仮想通貨調査報告書や専門家の見解から見る「現ビットコイン市場停滞の行く末」

BitMEX CEOがBTC相場停滞の可能性に言及、「2,000USD(22.6万円)まで下がる可能性も」
香港の大手取引所BitMEXのアーサー・ヘイズCEO(JPモルガンの元アソシエイト)が、BTCの弱気相場は当面続くとの見解を示した。また、時期を同じくしてこれとは別に、JPモルガンの経営幹部がブロックチェーンへの期待を表明、一方で同社CEOは「ブロックチェーンは信頼する。BTCはそもそも眼中にない」と述べた。
機関投資家参入の動き、次フェーズ移行の見方も
一方で、モルガン・スタンレーが仮想通貨を「新たな機関投資家向け資産クラス」と位置付けた他、機関投資家資金が流入するグレースケールの投資信託の流入資金額が停滞相場の中過去最高に達するなど、仮想通貨への機関投資家の関心の関心の高まりが見え始めている。

ビットコイン価格の停滞はいつまで続く?

先日、香港の大手取引所BitMEXのアーサー・ヘイズCEO(JPモルガン元アソシエイト)がYahoo Financeの取材に答え、BTCの弱気相場は当面続くとの見解を示した

あまりその見解に関する詳しい内容が日本語で掲載されていなかったため、今回同時期に行われたJPモルガンブロックチェーン推進部門のトップとCEOの見解、またそれに対照的な機関投資家関連の動きを合わせて見ていこうと思う。

ヘイズCEOの定量分析:「過去時系列分析ではまだ下落の余地」

BitMEXの市場レポート「Bear Market Blues」によれば、BTCのボラティリティの欠落した弱気相場は、2019年か2020年まで続き、その間、2014年から2015年にかけて見られたのと同等の「壊滅的な弱気相場」が再現される可能性があると見解を述べた。

BitMEXの市場レポートが述べたビットコインの14年から続いた停滞相場は下に掲載したチャートの丸枠の期間に該当する。

BitMEXの市場レポートの概要は以下の通りだ。

  • 今回の弱気相場は、BTC価格が200日移動平均線(DMA)を下回った2018年3月12日(1BTC=9,152USD。約103万6千円)に始まった。
  • 相場をBTC価格のピークからトラフへの減少率で評価すると、今回は最大で67%の下落を記録。しかし、前回の弱気相場では最大87%、さらにその前の弱気相場では最大94%の下落を記録しており、まだ下落する余地があると見る。
  • また、過去の弱気相場ではBTC価格がDMAを大きく下回ってきた経緯がある。これを踏まえると、3月12日の9,152USDから75%下落した1BTC=2,000USD(約22.6万円)が現時点でのスイート・スポットと見る。
  • 引用元:BitMEX Crypto Trader Digest

    ヘイズCEOの定性分析:「相場が動かない理由にメディア露出の低下」

    仮想通貨市場が動きを取り戻すためにはCNBC、Bloomberg、Forbes、MSMといった経済メディアでBTCの露出が増えることが必要だが、最近はそれが目に見えて減っているという。

  • 大衆向けメディアは、市場に動きがなければ積極的に取り上げない。
  • そして大衆は、このメディアの報道に触れて初めて動き出し、黄金郷を目指す。
  • 大衆が黄金郷を目指す動きをメディアが察知、報道すると、増幅効果が生まれ、市場が動く循環に入る。
  • 現在は、これらの動きの前、すなわち、熱心な投資家やエンジニアが限られた専門筋/業界筋から情報を仕入れている(循環に入れていない)状況にある。
  • JPモルガンのブロックチェーン推進部門トップ:「価値の源泉はトレーサビリティ」

    上記とは別に、時期を同じくしてJPモルガンのブロックチェーン推進部門のトップとCEOが興味深い見解を示している

    まず、ブロックチェーン推進部門トップUmar Farooq氏の見解は次の通り

  • ブロックチェーンとイーサリアムに対する当社の信頼は厚い。企業ニーズに即したイーサリアム「Quorum」の開発に本格注力していることからもわかるだろう。
  • 話をわかりやすくするために、JPモルガンでも資産保有している金の延べ棒を考えてみたい。「どこで精製されたものかわからない」金の延べ棒と、「電子タグが付与された、不正開封防止シール付きケースに収められた」金の延べ棒では、市場はどちらにより高い価値を見出すだろうか。
  • 間違いなく後者だ。これを仮想通貨で実現するのがブロックチェーン/イーサリアム/Quorumである。
  • そうして、「プロトコルからアプリケーションまでの全てのブロックチェーン技術をフルスタックで提供する唯一の金融サービス企業がJPモルガンだ」と述べた。

    また同社CEOジェームズ・ダイモンは、今回のトーンは、これとはやや異なるものだが、ブロックチェーンに信を置くという企業ベクトルは一致している。

    ダイモン氏はロサンゼルスのカンファレンスにおいて、以前より「ビットコインは詐欺」と言及するなど厳しい見方を示した背景などから、ビットコインへの態度を軟化させたかと問われ一蹴、次のように述べている

    BTCのスポークスマンになるつもりはさらさらない。しかしブロックチェーンは信じる。ブロックチェーンは現実のテクノロジーだ。一方、BTCは法定通貨ではない。そんなものはそもそも眼中にない。

    今後に長期的にプラスな見方も多数

    投資銀行JPモルガンCEOは一貫してビットコインに関して厳しい見方を示しているが、米国内での投資機関の見方にも変化が現れ始めているのは事実だ。

    モルガン・スタンレーの報告書

    旧JPモルガンの投資銀行部門が分離独立したモルガン・スタンレーは、仮想通貨に関する調査報告書にて、仮想通貨の将来性に期待感を持たせる内容を公開している。

    同報告書内で、「急速に変化する主張」という項目でビットコインと仮想通貨の現在のテーマを「新たな機関投資家向け資産クラス」と位置付けたのだ。

    出典:Morgan Stanley

    同報告書では、機関投資家の参入に以下3点の障壁があると掲載しているが、世界的な金融機関グループである同社がこのような掲載を報告書で提出することは、今後の金融機関の見方として注目したい点だ。

    • 不十分な規制とそれに伴う風評被害のリスク
    • 仮想通貨とプライベートキーの管理を請け負うカストディーサービスの欠如
    • 大きな機関投資家が仮想通貨市場に参入していない事実

    米仮想通貨投資会社グレースケール報告書

    また、米仮想通貨投資会社グレースケールが、第3四半期にトータルでおよそ91億円の資金を調達したことを発表。流入している資産のうち、70%はヘッジファンドやペンションファンド(年金ファンド)、エンダウメント(米国の名門大学の財団)など機関投資家のものである同投資信託に低迷相場を続ける仮想通貨関連商品への資金流入が過去最高に達したことは、今後にプラスの見方が出ている大きな注目点だ。

    出典:グレースケール調査書

    グレースケールの資産流入の動きに対し、JPモルガンに以前勤めていたSonnenshein氏も、今回の暴落相場をプラスに捉えている発言を行なっている。

    投資家は、この暴落をエクスポージャーの比率を上げるチャンスであると捉えている。

    価格の影響で投資のペースはスローダウンしていない。むしろ投資家との関係が強固なものになった。

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    2018年の仮想通貨価格が低迷を続ける中、グレースケールの資金調達額が前年同期比13倍の370億円を記録した。調査書では機関投資家の動きなどから、強気市場へ転じるサインとしている。
    金融企業の最大手の一つであるモルガン・スタンレーが仮想通貨に関する調査報告書を公開し、文書内でビットコインを新たな機関投資家向け資産クラスと位置付けした。注目の内容を抜粋した。

    画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
    「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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