イエレン米財務長官、仮想通貨規制に関するSECとCFTCの対立に介入せず

異なる法的立場

米国のジャネット・イエレン財務長官は9日、暗号資産(仮想通貨)規制に関する証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の対立について、財務省が指揮を執ることはないと述べた。

米下院金融サービス委員会の公聴会で、フレンチ・ヒル議員は「連邦裁判所において、SECとCFTCは仮想通貨に関して一貫して正反対の法的立場をとっている」と指摘。イエレン長官に、財務省の金融安定監視評議会(FSOC)のリーダーとして、SECとCFTCをまとめ、両者が同じ見解を持つようにするために何をしているかと尋ねた。

イエレン氏は、SECとCFTCの見解の相違に裁定を下すのは、FSOCの仕事ではないと回答。FSOCは金融リスクへの対応として、すでに仮想通貨に関連するリスクについて報告書をまとめていると述べた。

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仮想通貨法案の成立に向けて

一方、5月に下院を通過した包括的な仮想通貨法案「21世紀のための金融イノベーション・テクノロジー法(FIT21)」について、残りの会期中、同委員会および上院と協力して、実現に向けた努力を約束するのかと尋ねられると、イエレン氏は、是非そうしたいと答えた。

喜んで約束する。これまでも生産的に協力してきており、良い結論に達するのを見たいものだ。

FIT21の主な目的は、デジタル資産に関する明確なルールを提供し、投資家と消費者を保護することだ。SECとCFTCが共同でルールを定め、デジタル資産取引の二重規制を回避することが期待されている。

CFTCに商品と定義される仮想通貨に対して新たな管轄権を与えると同時に、投資契約の一部として提供されるデジタル資産に対しては、SECの管轄権を明確にする。

提案者の一人であるダスティ・ジョンソン議員は、「顧客保護と市場監視を提供するために、CFTCとSECに明確性と規制権限を与える時が来た」と述べている。

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DeFiとカストディ

マイク・フラッド議員は分散型金融について、中央集権型のサービスとは異なる規制アプローチが必要かと質問。イエレン氏は、この問題についてはSECとCFTCが検討しているが、一部は銀行機関の規制の傘下に入る可能性があるだろうと答えた。

続いてフラッド議員は仮想通貨の保管に関して、保管のオプションやカストディアンの数が減少した場合、集中的なリスクが生じる可能性に対してどう考えているかとイエレン氏に意見を求めた。しかし、同氏は詳細が不明であるとして、コメントは差し控えた。

フラッド氏はビットコインETFの発行企業が利用するカストディ企業の数が非常に少ないという事実を提示し、強い懸念を表明しつつ質問を締め括った。

同氏は、SECが発行した仮想通貨保管に関する規則を覆す決議案を下院に提出した議員だ。

SECは、顧客の仮想通貨を保管する企業に対し、それらの資産を自社の貸借対照表に「負債」として計上するよう義務付ける規則を、会計公報121号(SAB121)で発行した。これは従来の会計慣行から大きく逸脱するもので、発行当初から、金融機関・企業にとって仮想通貨の保管コストが法外なものになると批判されてきた。

フラッド氏は、保管資産は通常バランスシート外とみなされてきたため、SAB121は仮想通貨の保管を検討している銀行にとって不公平なものだと指摘。5月には上下両院で、SAB121を覆す決議が可決されたが、バイデン大統領はこの決議へ拒否権を発動した

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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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