バイナンスとコインベースのSEC訴訟はウォール街を利するのか

仮想通貨企業の訴訟と既存金融大手の参入

米証券取引委員会(SEC)が今月初旬、暗号資産(仮想通貨)取引所世界最大手のバイナンスと米最大手のコインベースを証券法違反の疑いで相次いで提訴し、仮想通貨業界を震撼させた。

バイナンスとコインベースは共に、SECの主張を全面的に否定し、あくまでも裁判で争う意思を鮮明にした。SECの「強制執行による規制」というアプローチは、業界だけでなく米議会からも批判を受けており、訴訟は数年にわたって続く可能性があるとみられている。

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SECはバイナンスの米国部門「バイナンスUS」の資産凍結を求めていたが、この措置によりバイナンスUSは事業を継続できなくなるため、裁判所は調停を命じ、直近で資産凍結は回避されることとなった。バイナンスUSは「SECはあらゆる手段を使って仮想通貨業界を潰そうと試みている」と非難している。

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また、コインベースのブライアン・アームストロングCEOは、仮想通貨に対する明確な規制が欠如しているのにも関わらず、SECが強制的な執行をおこなっていることを批判。「仮想通貨のルールについての明確さを法廷で得るために、業界を代表することを誇りに思う」と述べた。

仮想通貨トップ企業と米規制当局との対立が鮮明になる中、世界最大の資産運用会社、米ブラックロックが15日にビットコインETFを申請。その後、相次いで米WisdomTree、Invesco、およびValkyrie Fundsも新たに現物型ビットコインETFの申請を行なった。

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また、ウォール街の主要な金融機関が出資する、機関投資家向けの仮想通貨取引所「EDX Markets」が21日にサービスを開始した。EDX Marketsを支援するのは、シタデル・セキュリティーズ、フィデリティ・インベストメンツ、そしてチャールズ・シュワブといった伝統的な金融機関だ。

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疑わしい参入のタイミング

バイナンスとコインベースに対する訴訟が提起されて間も無く、「ウォール街金融」が相次いで仮想通貨業界に参入したことから、業界著名人の中では、規制当局と既存金融との連携プレーなのではという仮説も浮上し、さまざまな憶測を生んでいる。

悪いが、ブラックロック、フィデリティ、シタデル、シュワブ、そして今回ドイツ銀行が、SECがバイナンスにTRO(注:資産の保全処分)を要求し、コインベースを訴えたわずか数日後に、ビットコインETFや現物取引所などを申請しているのを見た後では。。。この1年の出来事全てが、ウォール街プレイヤーと政府規制当局の間で調整された巨大な内部工作であり、彼らが追いつけるように配慮したという考えをどうやったら排除できるのか。

6月5〜6日:SECがバイナンスとコインベースを提訴 6月15日:ブラックロックがBTCのETFを申請 6月20日:シタデル、シュワブ、フィデリティが支援する仮想通貨取引所(EDX Markets)が稼働開始 TradFi(伝統的金融)による乗っ取りが始まった。

BitMEXの元CEOなども同じような見解を示している。

「既存大手が主導権を握るチャンス」

ソロス・ファンド・マネジメントのドーン・フィッツパトリックCEOは、バイナンスとコインベースが提訴されたことは業界にとって試練の時となるが、既存金融にとっては、今が仮想通貨市場参入のチャンスだとの考えを明らかにした。

ソロス・ファンド・マネジメントは世界三大投資家の一人として知られるジョージ・ソロス氏の資本を運用する投資会社で、その評価額は約4兆2,500億円(300億ドル)。

今回起こったことは、明らかに後退だ。しかし、私は今こそ、既存の金融機関が実際の主導権を握る大きなチャンスだと考えている。

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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