中国政府が14億人国民向けに分散型IDプラットフォーム開設 国民監視を否定

「実名DID」システムを立ち上げ

中国の政府関連団体が主導するブロックチェーンサービスネットワーク(BSN)は9日、ブロックチェーンベースのID(身元確認情報)検証プラットフォーム「実名DID(RealDID)」を立ち上げたと発表した。

BSNは、RealDIDにより、ユーザーが自分のデジタルIDや個人情報の使用をコントロールできるようになるとしている。中国国民は、DIDアドレスを使用して、各種ウェブサイトに匿名で登録・ログインできるようになる形だ。

この機能により、トランザクションと個人データのプライバシーが確保され、ウェブサイトは、必要最小限の個人情報のみにアクセスすることになる。

BSNは、RealDIDは、国家レベルで運営される世界初の実名分散型IDシステムだと述べた。中国の約14億人の国民に対して、このRealDIDが適用される時期についてはまだ明らかになっていない。

分散型IDとは

英語でDecentralized Identity(DID)。ブロックチェーンや分散型台帳に、各機関(政府、大学など)から本物であると保証されたユーザーのID情報を記録する。ユーザーは自分の情報を自己管理し、生年月日など個人情報自体を明かすことなく、年齢などを第三者機関に証明することができるようになる。

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国民監視の懸念は?

RealDIDは、BSNの開発チームと、中国公安省(警察に相当)が全額出資するテクノロジー企業「中屯安信」および中国移動設計研究院が協力して立ち上げるものだ。

BSNのブロックチェーンサービス・ネットワークと、CTIDデジタル・アイデンティティ・チェーンという2つのインフラを完全に統合し、「フロントオフィスでは匿名、バックオフィスでは実名」という管理要件を満たしている。

CTIDとは、住民IDカードに含まれる識別情報(名前、ID 番号、有効期限など)をアプリ化したものだ。中国の公安部のネットワークと身分証プラットフォームの個人情報を連携させ、顔認証システムなどで身元確認を行う。

交通・旅行、医療・ヘルスケア、金融サービス、デジタル通信など多くの分野で活用されている。

CTIDについては国民監視に使えると指摘する声もある。各種ウェブサイトでの履歴が一つのIDに集約されて当局に把握可能となるという点では、RealDIDについても、プライバシー擁護の点から懸念が浮上する可能性もありそうだ。

BSNは、RealDIDについて、匿名ログインの他にも、個人データがプラットフォーム間で転送される際に暗号化されることを保証する「暗号化サービス」や、ビジネスプラットフォームが個々のユーザーにビジネスDIDを提供することをサポートする「ビジネスDIDサービス」などの機能を説明している。

ビジネス・プラットフォームが特定のユーザーのデータで他のビジネス・プラットフォームとやり取りする時にも、ユーザーはプライバシーを保護しながら、ビジネス処理を完了することが可能になるとされる。

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政府公認のNFTプラットフォーム

中国は1月、NFT(非代替性トークン)やその他デジタル資産のための二次取引プラットフォーム「中国デジタル取引プラットフォーム(CDEX)」を立ち上げたところだ。

中国政府は暗号資産(仮想通貨)を厳しく取り締まっており、NFTも仮想通貨では購入できない「BSN分散型デジタル証明書(BSN-DDC)」の形をとることになる。

BSNに技術サポートを提供するRed Date TechnologyのHe Yifan CEOは昨年、BSN-DDCは、最大の市場として、車のナンバープレートや学校の卒業証書など、証明書管理の分野を見込んでいると話していた。

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