米SECのクラーケン起訴をどう見るか、イーサリアムステーキングへの影響を考察
SECはステーキング規制に及ぶのか
米国の暗号資産(仮想通貨)取引所クラーケンが提供するステーキングサービスは9日、SEC(米証券取引委員会)に無登録証券として起訴された。
この事例は、クラーケンのサービスに限定したものなのか、米企業によるステーキングサービスやステーキングを採用するプロトコル自体にも影響するのかといった議論に発展している。
クラーケンの摘発されたポイントの一つは、同社が最大年利21%もの報酬を謡いながら、報酬源に関する情報開示が不足していたことにある。
弁護士のGabriel Sapiro氏が指摘したように、クラーケンのステーキングは本質的に利回り商品の提供であり、米国の別の取引所コインベースや分散型プロトコルLidoのステーキングの仲介サービスとは性質が異なるものだ。
コインベースの最高法務責任者であるPaul Grewal氏は、ステーキングユーザーに支払われる報酬率はプロトコルデータをそのまま反映する形であり、あくまでも取引所としては手数料を開示していると説明した。しかし投資家は取り締まりの連鎖を懸念しているようで同社の株価は9日に14%下落している。
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SECの見解
クラーケンのサービスが証券と判断されただけであれば、コインベースのブライアン・アームストロングCEOが危惧した「SECが個人投資家のステーキング全体を禁止する噂」は、杞憂に終わりそうだ。
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しかし、あるSECの関係者はクラーケンとの和解発表後の記者会見で、報酬源の不透明性の指摘については「あまり深読みしないように」と語っている。
クラーケンは罰金・不正利得などを含めた約39億円(3,000万ドル)の支払い、及び米国でのステーキングサービスの停止で合意したが、SEC関係者はクラーケンの事例がステーキング全体と切り離される問題かどうかについては「コメントできない」と語っている。
SECのゲイリー・ゲンスラー委員長もまたプレスリリースで、仮想通貨仲介者の投資契約自体を取り締まる意向を示していた。
ステーキングサービス、レンディング、またはその他の手段にかかわらず、仮想通貨仲介者は、投資家のトークンと引き換えに投資契約を提供する場合、証券法で要求される適切な開示と保護を提供する必要がある。
仮想通貨擁護派と知られるSECコミッショナーのへスター・パース氏は、SECのクラーケンへの執行措置に対する反体声明を発表。SECが事前にステーキングに関するガイダンスを設けなかったにもかかわらず、執行措置によって規制を報せることは、公正な方法ではないと批判した。
クラーケンのような仮想通貨ステーキングプログラムの透明性を高めることは良いことかもしれない。しかし、統一された規制ソリューションが必要かどうか、およびその規制ソリューションが仮想通貨に敵対する規制当局によって、執行措置の形で提供されるのがベストかどうかはあまり明確ではない。
イーサリアムへの影響
クラーケンはイーサリアム(ETH)の単一ステーキングサービスプロバイダーとしては、第3位の企業。SECの執行措置によりイーサリアム以外の仮想通貨は2月9日にアンステーク(ステーキング解除)されており、イーサリアムは23年3月に予定される上海アップグレード後にアンステークされる。
この動きは、イーサリアムのステーキングサービスを提供するLido(LDO)やRocket Pool(RPT)のような分散型プロトコルにとってポジティブな動きと捉えられ、関連トークンが前日比で10%強高騰している。一般的に、これらのサービスには米国規制が行き届かない可能性が高いと考えられているからだ。
また、仮想通貨の有識者の間では、SECが米企業のステーキングサービスを禁止する方向性は、イーサリアムにとってポジティブとの意見も出てきている。中国の仮想通貨規制によりビットコイン採掘事業者の世界的な分散化が加速したように、イーサリアムネットワークの健全化に寄与するという主旨だ。
一方、アームストロング氏は、これらの技術発展の芽を米国外へ逃してしまうことは、国家安全保障のリスクにつながると指摘。仮想通貨市場におけるステーキングの重要性を説明し、「新しい技術が米国で成長するようにし、明確なルールの欠如によって阻害されないようにする必要がある」と強調していた。
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