金融庁を通して明らかになった仮想通貨交換業者に対する業務改善命令の指摘事項詳細
- 金融庁の記者レクまとめ
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6月22日、金融庁は仮想通貨交換業6社に対して業務改善命令を出し、同日夕方より金融庁にて記者に対するブリーフィングが行われ、業務改善命令の詳細の説明がなされました。
その記者ブリーフィングで行われた内容を当記事ではお伝え致します。また、注意点として弊社の記者の録音に基づき文字を起こしている為、一部聞き取りにくいところは割愛させていただきましたので、その点ご了承下さい。
- 目次
業務改善命令に関する金融庁の詳細説明
株式会社bitFlyerの業務改善命令について
秋以降に業容を拡大している中、コストを抑える事を優先し、業容拡大に応じた人員増強やシステムのキャパシティを広げるなどの対応をしていなかった事から、内部監査を含めた内部管理体制の整備に問題が認められ、その他、監査等委員会及び取締役の構成員が創業者である代表取締役の知人等で占められており、牽制機能を発揮していないという問題が認められた。
また、犯罪による収益移転防止に関する法律に定める取引時確認実施状況を確認する為、サンプル検証をしたところ、住所が私書箱になっているなどの確認が不十分である事例が多く認められ、マネロン対策及びテロ資金供与対策の管理体制に問題が認められた。
さらに帳簿上の利用者財産の残高に比べて、銀行口座残高やブロックチェーンの有高が不足している状態に対して、金融庁の事務ガイドラインで現金であれば2営業日以内、仮想通貨であれば5営業日以内で解消する事が決まっているが、そのような対応をしていないという分別管理体制の問題、更に不正アクセスによる仮想通貨の不正流出について未然防止対策が不十分な問題など多くの検査では多くの問題が認められた。
上記のような理由から適正かつ確実な業務運営を確保する為、10項目に渡り同社に対して業務改善命令が出された。
QUOINE株式会社の業務改善命令について
当社は取引システムなどをグループ子会社であるシンガポール法人経由で、ベトナム法人に外部委託している状況であるが、4月9日から実施された立ち入り検査では、ベトナム法人などの外部委託先から必要な業務報告書を受け取っていない、つまり監督をしっかりしていないという実態が確認された他、取引日記帳などの法定帳簿が長期間に渡り、未作成の状態という問題が認められた。
また、マネロン及びテロ資金供与対策では、取引目的や職業を確認しないまま取引を開始している事例や、反社会的勢力等の取引未然防止に関して、スクリーニングの対象に反社や口座を凍結している社のデータが含まれていないという問題が確認された、さらには銀行口座に当社の資金と利用者の資金を混蔵管理しているという分別管理の問題も認められている。
この為、上記のような理由から適正かつ確実な業務運営を確保する為、7項目に渡り同社に対して業務改善命令が出された。
ビットバンク株式会社の業務改善命令について
4月18日から実施している立ち入り検査で、昨年秋からの業容拡大に伴う一方で、コストを抑える事を優先して人員増強などをしていないという状況が確認され、その結果多くの業務において、社内規定に従った業務運営が行われていない実態が確認された。
そのほか、分別管理体制においても利用者の預託した金銭が帳簿上の残高を下回るといった不適切な事態が頻繁に発生しているほか、マネロン及びテロ資金供与対策では、確認記録に取引時確認を行った社の氏名などの必要事項が記録されていない問題や、さらには当社は取引時確認の業務を外部委託しているような状況下、委託先のリスクの評価をしないまま外部委託をしている問題が検査等で確認された。
この為、上記のような理由から適正かつ確実な業務運営を確保する為、8項目に渡り同社に対して業務改善命令が出された。
なお、項目の4番目にある「ホワイトラベル戦略における実効性ある態勢の構築」とは、同社は他の仮想通貨交換業者に仮想通貨の交換システムのサービスを提供しており、そういったホワイトラベル業務を拡大するという戦略を取っているが、例えばシステム障害が発生した場合にサービス提供先との間の連絡プロセス手順の規定等を作っていない、業務を拡大するにあたっての管理態勢を構築していないという事からこのような項目の業務改善命令が行われた。
BTCボックス株式会社の業務改善命令について
4月18日から検査を実施しており、同社についても業容が拡大している状況だが、経営陣が業容拡大に応じた人員配置やシステムを投資を行っていない問題や、代表者に権限が集中し、経営計画などの重要な事項が他の取締役に共有されておらず、さらには取締役会が月1回開かれる規定になっているが、開催されていないなど経営管理態勢に問題が認められた。
また、システム管理を行うリスク管理委員会というものが開催されていないという問題や、同社はシステム担当部署が中国にあるが、その担当部署を本社である東京からモニタリングをしていない問題、マネロン及びテロ資金供与対策に関しては取引時確認において、取引目的を確認していないという問題や、反社を排除する為のデータベースが構築されていないという問題、その他総勘定元帳以外の法定帳簿が作られていない問題等が検査等で認められた。
この為、上記のような理由から適正かつ確実な業務運営を確保する為、9項目に渡り同社に対して業務改善命令が出された。
株式会社ビットポイントジャパンの業務改善命令について
4月18日から検査を実施しており、同社についても業容が拡大している状況下で人員配置やシステム投資をしていないという問題や、利用者が預託した金銭が帳簿上の残高を継続的に下回るといった状況について取締役会で報告されていたが、取締役会で対応を検討しないまま、その下回る状態が金融庁の事務ガイドラインで規定する2営業日を超えているという事例が認められた。
また、マネロン及びテロ資金供与対策に関して、取引時の確認において、法人の実質的支配者の確認を行っていないという問題や、システムリスク管理においても、システム障害時の対応策を含む実効性あるシステムリスク管理態勢が構築されていないという問題も認められた。
この為、上記のような理由から適正かつ確実な業務運営を確保する為、6項目に渡り同社に対して業務改善命令が出された。
テックビューロ株式会社の業務改善命令について
2月13日から検査に着手しており、3月8日の時点で、システムリスク管理態勢について重大な問題が認められた事や、利用者保護などの苦情対応や顧客対応に重要な問題が認められた事から業務改善命令が行われている。
その後も立ち入り検査は継続していたが、第一回目の業務改善命令の指摘事項であるシステム障害や多発する苦情に対して、組織的かつ計画的な対応が行われていない、つまりは取締役会で議論や指示を行なった形跡がない事が検査で認められた。
また、マネロン及びテロ資金供与対策に関して、取引時確認が適切に行われていないまま、取引が開始されている事例が認められている問題や、利用者財産の分別管理態勢に関しては、会社の保有する財産と利用者が保有する財産が同じウォレットに混蔵管理といった問題が認められた。
上記のような理由から適正かつ確実な業務運営を確保する為、6項目に渡り同社に対して2回目となる業務改善命令が出された。
質疑応答
各社に対する業務改善命令が行われた理由や詳細が金融庁へ説明された後、質疑応答がありました。
以下、質問者は記者、回答者は金融庁側となります。
A.(金融庁)
今回共通して内部管理態勢への指摘があったが、秋頃からの業容の急拡大に内部管理態勢というのが追いついてこなかった。
やはりどの会社にも共通するのが、その点について経営陣が必要な戦略上の意思決定をできなかったというのが共通して見られた。
A.(金融庁)
反社と確認されている事例はあるが、各社それぞれの具体的な件数はお示し出来ない。
(検査の中で)反社が確認されており、ちゃんと対応して下さいという事で、業務改善命令となっている。
A.(金融庁)
今回業務改善命令を受けた6社につきまして結論から申し上げると、昨年9月の登録時点で、我々(金融庁)としては、各社から提出された資料であったり、あるいは各業者からの説明、そういったものに基づいて審査をした他、必要に応じてヒアリングを行った。
そうした中で、法に定める登録拒否の要件に該当する事実は認められなかった。
ただその時点で、既に登録拒否要件に該当しないものの内部管理態勢に課題があったのは事実ですので、その内容を各社に伝達して、モニタリングを行っていったというところだ。
このモニタリングに基づいて立ち入り検査を行ったが、先ほど申した通り昨年の秋以降仮想通貨の取引が急激拡大をするという状況が登録後発生した為、各登録業者に対して業容拡大に応じた内部管理態勢の整備が追いついていないという事態になった。
また、一部の交換業者においては登録審査時において事実と異なる説明をしていた事が、立ち入り検査で発見されたという状況だ。
A.(金融庁)
各社状況が異なる為一概には言えないが、業容が拡大しているという事はそれだけ収益が上がってきているということである為、内部管理態勢について各社経営陣の経営判断として、しっかりとそこにリソースを配置していくべきであった。
また、本来経営陣が法に定める内部管理態勢をもっときちんとした意識を持って対応すべきであった。
A.(金融庁)
詳細は差し控えたいが、例えば反社についてのチェック態勢について事実と異なる説明があったということだ。
A.(金融庁)
現時点で我々が把握しているところには、意図的に事実と異なる説明をしたというよりは、事前に十分に事実を確認しないまま、当局に対して説明をしてしまったというところだ。
A.(金融庁)
(bitFlyer社に対し)登録をした事は現在でも有効だ。
A.(金融庁)
今回の事例において、登録後の業容拡大において十分な内部管理態勢を構築できなかったという状況であった為、登録後のモニタリングを機動的に行っていく他、それぞれの業者のリスクを精緻に機動的に行っていく(見ていく)つもりだ。
仮想通貨業界の環境変化に対して、もっと検査監督を機動的に行っていく必要があり、我々としても(金融庁自身に)改善すべき余地があるのだろうと考えている。
今後、そういった観点も踏まえながら、今やっている検査も含めて、ある程度の基礎分析をした上で改善していきたいと考えている。
A.(金融庁)
業者によって様々だが、反社のデータベースを持っていない会社もあった。
そこはもう、今のお客さんが反社なのかどうか確認できないという酷いレベルの業者もあった。業者ごとに違っているのかどうか、ここでは一概に言えない。
A.(金融庁)
送金やそのコインがマネロンに使われたのかどうかまでは、分からない状況だ。
A.(金融庁)
会社によって様々だが、顧客の口座は帳簿上の残高を下回っている業者の例を挙げると、顧客の口座に入れるべきお金を会社の口座に入れてしまっていた。
流用された場合は流用と分かるように、みなし業者の改善命令の時もそうだが、(業務改善命令の指摘事項で)表記するようにしている為、流用ではない。
A.(金融庁)
業務改善命令の指摘事項にも書いてあるが、同社の問題については監査等委員会あるいは取締役が牽制機能を発揮していないという状況にあるのだろうと思う。
これらの構成員については、創業者である代表取締役の知人等で占められているということもあって代表取締役に対する牽制機能を発揮していないということが確認されている。
従って、bitFlyerに対する業務改善命令においては、他の業者の指摘事項には無い、経営体制の抜本的見直しが入っているという事だ。
A.(金融庁)
制度上の問題については、(金融庁における)仮想通貨交換業等に関する研究会で、規制が導入された後での様々な状況、内部管理態勢に対するモニタリング等を含めて、検討されているというところだ。
また、情報開示については、自主規制団体でその団体の会員で検討されているところで、秋以降の業容拡大の一つの要因として各社積極的に広告を行っており、それは(金融庁の規制や)法律の対象になっておらず、そういった広告の規制について自主規制団体で検討しているという状況だ。
A.(金融庁)
立ち入り検査の結果の下、業務改善命令となったが、そういった情報等が影響した面も一部ではある。まとめ
以上、金融庁の記者ブリーフィングで語られた内容をまとめました。
後日また別途、CoinPostで今回の業務改善命令の指摘内容等について考察記事を出す予定です。
注意事項
趣旨を変えないよう細心の注意を払っておりますが、記者の録音を元に文字起こし、記事化を行った為、一部聞き取りにくい箇所は割愛、または一部表現を変えてお伝えしている事をご了承下さい。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します