イーサリアム利回りめぐる議論が浮上 集中化リスク背景に
イーサリアム財団リサーチャーが提案
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)のステーキングをめぐる提案で、イーサリアムコミュニティの中で議論が起きている。イーサリアムのトークン新規発行ペースを遅らせることに賛否両論が出ている格好だ。
この議論は、イーサリアム財団のリサーチャーであるアンスガー・ディートリヒス氏とカスパー・シュワルツ・シリング氏が2月に提案したアイデアについてのものである。
2人は、2月現在ですべてのイーサリアムの4分の1に相当する3,000万ETHがステーキングされていると指摘。今後、新規ステーキングのほとんどがリキッドステーキング・プロトコルによって行われる可能性があるとして問題視した。
最大手Lidoをはじめ、コインベースやクラーケン、バイナンスなどの中央集権的組織の運用するプロトコルにステーキングが集中していることは、以前より懸念されている。
イーサリアム共同創業者ブテリン氏も、単一点攻撃のリスクや少数の事業体のコントロール力が大きくなるリスクを指摘。ステーキングの多様性を図る「レインボーステーキング」を提唱したところだ。
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ディートリヒス氏らは、このままでは例えば、イーサリアム上で多く取引されているLidoのstETHトークンのようなリキッドステーキングトークンが、最終的にネットワークの事実上の通貨としてETHに取って代わり、システムの安全性が低下するのではないかと懸念している。
リキッドステーキングは、ノード運営者やガバナンス、法的遵守、スマートコントラクトなど様々な側面でイーサリアムに追加でリスクをもたらすとも指摘した。
リキッドステーキングとは
仮想通貨のステーキング金利を受け取りながら、その代替資産(ステーキング証明トークン)を運用できるDeFi(分散型金融)の仕組み。リキッドステーキングでは、従来ならロックアップされてきた資産の流動性(Liquidity)を解放できる利点がある。最大のサービスプロバイダーLido Financeでは、ETHをステークして債権トークンstETHを受け取り、レンディングの担保としたりDEX(分散型取引所)等で運用できる。
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ステーキング利回りを調整する案
ディートリヒス氏らは、ETHの年間発行量についての制限を現在の1.5%から0.4%まで引き下げるようにパラメータを設定することを提案した。ステーキングする量が多くなるに応じて、得られる利回りをこれまでよりも引き下げるものだ。
この提案については、コミュニティ内から異論も上がっている。
例えば、仮想通貨投資会社DBAのジョン・シャルボノー共同創設者は、ディートリヒス氏らの提案したパラメーターは現在のものとそれほど変わらないと意見した。イーサリアムのPoS(プルーフオブステーク)を調整することは不可能ではないかもしれないが、そのハードルは高くしておくべきと続ける。
その上で、ディートリヒス氏らの調整提案は過剰設計に感じられ、未知の結果を伴う可能性もあるので、ハードルを越えるものではないと主張した。
なお、イーサリアムステーキングに占める最大手Lidoのシェアは、1年前の約3分の1から約4分の1へと減少したところだ。
ステーキングの分散化は、米証券取引委員会(SEC)がイーサリアムを有価証券とみなすかどうかにも関連しているとされている。JPモルガンのアナリストは3日、Lidoのシェア低下などにより、イーサリアムが証券認定される可能性は低下したのではないかと意見している。
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