アップル、欧州で外部アプリストアの許可方針 30%の「Apple税」解消か=報道
サイドローディング実装を計画
米アップル社が、公式のApp Store以外からも外部アプリをダウンロード可能にする「サイドローディング」の実装準備を進めているようだ。現状iPhoneやiPadでは、App Store経由でしかアプリをダウンロードできない制限が掛けられている。
今回の方針はEUのデジタル市場法(DMA)に準拠する動きで、App Storeを介さずDLしたアプリは、iOSのアプリ開発者に30%のアプリ内決済(購入)手数料を強制する通称“アップル税”が実質的に解消される可能性がある。
ブルームバーグが14日に関係筋の情報として伝えた内容によると、アップル社はEU(欧州連合)で制定された法律に対応するため、外部のアプリストアを許可する計画を進めているという。
2023年に予定される「iOS 17」アップデートを経て、EUユーザーはアップル社App Storeを介さずとも、サードパーティのソフトウェアをアップル社の端末にダウンロードできるようになる。
対応はEUに限定されているが、同様の法律が制定される場合は他国でも適用される可能性があり、Web3およびNFT(非代替性トークン)業界にも追い風となり得る。
これまでアップル社は、独自のiOSを介した全ての金融取引を課税対象とするポリシーを採用してきた。アプリ内決済に対するアップル社の手数料を巡っては、人気ゲーム「フォートナイト」を運営する米Epic Gameが21年に独占禁止法違反で提訴し、アップル側に改善命令が出るなど、度々問題視されてきた。
暗号資産(仮想通貨)アプリも例外ではない。米仮想通貨取引所コインベースのiOS版ウォレットアプリにおいては、NFTの送信毎に発生するネットワーク手数料(ガス代)に30%の手数料を徴収することを要求したとされる。アプリブロックを免れるため、コインベースはウォレット(iOS版)でNFTの送付機能を停止せざるを得なくなった経緯がある。
また人気フィットネスアプリSTEPNも、Appleの新たなガイドラインを受けNFTシューズのゲーム内マーケットをiOSから除外し、ブラウザ版に移すなどの対応を余儀なくされた。
アップル社の開発計画を受けて、Match Group(MTCH)やBumble(BMBL)といった出会い系アプリ運営企業、音楽ストリーミングアプリSpotify(SPOT)などの株価は13日(米国時間)に前日比10%ほど上昇した。
デジタル市場法に準拠
アップル社のサイドローディング実装計画は、2022年7月18日に制定され、24年に施行されるEUの「デジタル市場法(DMA)」に準拠する動き。デジタルサービスを提供する巨大企業(デジタル・ゲートキーパー)を対象に、オープンマーケットを維持するための要件が設けられた。
DMAは、EU域内の時価総額10兆円(800億ドル)以上、月間ユーザー数4,500万人以上の巨大テック企業に適用される。違反した企業には世界年間売上高の最大10%の罰金を科される可能性があり、再発する企業にはさらに重たい罰則が設けられる。
ブルームバーグによれば、DMAに準拠するためにアップル社が検討している内容には、アプリからウェブサイトへのアクセス制限の解除、外部アプリへのAPI公開、アップルSafariブラウザWebKitの使用義務撤廃、カメラ技術へのアクセス制御撤廃などが含まれる。
特に、NFCチップを使用したモバイルウォレット機能の解放により、サードパーティの金融アプリは、AppleWalletアプリとApple Payと同等の機能を持つことができる可能性がある。
なお、DMAではアプリ内にサードパーティの決済システムを使用できるよう規定されたが、アップル社がこれに対応するかどうかは定かではない。
DMA制定前、アップル社はサイドローディングにより、危険なアプリが端末にインストールされるリスクを強調してきた。そのため、公式App Store以外のアプリ入手経路についても同社はセキュリティ要件を設け、審査手数料を徴収する可能性が残されている。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します