米債務上限合意で仮想通貨業界に朗報 マイニング増税案は見送り
デフォルトを回避
バイデン米大統領と共和党のマッカーシー下院議長は現地時間27日夜、連邦政府の債務上限引き上げで最終合意に達し、懸念されていた米国政府によるデフォルト(債務不履行)が回避される運びとなった。合意を反映した法案は28日に公開され、その内容に注目が集まっている。
合意された法案には、2025年1月まで債務上限の適用を停止する代わりに、防衛費以外の政府予算の歳出に上限を設け、支出をほぼ現行の水準に据え置く内容が盛り込まれた。
合意により、暗号資産(仮想通貨)業界にとって嬉しいニュースももたらされたようだ。
バイデン大統領が「妥協の産物」と表現した合意内容には、2024年予算の一部としてホワイトハウスが提案し、共和党が拒否していた「デジタル資産マイニングエネルギー(DAME)消費税」は含まれていない。DAMEでは、ビットコインなどの仮想通貨マイニング企業に対して、マイニングに使用する電力コストの30%に相当する税金を課すべきだと提案されていた。
仮想通貨擁護派のウォーレン・デビッドソン議員(共和党)は、「法案の文書にはDAME提案が見当たらないが、見送られたのか」という質問に対し、「そうだ。勝利の一つは、提案された税金を阻止することだ」と返答した。
バイデン政権の提案した予算では、マイナーは使用する電力に対して、2024年から3年間にわたり、10%の増税に直面する可能性があった。
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主な債務合意内容
今回の合意では、上記のDAME以外にも、バイデン政権が提案した新たな増税は見送られることとなった。
焦点となった債務上限引き上げは、2年間の期限付きで債務上限の適用を停止する形で行われる。2025年1月まで、財務省は上限に縛られずに借入を行える権限が付与されることになり、現政権にとっては大きな勝利だとみられている。2024年の大統領選期間中に、債務上限を政治的に利用することができなくする狙いもある。
歳出の上限については、米議会が連邦機関や政府のプログラムに毎年予算を配分する「裁量的支出」に上限が設定される。なお、高齢者や障害者向けの医療保険制度であるメディケアや社会保障などの支出には、この上限は適用されない。
一方、公的補助の受給要件に就労義務の厳格化を求めた共和党の要求も一部、認められた。低所得者向けの公的食料費補助プログラム(SNAP)では、就労義務の適用年齢上限を49歳から54歳に引き上げ、現金給付のプログラムでも就労要件を変更する。ただし、退役軍人やホームレスは、年齢に関係なく就労義務の対象とならない。
内国歳入庁(IRS)は、予算削減で大きな影響を受けることになる。バイデン政権が成立させたインフレ抑制法には、10年間で800億ドルの予算増が盛り込まれていたが、そのうち200億ドルは、別の使途に当てられることとなった。共和党は、インフレ抑制法で数万人の新たなIRS捜査官の雇用に予算が割り当てられることに、強く反対していた経緯がある。
共和党が提案していた新型コロナ救済資金の未使用分の回収については、合意内容に含まれることとなった。議会予算局はその金額を約300億ドルと推定している。
エネルギー関連では、国内の許認可法の見直しについて合意がなされ、環境アセスメントのプロセスが合理化されることとなった。新規プロジェクトの承認にかかる時間が短縮される見込みだ。
この法案が可決されると、現在停止されている天然ガスパイプラインの建設プロジェクト「マウンテンバレーパイプライン」の完成に必要な許可証が全て承認されることになるという。
議会承認が必要
合意内容を反映した法案は、連邦議会の上下両院で可決する必要がある。米時間31日に議会下院で法案の採決を行う予定だが、一部の民主党の急進派や共和党の保守的議員(自由議員連盟)からは、すでに法案を批判する声も上がっているようだ。
バイデン大統領とマッカーシー下院議長は、デフォルト回避を確実にするため、議員への説得に向け積極的に動いており、両者とも法案が議会を通過することに対して、ある程度の確信を持っていることを明らかにしている。
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