Web2オンラインゲームとWeb3ゲームの大御所が語る、業界の課題点とイノベーションの展望|WebX2024
プロジェクトの功績とコミュニティの重要性
CoinPost株式会社が企画・運営し、日本国内外の主要プレイヤーが一堂に会するグローバルカンファレンス「WebX 2024」において、「Game-Fi導入の課題及びイノベーションの展望」と題したトークセッションが行われた。
日本市場に特化した独立系ゲーム業界コンサルティング会社として2013年に設立したKantan Games IncのSerkan Toto最高経営責任者をモデレーターとして、ブロックチェーンゲーム業界を代表するスピーカーが、Web3における成果と今後の展望について語った。
- Yawn Rong氏:FSL (STEPN, STEPN GO, MOOAR and Gas Hero) 共同創設者
- Sebastien Borget氏:The Sandbox 共同創設者兼 COO
- Angela Son氏:NEXPACE メイプルストーリー・ユニバース ビジネス開発・パートナーシップを統括
大手上場企業のゲーム開発企業ネクソン(NEXON)のトップタイトルであり、世界で2億5,000万人を超えるユーザーを持つ人気オンラインゲーム「メイプルストーリー」をWeb3に導入する「メイプルストーリー・ユニバース(MapleStory Universe )」。
Web3プロジェクトに取り組む理由についてAngela Son氏は、「コミュニティこそがゲームの全てである」という“気付き”が根幹にあると述べた。
Son氏は、21年間にも及ぶメイプルストーリーの成功は、コミュニティが創造した共有体験によるところが大きいが、Web2バージョンでは、コミュニティがゲームや環境に溶け込む構造が存在せず、最悪の場合ファンの創作はIPの侵害にもなる可能性があると指摘。
次世代のメイプルストーリー・ユニバースで、単一のクライアントゲームを超えることを目標にしていると語った。
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コミュニティとクリエーターへの報酬
ユーザー主導のWeb3ゲームプラットフォーム「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」の強みについて、Sebastien Borget氏は、強力なローカルコミュニティの育成を挙げた。特にアジア圏では、400以上のブランドと600万人のユーザーを抱えているという。
例えば日本では、進撃の巨人や北斗の拳、キャプテン翼などのマンガ作品のIP(知的財産)とのタイアップをはじめ、渋谷109やエイベックスとのパートナーシップを構築。それぞれとの共同制作を通じて、メタバースやNFTを展開してきた。
Borget氏はこのようなパートナーシップは、「アバターとデジタルアイデンティティの所有、プレイ体験やブランドの公式NFTの所有を通じて、プレイヤーとクリエイターの両方をメタバースの概念にオンボードするための戦略的なものだった」と述べた。
また「ユーザーが生成するコンテンツの力」を重視しており、クリエーターの貢献に報いるため、サンドボックスではSANDトークンや他の報酬を提供。今年は、年間6桁の収益を得るクリエーターも誕生したという。
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ユーザーのオンボーディングの課題
Yawn Rong氏は、次世代のフィットネスアプリ「STEPN GO」の開発にあたり、およそ1年をかけて前作の「STEPN」の問題点や課題を掘り下げ、いかにしてWeb2ユーザーのWeb3へのオンボーディングをスムーズに行えるようにするかを検討したと語った。
その一つが、STEPN GOの新しいゲームトークン「GGT」の導入により、手数料の支払いに使用できるようにしたことだという。これまではソラナチェーンなどを使用する必要があった。
また、「ハウスシステム」によって、Web3の経験がないユーザーでも、Web3ユーザーの友人や家族からスニーカーをレンタルすることによって、利益を得ることができるようになったことも大きな進展だ。まずはWeb3の世界に足を踏み入れて、お金を稼ぐ経験をしてもらうという意図がある。
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マルチプラットフォームへの対応
モデレーターのToto氏は、巨大な日本のモバイルゲーム市場(コンソール市場の3倍規模)に言及し、パネリストにモバイル市場への進出について質問した。
Son氏は、メイプルストーリーがPCゲームであることが、ゲームの特徴であり良さでもあると述べた上で、Web3版のメイプルストーリー・ユニバースでは、インターネット上のマーケットプレイスでNFTとゲーム資産のトレードが可能になることを強調。
PCでゲームをプレイしなくとも、モバイルから、エコシステムの構築で大きな部分を占めるトレードにアクセスできることの意義は大きいと述べた。
Borget氏は、サンドボックスでは、「制御の質やパフォーマンス、読み込み速度、複数のプレイヤーや広大な土地などを可能にするメモリの消費量」という点で満足な結果を得られていないため、モバイル版のリリースを延期したと指摘した。
同氏はサンドボックスが、作成ツールやボクセル編集、3Gやアニメーションツール、コード不要のゲームメーカーなどを備えた「一体となったプラットフォーム」であることを強調。ゲームのエコシステムを充実させるアプローチを採用し、ゲーム開発者と共同でゲームを制作し、App StoreやGoogle Playなどで、公開することに注力すると述べた。
より多くのユーティリティを提供し、所有するデジタル資産の相互運用性を高めることが狙いだ。
日本市場の特異性
Yawn氏は、日本市場は他の市場と異なり、ユーザーが製品に対してお金を払うことを厭わないため、GameFiにとって「実際に機能するモデル」となると指摘した。
日本のユーザーはアプリを利用して実際にエクササイズ行い、プロジェクトに参加することで、エアドロップなどで対価を手にした。昨年は1億トークン(4,000万ドル=約58億円相当)がエアドロップされたという。
そして日本では、「ユーザーが獲得したトークンを使用してエコシステムに還元するという、より調和の取れたエコシステムを構築しやすい」とRong氏は強調。GameFiにとって理にかなった環境であるとまとめた。
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