITブロックチェーン研究者兼城跡講師ゲーリー・ゲンスラー教授による仮想通貨のマーケットと規制についての現状説明
  2. ripple社サガール・サルバイ氏による同社のビジョン、プロダクト、仮想通貨に対する展望についての説明
  3. 研究会メンバーによる討議

仮想通貨交換業に関する課題と、仮想通貨間取引への規制議論

(※今回、同時通訳であった為、伊藤教授とゲイリー教授のどちらが話したか詳細不明な為、あくまで両名のうちどちらかが喋ったものだと認識いただきたく思います。)

出典:仮想通貨交換業等に関する研究会」(第4回)説明資料

まず初めに、マサチューセッツ工科大学伊藤穰一教授と、同じくマサチューセッツ工科大学ブロックチェーン研究者兼城跡講師であり、元米商品先物取引委員会(CFTC)委員長ゲーリー・ゲンスラー教授の二名により、仮想通貨のマーケットや規制の現状について、金融庁の研究会メンバーに対して説明や意見が行われました。

主に注目すべきなのは仮想通貨やその交換業について、

「ほとんどの取引はブロックチェーン参加者としてのノードではなく、取引所内で処理されている」

「仮想通貨交換業者がカストディアン(資産管理を行う機関)を兼ねている事は問題であり、この部分についてはカストディアンとしての規制を適用すべきではないか」

「仮想通貨と仮想通貨の取引、交換はトラッキングが難しい上に、課税報告すべきであると考えるが課題は多い。また、仮想通貨と仮想通貨の取引の場合、P2Pなどの相対取引では対策が更に難しい」

といった指摘が行われました。

また、研究会の岩下メンバーより以下のような質問されました。

「(上記で話があったように)現在の取引所がカストディアン(資産管理を行う機関)を兼ねているのが問題

交換業者自らがカストディアンを兼ねていて、更にポジションを持っていて、(交換所内の取引を)オフチェーンの中で維持しているのが実態。

これをどのように改めるべきか、全てをオフチェーンに書くか。

別途信頼できるカストディアンにカストディティを委託すべきなのか」

この質問に対し、伊藤氏またはゲイリー氏は以下のように回答しました。

「仮想通貨取引所を通じて仮想通貨投資をしている人の多くは、直接ブロックチェーンを使用したいと考えてはいないのではないでしょうか。

今後の改善策としては、カストディティの部分と取引所の機能を分けるべきであり、カストディティの部分にカストディアンとしての規制を当てはめていくべきではないでしょうか」

また同じく研究会の楠メンバーから「規制をクリプトファイナンスにどう適用するのか、仮想通貨と仮想通貨の交換を規制していくには限界がある。禁止をする事によって止める事はできない。」との旨の意見が投げかけられると、

「どのような規制団体や当局であれ、重要なのは仮想通貨と仮想通貨の取引を、マネロン対策、脱税対策、あるいは安全保障上の観点から、フィアット対フィアット、フィアット対仮想通貨と同様の枠組みで規制すべきだ。

実際に何かを買ったり売ったりしている状況があるため、報告義務が発生するのではないか。

現状、登録業者にライセンスを付与するような枠組みがあるが、登録業者に対しては情報提供が求められるわけであり、このセクターにもフィアットとフィアットのような課税と規制が必要ではないでしょうか」

といった回答はありましたが、楠メンバーの「規制に限界はある」といった意見には完全に回答されていないような印象は受けました。

ripple社による説明

出典:仮想通貨交換業等に関する研究会」(第4回)説明資料

次に、ripple社アジア太平洋及び中東地域部門規制担当責任者であるサガール・サルバイ氏による同社のビジョン、プロダクト、仮想通貨に対する展望についての説明が行われました。

その中で、XRPが証券ではないとする理由について、

  • XRPを保有する事によってripple社に対する所有権は発生しない
  • XRPレジャーはripple社から独立しており、オープンソースな枠組み
  • ripple社はVCから資金調達したのであり、ICOをしたわけではない
  • XRPは2,3人の開発者が開発し、その後ripple社に譲渡したものだ

を挙げました(あくまでripple社の見解)。

XRP開発者がripple社にXRPを譲渡した理由について、サガール氏は以下のように述べました。

「ripple社に譲渡すれば、ripple社がそれを使い金融に関する問題解決に取り組んでくれると開発者が考えた為であり、現にripple社は規制の枠組みの下運営されている企業であり、米国のFinCENの登録、認可を目指しております。」

また、日本の仮想通貨規制の枠組みに対しても「日本が仮想通貨規制ではリーダー的役割を果たしているから、期待しております」といった旨の発言もサガール氏からありました。

研究会の岩下メンバーからは、以下のような厳しい意見が述べられました。

「XRPを中に入れた決済システムを作る必要があるかについては議論があり、XRPは毎月市場に出していく額(ロックアップ解除)が決まっているが、それはXRPコントロールしているとみなせるだけでなく、XRPの市場自体までコントロールできてしまうのではないか。

また、XRPは値動きがあるのだから、決済システムに使うとなると、国際的な決済のノイズになってしまう為、フィアットカレンシーを利用すればいいのではないか」

といった厳しい意見が述べられたことに対し、セガール氏は

「XRPレジャーなどの決済システムはクロスボーダーペイメントの問題を解決したいのであり、ニューヨークとロンドン間のように流動性が高いところでは必要ないかもしれないが、流動性の低い地域間のクロスボーダーペイメントに利用されるツールです。

何もSDRになろうとは考えていない。」

と回答し、決済システムにフィアットカレンシーではなくXRPを用いて流動性が低い地域でのクロスボーダー決済を用いることの利点を答えていましたが、XRPの市場コントロールに関する厳しい指摘についての明確な回答はされておりませんでした。

研究会メンバーによる討議

上記画像は第一回研究会のもの(CoinPost撮影)

MITの伊藤教授やゲリー教授、ripple社のサガール氏の説明を終えた後、時間は短かったものの研究会メンバー間で討議が行われました。

その中で、楠メンバーから直近のモナコインやビットコインゴールドなどに対する51%攻撃などの事例について

「NiceHashのようなハッシュパワーそのものをオークション形式する売買システム等で、短期間ハッシュパワーを借りたり、貸し出してしまうようなことが現状可能であり、本人は何に使われたか分からない状態で、犯罪に使われてしまい、加担してしまうような状況が想定される。

そのような場合、どのように罰則を設けていくのか。罰する対象はマイナーなのか、ノードを運営している主体なのか、マイニングプールなのか

といった興味深い指摘がされました。

また、岩下メンバーからも仮想通貨取引所について、

「取引所機能と、保管振替機構のような機能、ディーリング機能が全部入っていて、利益相反を内部に抱えてしまっているような構図がある」

といった取引所に対する厳しい指摘もされました。

注意事項

金融庁の仮想通貨交換業等に関する研究会では録音が禁止されており、記者のメモ等に基づき記事を作成しているため、一部表現や内容について誤りがある場合があることをご了承下さい。

後日、金融庁にて都度公開される正式な議事録が公開される為、そちらもご確認いただくことを推奨致します。

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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