NFT取引に必要な税金知識と計算例を詳しく解説 Aerial Partners寄稿
NFT取引で発生する税金とは?
NFTは偽造することができないデジタル資産であり、唯一無二のデジタルアート等を表現することができるものとして、1枚のNFTアートが約75億円で取引されるなど話題となりました。またNFTはデジタルアートだけでなくブロックチェーンゲームとも相性がよく、Axie InfinityやSorareなどのゲームで取得したアイテム(NFT)の取引も活発に行われています。
そんなNFTですが、どのタイミングでどのような税金が発生するのでしょうか?今回はNFTで得た利益にかかる税金や確定申告を行う上での取り扱いについてご紹介します。
NFTの税制について
2022年2月現在、NFT取引の税制について国税庁から正式に公表されている明文規定はありません。そのため、NFTの取引で得た利益は、既存の税法体系や、税法の基本原則に基づいて処理することになります。
NFTは暗号資産と同様デジタルデジタルアセットですが、税制上の取り扱いも暗号資産と同様になるとは限りません。今後、国税庁からNFTの税制について正式な発表があった場合、その内容に即した取り扱いが必要となる点に留意が必要です。
NFT取引の所得区分
NFTの交換や売買によって利益を得た場合、基本的には暗号資産と同様に雑所得として課税されると考えられます。しかしNFTの売買を反復継続し事業として行っている場合や、デジタルアート作品を自ら作成し売却するしている場合等には、事業所得や譲渡所得など他の所得に区分される可能性があります。
所得区分が違うと所得の計算方法も異なるため留意が必要です。例えば事業所得、譲渡所得、雑所得は以下の計算式により求められます。
事業所得 | 総収入金額ー必要経費 |
譲渡所得 | 譲渡価額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除額 |
雑所得(業務にかかる) | 総収入金額ー必要経費 |
また、所得区分によって損益通算ができるか等細かい税務上の取り扱いが異なる点に留意が必要です。
NFT取引で利益が発生するタイミングと計算例
NFTの所得区分について紹介しましたが、NFTの取引ではどのようなタイミングで利益が発生するのでしょうか。ここではNFTにおいて代表的な5つの取引で利益が発生するタイミングと計算例を紹介します。
- NFTの購入
- 保有しているNFTの売却
- クリエイターとしてNFTを販売
- ブロックチェーンゲーム
- NFT関連銘柄の取引
①NFTの購入
まず、NFTを購入する際に所得が発生する可能性があります。NFTは一般的にETHなどの暗号資産で購入しますが、例えばETHで支払いを行った場合、支払いのタイミングでETHの含み損益が実現することで利益(または損失)が発生します。
例として1ETHでNFTを購入した場合の計算方法を紹介します。
例)
1ETHを10万円で購入。1年後、1ETH=40万円に値上がりしたタイミングで、1ETHを支払ってNFTを購入した。
40万円(時価:NFTの購入価格)ー10万円(ETHの取得価格)=30万円(利益額)
このケースでは、NFTを購入したタイミングでETHの価格が上がっているため、含み益30万円が実現することにより利益が発生します。
また、この30万円はあくまで暗号資産取引で得た所得のため、所得区分は雑所得になると考えられます。
②保有しているNFTの売却
次に、保有しているNFTを売却したタイミングでNFT取引による所得が発生する可能性があります。さきほどの例で40万円で購入したNFTを、60万円で売却したケースを考えてみます。
例)
NFTを40万円相当のETHで購入。その後NFTを売却し、60万円相当のETHを取得した。
60万円(時価:NFTの売却価格)ー40万円(NFTの取得価格)=20万円(利益額)
このケースは取引がシンプルなので利益額の計算のイメージはしやすいかと思います。逆に、NFTの購入時よりも売却時の価格が下がっている場合は損失を認識することになります。
このNFTの所得に関しては譲渡所得や雑所得などに区分されることが考えられますが、どの所得に区分されるかは、取引の性質から判断することになるでしょう。
③クリエイターとしてNFTを販売
基本的に、クリエイターがNFTを通して収入を得るには2つの方法があります。それは「NFTの販売」と「ロイヤリティの受取」です。
クリエイターは作成したNFTを、NFTのマーケットプレイスなどに出品して販売することができます。クリエイターがNFTを販売した(出品したNFTが売れた)タイミングで、NFTの所得を認識します。
また、販売したNFTが二次流通(再度売買)されるとき、クリエイターはロイヤリティ(手数料)報酬を受け取ることが可能です。この受け取ったロイヤリティ報酬もNFTの販売と同じく所得として認識する必要があります。
作成したNFTに係る所得の区分は、クリエイターが副業として行っているのか事業として実施しているかなど、個人の状況によって異なる可能性があるため、確定申告する際は、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
④ブロックチェーンゲーム
NFTのユースケースとして注目を集めているブロックチェーンゲームについて、税金の取り扱いはどうなるでしょうか。ここでは、代表的なブロックチェーンゲームであるAxie Infinity(アクシー・インフィニティ)を例にご紹介します。
Axie Infinityで税金が発生するタイミングは以下の4つが考えられます。
- Ⓐ NFTであるキャラクターやアイテムの購入
- Ⓑ 取得したNFTを売却
- Ⓒ 暗号資産の無償取得
- Ⓓ スカラー制度
ブロックチェーンゲームについて特筆すべき点は、暗号資産の取引とNFTの取引が複合的に行われる点です。暗号資産取引は暗号資産取引の税法に則って処理しなければ点に注意をしてください。
ブロックチェーンゲーム内で利用する「ⒶNFT(キャラクターやアイテム)の購入」や「Ⓑ取得したNFTの売却」に関しては、それぞれ上述した「NFTの購入」「保有しているNFTの売却」と同様の内容になりますので、具体的な所得認識のタイミングや計算方法についての説明は省略します。
Ⓒ暗号資産の無償取得については、ブロックチェーンゲームでの例を元に解説するとわかりやすいかもしれません。ブロックチェーンゲームの複雑なところは、ゲームをプレイする中で暗号資産・NFT双方の取引が発生する点です。
Axie Infinityをプレイしたことのある方はおわかりかと思いますが、ゲームプレイによりSLPやAXLといった暗号資産を無料でもらえることがあります。そして、このもらった暗号資産についてはエアドロップなどと同様に取得時の所得として認識することになります。
暗号資産の価格は日々変動するため、損益計算のためにいつ取得したかわかるようにしておきましょう。
Ⓓ スカラー制度の例として、Axie Infinityを挙げます。Axie Infinityスカラー制度とは、NFTを貸し出して他者に運用してもらうというもので、具体的には貸したNFTで稼いだSLPやAXLを、貸し出した側と運用した側で分け合います。スカラー制度では、貸し出した側と運用した側の双方が、SLPやAXLの増加分を所得として認識します。
⑤NFT関連銘柄の取引
Axie Infinity(AXS)やフロウ(FLOW)などのNFT関連の暗号資産取引は、交換や売買などの取引が発生したタイミングで損益を認識します。あくまでNFT関連銘柄はNFTではなく暗号資産であるため、通常の暗号資産の取引と同様に利益の計算を行います。
NFTの損益計算を行うには?
NFTの売買等で所得が発生した場合、基本的に確定申告をして税金を納付する必要があります。また、確定申告を行うには、NFTの売買等で年間にどのくらい所得が発生したのか把握する必要があります。
また、NFTの取引を行っている場合は、ETHなどの暗号資産の取引も行っているため、暗号資産取引によって発生した所得の計算も行う必要があります。
通常の暗号資産取引では、取引所から行った取引の内容がまとめられた取引履歴がダウンロードできますので、その取引履歴の情報をもとに、Gtax等の損益計算ツールや国税庁から公表されているエクセル等で損益計算を行うことが可能です。
損益計算ツール「Gtax」の詳細はこちら
しかしNFTの売買では、取引履歴自体を取得できなかったり、損益計算用にデータが整備されていない場合もあるため、投資家自身でNFTの取引履歴の管理をして損益計算する必要がある点に留意してください。
NFTは取引の性質により異なる所得区分に分類される可能性がある点や、それぞれのNFTに関し個別に取得価格や売却価格の管理をしなければならない点で暗号資産の税務と相違していますが、いずれの所得区分で申告をするとしても共通するのは自身でNFTに関する取得・売却の情報を管理する点です。
NFTの損益計算をする上で必要な情報は以下が考えられます。確定申告のタイミングで必要な情報が不足することにならないよう、これらの情報をこまめに記録しておきましょう。
- NFTを売買した年月日
- 購入、売却したときの価格
- 取引した通貨名
- 取引した通貨の数量
- 取引で発生した手数料
NFTを巡る税制については、国税庁から具体的な指針がまだ公表されていません。実際に確定申告をする際には、所轄の税務署や税理士の専門家に相談することをおすすめします。
企業情報
企業名:株式会社Aerial Partners
設立:2016年12月27日
代表者名:沼澤 健人
グループ会社:Aerial法律事務所/Atlas Accounting/税理士法人堀口会計
運営サービス:Gtax(ジータックス)、Guardian(ガーディアン)
事業概要:仮想通貨損益の自動計算ソフト『Gtax』、税理士紹介&仮想通貨取引の損益計算サービス『Guardian』などの開発
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します