ポリゴン(MATIC)、開発者がハードフォークを提案 reorg問題解消へ
ガス代の急騰とチェーンの再編成に対応
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)のスケーリングソリューション「ポリゴン(MATIC)」が、近くハードフォークする可能性が指摘された。
仮想通貨メディアThe Blockによると、ポリゴンラボの開発者がPoS(プルーフオブステーク)ブロックチェーンのハードフォークをコミュニティに提案。その目的は、取引手数料(ガス代)の急騰とブロックチェーンの再編成(リオーグ)に対処し、ポリゴンのパフォーマンスとセキュリティの向上を目指すものだという。
承認された場合、アップグレードは1月17日に行われる予定だ。
このアップグレードについては、ポリゴンサイドチェーンの機能性向上に関する取り組みの一環として、昨年12月からガバナンスフォーラムで議論されてきた経緯がある。
ポリゴンとは
イーサリアムのスケーラビリティ問題に取り組むセカンドレイヤープロジェクト。「Polygon PoS」や「Polygon zkEVM」など複数のソリューションを開発し、大手企業に採用される事例が続いている。
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再編成の防止
ハードフォークが第一の目標としているのは、チェーンの再編成(リオーグ=reorg)が起こる可能性を低減させることだ。リオーグは、一つのチェーンが作業中のチェーンよりも長くなった際に発生するが、ポリゴンのPoSメインネットのコンセンサスメカニズムの性質により、リオーグが発生しやすくなっているという。
異なるノードが異なるタイミングでコンセンサスに達することで、ブロックを上書きしてしまう可能性が指摘されている。
リオーグが発生すると、どのチェーンが「正当なのか」を判断するための調整が必要となり、取引が完了したかどうかの検証が困難になる。
この問題に対処するため、開発者は成功した取引の検証に関して、ブロックの確定時間の短縮につながる措置を提案。バリデータが連続して生成できるブロックの数(スプリントの長さ)を現在の64ブロックから16ブロックに減らすことで、一人のバリデータによるブロック生成が可能な時間を128秒から32秒に変更する。
この措置により、ブロック生成に二人目や三人目のバリデータが介入する可能性が低くなり、結果的にリオーグが発生する回数が減らせると開発者はみている。
ガス代急騰の低減
アップグレードの第二の目標は、手数料の基本料金の変動をより滑らかにすることで、ガス代の急騰を低減することだという。
ポリゴンではブロック生成の需要が高い時期に、基本料金が急激に上昇するという事態が発生していた。そのため、その時々の需要に応じて、取引の基本料金の変化速度を決定するパラメータ「BaseFeeChangeDenominator」を変更する措置が提案されている。
ポリゴンとWeb3
昨年来、Web3関連でポリゴンと数々の大手企業との提携や採用が相次いでいる。
- スターバックス:ロイヤリティプログラムのWeb3体験提供にポリゴンを採用
- インスタグラム:ポリゴンのNFT(非代替性トークン)に対応、アプリでクリエータによるNFT発行と販売が可能に
- バミューダ諸島のジュエルバンク:米ドル建てステーブルコインの発行基盤にポリゴンを採用
- デイズニー:デジタルコレクタブル開発でポリゴンと協業
- Magic Eden(ソラナ基盤のNFT電子市場):ポリゴンNFTを導入
- ワーナー・ミュージック:NFTの音楽プラットフォーム開発で提携
- マスターカード:音楽アーティスト向けのWeb3育成プログラムの基盤にポリゴンを採用
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Web3とは
現状の中央集権体制のウェブをWeb2.0と定義し、ブロックチェーン等を用いて非中央集権型のネットワークを実現する試みを指す。代表的な特徴としては、仮想通貨ウォレットを利用したdAppsへのアクセスなど、ブロックチェーンをはじめとする分散型ネットワークのユースケースがある。
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仮想通貨関連企業の多くが大規模な人員削減を余儀なくされる中、ポリゴンは昨年9月、提携面やWeb3系の開発陣強化のため、約40%に当たる200人超の人員増強を検討していると報じられた。
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