英ケンブリッジ大学、仮想通貨ビットコインの電力消費を分析する指数見直し
以前の消費電力推定値は過大評価か
英ケンブリッジ大学のオルタナティブ金融センター(CCAF)は31日、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)の電力消費についてより正確に評価するためデータの分析方法の見直しを行ったと発表した。
以前の消費電力推定値は、大幅に過大評価されていたと述べている。特に、マイニングマシンのアップデートを考慮した場合、これまでの見積もりより電力消費は少なかったと分析した形だ。
CCAFは、ビットコインの消費するエネルギーを見積もる上で「ビットコイン電力消費指数(CBECI)」という一連の指標で計算を行っているが、今回、この方法を改訂した。
例えば、2021年について、以前のCBECIモデルは電力消費量を104テラワット時(TWh)と推定していたが、改訂モデルで計算し直すと89テラワット時であり、15テラワット時多く見積もっていたことになるとしている。
なお、テラワット時(TWh)は、1時間に1兆ワットを出力することに相当するエネルギーの単位だ。
2022年についても、以前は105.3テラワット時と推測されていたが、新しいモデルでは95.5テラワット時の消費へと下方修正された。これは、米国における回転式乾燥機(108テラワット時)とほぼ同等の電力消費レベルである。
最新のマイニングマシンの割合
CCAFは特に、中国政府がビットコインマイニングを禁止した2021年より、マイニングを行う機器全体における、古いハードウェアの数が過大評価され、新しいハードウェアの割合が過小評価されることになっていたと述べた。
2021年には、中国の取り締まり強化を受けて、中国から移転するマイニング事業者が相次ぎ、米国も移転先の一つとなった。また、米国マイニング企業も大規模に最新マイニングマシンの買い付けを行った。
関連:Bitmain営業部長が語る、浮き沈みの激しいマイニング業界をリードし続ける秘訣|WebXインタビュー
新たな指標は、最新のハードウェア(マイニングマシン)の方が、電力効率も向上していることの結果を反映したことになる。
CCAFは、マイニングマシンの販売データや、機器の輸送や設置までにかかる時間、マシンのハッシュレートなどを分析して新たな指数を構築した形だ。
ただCCAFは、例えば新たな指数を構築する上では、米国にCanaan社のマイニングマシンが輸入された記録を基にして新しいハードウェアの割合を算出しているなど限界もあり、依然として多くの「仮定と単純化」が含まれるとも認めている。
ハッシュレートとは
マイニングの採掘速度のこと。日本語では「採掘速度」と表現される。単位は「hash/s」。「s」は「second=秒」で、「1秒間に何回計算ができるか」を表す。マイニング機器の処理能力を表す際や仮想通貨のマイニングがどれくらいのスピードで行われるかを示す指標として用いる。
▶️仮想通貨用語集
今後の課題
CCAFは、推定値に自信を持っており、指数のアップデートはその信頼性を高めるための進歩だとする一方で、ビットコインの電力消費量は依然として正確に捉えるのが難しく、近似値を探ることしかできないとも述べた。
さらに、ビットコインが環境に与える影響を測定する上では電力消費量の他に、ビットコインのマイニングにどんな種類のエネルギー源が使用されているかを調査することも重要だと指摘した。
炭素排出量の推定値を引き下げる可能性のある要素としては、油田の隣に設置され、排ガスのエネルギーを使用するマイニング事業などが挙げられるとしている。また、再生可能エネルギーを利用してそれを支える場合などにも言及した。
一方で、ネガティブな要素としては、電子廃棄物の問題や、騒音の問題も指摘。ビットコインマイニングという、登場したばかりの産業が環境や社会に及ぼす影響についての理解を深めるためには、まだ多くの作業が必要だとしている。
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します