MakerDAO、ステーブルコイン5億ドル相当の裏付け資産で米国債などに投資か
USDCを運用へ
MakerDAOコミュニティが、バランスシート上のステーブルコインから低リスクの利回りを得るため、約650億円(5億DAI)について米国債などへの投資を検討していることが明らかになった。
7月5日更新:米国債などへの投資案は57.67%の賛成票で採決された。
Makerプロトコルは、ステーブルコイン「DAI(ダイ)」の発行・管理、レンディングプラットフォーム。MakerDAOはプロトコルの運用方針について、ガバナンストークン(MKR)の投票を通して管理する分散型自律組織だ。
イーサリアム・チェーン上で発行された仮想通貨を担保として発行するDAIの時価総額は67億ドル(約9,000億円)に上り、ステーブルコイン分野で時価総額4位を誇る(執筆時点)。
DAIは、暗号資産担保型のステーブルコインで、イーサリアムチェーン上で発行されているERC-20トークン規格。米ドルの価値と連動しており、1DAI≒1ドルを維持するよう設計される。
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経緯
事の発端は21年10月。Makerのバランスシートでは米ドル・ステーブルコイン(USDC)のシェアが50%を占めているが、その利回りはゼロであり、「PR(マーケティング上の印象が)が悪い」という指摘がコミュニティで持ち上がった。
担保資金を使った資産運用(オンボーディング)は、22年3月に発議されたMIP6-12で既に許可されている。本件では、プロの債券マネージャーによる分散戦略に基づいて保有するUSD Coin(USDC)から利回りを安定的に生み出すことを目的とした提案(MIP65)が議論されている。
6月27日に最終投票がスタートしている。5億DAIを①米国短国債(80%)+社債(20%)、②米国短国債(100%)のどちらで運用するかといった選択肢があり、④否決することもできる。執筆時点で48396票(99%)がプラン①に賛成しているが、得票数はMKR流通量の5%程であり、6月31日1時(日本時間)の期日まで時間がある。
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MakerDAOの挑戦
提案が可決した場合、USDCベースのDAI発行量のセキュリティラインを上回る余剰分がブローカーに送られ、現金に変換され、証券ブローカーに送られ、ブラックロックやベイリー・ギフォード製のETF(上場投資信託)に投資されることになる。
債券投資のエクスポージャーは、環境に優しいホールセール融資会社を謡う英国のMonetalisグループによって提供される計画だ。新たにMakerエコシステムにRWA(実世界資産)Vault(金庫)が設置され、第三者やMonetalisが資金にアクセスしたり、法的構造の条件を変更できないよう設計されるという。このスキームでMonetalisはAUM(運用資産)に対し年率0.15%の手数料を徴収する。
USDCの運用益がどのようにコミュニティに還元するかは取材中に確認できなかった。本件について、コミュニティ外では「規制的検閲の単一障害点になるリスク」や「分散型システムを理想とする組織が米国の金融システムに依存することへの矛盾」を指摘する声も挙がっている。
MakerDAOは、21年にMaker Foundation(Maker財団)を解散するとともに、財団に帰属する資産(8万4,000MKR)のコミュニティ移管を果たすなど、DAO(分散型自律組織)として先駆的な取り組みを実行してきた。22年4月には、著名VCであるAndreessen Horowitz(a16z)のメンバーが、ガバナンストークン「メイカー(MKR)」のトークン設計に関する刷新案を提出していた。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します