米SEC、一般企業にブロックチェーンデータ提供の公募を開始|仮想通貨の規制に向けた動きでも注目
- 米SEC、ブロックチェーンデータ提供する企業を公募
- 米証券取引委員会(SEC)がリスク監視やコンプライアンスの執行活動などの目的のためにブロックチェーンデータを提供できる企業の公募を開始した。データを通じて不正アカウントの追跡が容易になることが予想される。
米SECがブロックチェーンデータ提供企業を募集
米国証券取引委員会(SEC)がリスク監視やコンプライアンスの執行活動などのサポートを得る目的で、ブロックチェーンデータを提供できるベンダー(企業)を公募していることが、SECの告知から明らかになった。
公式サイトに掲載された「Sources Sought Announcement(要請告知)」によると、ベンダーを介し、「入手可能な情報の範囲や取引の詳細などを含む、最も広範囲で使用されているブロックチェーン元帳のデータを取得する」ことが目的だ。
SECが本要請通知を発行した目的は、大・小規模ビジネスの可用性と技術的能力を判断するための市場調査の実施である。ブロックチェーンデータを提供し、リスクの監視、コンプライアンスの向上、デジタル資産に関する委員会の方針の通知といったSECによる取り組みを支援できるベンダーを求めている。
具体的にはベンダーはブロックチェーンデータを抽出し、容易にレビュー可能な形式に解析する必要があるほか、それらのプロセスの概要を、データの完全性および正確性に損失がないことを保証するための検証手順とともに提示することが求められる。
主な条件
米SECが今回発表した文書の中でも、主な要請条件は以下の4点である。
- 取引量に基づき、最も広範囲で使用されているブロックチェーン台帳のデータ抽出を定期的に提供する
- 「レビューおよび調査を可能にするためにデータを整理・正規化する」
- 属性データ(例:暗号化アドレスの所有者の識別情報)等を含む利用可能なデータから、洞察を引き出すキャパシティを提供する
- 提供されたデータの正確性および完全性を立証するための手段を提供する
米SECに協力を申し出る企業は2月14日までに、簡潔なキャパシティー・ステイトメントを(最大5ページ)をメールで送信する必要がある。
SECの動向とその重要性
SECのコンプライアンス検査局(OCIE)は先月、仮想通貨が「2019年の監視活動の6大優先事項」であることを発表したばかりである。こちらは「デジタル資産の著しい成長と、それに伴うリスク」を考慮したもので、重点は「仮想通貨の有価証券化」に置かれていた。
そのため、今回の発表の真の目的は仮想通貨の所有権の断定や有価証券化の判断にあるものかと推測される。
また不透明性を理由に申請を却下し続けているビットコインETFの承認問題に関しても、属性データを利用して特定のアドレスとアカウントを紐づけすることが可能になれば、不正なアカウントの追跡が容易になる。
SECの一連の活動を、「デジタル資産市場の成長やイノベーションを妨げる過干渉」と批判する声も聞かれるが、外部にリアルタイムな洞察の提供を求めるというアプローチからは、SECから新たな技術を丁寧に見極める姿勢が見られる。
実際、SECは昨年時点から仮想通貨コミュニティーから意見を募る「フィンテック・メールボックス」を設けているほか、10月にはDLT技術(デジタルアセット含む)等のフィンテック関連案件への窓口となる「FinHub」を開設している。
2018年8月には米国麻薬取締局(DEA)の代理人であるリリタ・インファンテ氏が、「プライバシーを重視した暗号はビットコイン(BTC)よりも匿名性が高いが、機関は追跡する方法を知っている」と述べている。
ブロックチェーンは実際に私たちが人々を識別できるようにするための、たくさんのツールを提供してくれる。私は実際に彼らに仮想通貨の利用を続けてほしい。
金融庁や米SECなど、政府機関が仮想通貨関連の規制に乗り出す背景には、決してネガティブな要素のみが潜んでいるわけではないと言えるだろう。
米国における仮想通貨関連の規制は連邦政府レベルでは未だに法案が通っていない状況だが、州政府レベルでは確実な動きが進んでいる。
最近では、米ワイオミング州で法案として提出されていたデジタル・アセットの法的定義・分類を明確化する法案が可決し、3月1日から施行することが判明している。
また1月にはニューハンプシャー州で仮想通貨での納税に関する法案が提出されたほか、先週行われたフロリダ州の裁判では仮想通貨が「決済手段」と「交換の媒介」と位置づけられた。
そのほかでも、コロラド州やワシントン州でも仮想通貨関連の法案が提出されており、アメリカの州単位での規制状況が着実に進んでいると言える。
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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します