「仮想通貨取引は有価証券」米地裁がコインベース関連の訴訟でSECの主張支持
「流通市場での取引にも証券性」
米国のワシントン西部地区地方裁判所は1日、米証券取引委員会(SEC)が米暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースの元従業員らに対してインサイダー取引をめぐって起こした訴訟で判決をくだした。
SECの主張に基づいて、被告ら元従業員が取り扱ったトークンに証券性があったとみなしている。
トークンが流通市場で取引されている間も、それを有価証券とするような宣伝が行われており、流通市場での該当トークンの取引は有価証券取引だったとした。
この事件は2022年に発覚したものだ。コインベースの元従業員であるイシャン・ワヒ氏、およびその兄弟であるニキル・ワヒ氏、友人のサミール・ラマニ氏は2022年に「仮想通貨初のインサイダー取引」の容疑で米司法省に逮捕されていた。
コインベースで仮想通貨の上場に関わっていたワヒ氏が、上場する銘柄など機密情報を事前に他二人に伝えていた形だ。2021年6月から2022年4月ごろにかけて少なくとも25銘柄でインサイダー取引が行われていた。
裁判所は今回、判決文で次のように述べた。
SECによると、ラマニ氏が取引したトークンは投資契約であり、したがって有価証券だ。なぜなら、それらは他人の努力から得られる利益について合理的な期待を持ち、共通の事業に資金を投資することに関わっていたからだ。
裁判所は、該当するトークンの発行者が、トークンの潜在的な投資利益に焦点を当てて投資家を勧誘していたとも指摘した。
ソーシャルメディアや、ホワイトペーパー、ウェブサイト、インタビューなどで広く宣伝されており、トークン価値の劇的な上昇可能性、トークン所有者が手数料などで利益を得られる可能性、発行者がトークン価値を高めるための措置を講じることなどを説明していたとも続けている。
ハウィーテストの下で、ラマニ氏が購入し取引した仮想通貨はすべて投資契約であったとする格好だ。ラマニ氏に対して、民事罰の罰金約164万ドル(約2.5億円)などを課している。
なおSECは、訴状で以下の9銘柄を有価証券だと主張していた。
- AMP
- RLY
- DDX
- XYO
- RGT
- LCX
- POWR
- DFX
- KROM
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ハウィーテストとは
ハウィーテストとは、米国で特定の取引が「投資契約」という証券取引の定義の一つに該当するかどうかを判定するテスト。SECのW. J. Howey社に対する訴訟事件に由来する。
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「ゲンスラー委員長は今後も訴訟を続ける」と予測
投資銀行TDコーウェンは、今回の判決を受けて、SECのゲーリー・ゲンスラー委員長が今後も仮想通貨企業に対して訴訟を続けるだろうと予想している。
ゲンスラー氏は2026年6月に任期終了が予定されているが、少なくともそれまでの2年間は訴訟活動を継続するだろうと意見する格好だ。ジャレット・サイバーグ氏率いるTDコーウェンのワシントンリサーチグループは次のように見解を述べた。
私たちは今回の判決をSECの新たな勝利とみなしている。様々な裁判において、裁判官が法律をどう解釈したかを説明するたびに、議員にとっては市場構造についての法案を作成する方法が明確になっていく。
TDコーウェンは、ゲンスラー氏がこのようなやり方で、米国議会が仮想通貨の規制体制を確立する前に、法律を明確化しておきたいと考えているのではないかと推測した。
米国では、様々な仮想通貨法案が起草されているところだが、規制を明確化する包括的な法案はまだ成立していない。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します