欧州中銀、デジタルユーロの準備段階へ進行
調査段階から準備段階へと移行
欧州中央銀行(ECB)理事会は18日、EUの中央銀行デジタル通貨(CBDC)であるデジタルユーロが、調査段階から準備段階へと移行すると発表した。ECBのファビオ・パネッタ理事が欧州議会のアイリーン・ティナグリ経済金融委員長に宛てた書簡の形を取っている。
準備段階は、11月に開始され、2年間におよぶ予定だ。なお、準備段階への移行は、デジタルユーロ発行の決定を意味するものではない。実際に発行するかどうかは、欧州連合での立法手続きが完了した後に、欧州理事会が決めることになる。
以前、欧州中銀のクリスティーヌ・ラガルド総裁は、今年10月末までに、デジタルユーロ創設について決定を下す予定だとしていたが、発行の最終決定についてはまだ先になる模様だ。
これまでの調査段階を踏まえて、準備段階ではさらに詳細な分析、包括的なテストや実験、すべての関係者との徹底的な協議が行われる。それにより、デジタルユーロがプライバシー保護、品質、セキュリティ、使いやすさなどにおいて最高の基準を満たしていることを確認する計画だ。
具体的には、官民両方の関係者と協力しながら、次の項目を実施する。
- デジタルユーロのデザインや機能に関してさらに分析と実験を行う
- 市場参加者と協力して、デジタルユーロのルール草案を進める
- 技術ソリューションを開発し、運用する可能性のあるサービスプロバイダーの選定プロセスを開始する
パネッタ理事は、欧州中銀はデジタルユーロに向けた技術的な準備も続けており、まだ時間がかかるものの、立法プロセスにおいても役立つ情報を提供できるようになるだろうと述べた。
CBDCとは
各国・地域の中央銀行が発行するデジタル化された通貨を指す。「Central Bank Digital Currency」の略である。仮想通貨との大きな違いは、CBDCは法定通貨であること。通貨の管理や決済等においてコスト削減や効率性向上が期待できる一方で、個人情報やプライバシーの保護、セキュリティ対策、金融システムへの影響など考慮すべき課題は多い。
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報告書を公開
欧州中銀は18日に、デジタルユーロの調査段階完了にあたって報告書も発表している。
報告書は、市場調査の結果、デジタルユーロで必要となるソリューションを開発できるヨーロッパのプロバイダーが十分に多く存在し、様々なアーキテクチャ(構造)および技術設計の選択肢が利用できることがわかったと結論している。
また、デジタルユーロの特徴として改めて主に以下の事項を強調した。
- 基本的に無料で使える
- ユーロ圏のあらゆるデジタル決済に使用可能
- オフラインでも使用可能
- 最高レベルのプライバシー保護を提供
- 即時決済
- 中央銀行が提供するという安全性
こうした特徴を提供できるデジタル決済手段は他に存在していないとする形だ。また、デジタルユーロは、現金やその他の電子決済手段と並行して存在し、エンドユーザーにさらなる選択の自由を与えるとも続けた。
欧州委員会もデジタルユーロに向けて動き出しており、6月にはデジタルユーロの導入に備える法案を公開している。EU全域で、デジタルユーロへの自由なアクセスを保証し、オンラインとオフラインの両方でデバイスを使ったデジタルユーロ決済ができるようにする内容だ。
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