他人のPCで仮想通貨マイニングを行うコインハイブ事件、男性に無罪判決|裁判の争点まとめ

コインハイブ事件で男性に無罪判決、横浜地裁
横浜地裁は27日、サイト閲覧者のPCを使用して匿名通貨Moneroのマイニングを行うコインハイブ事件に関連し、男性に無罪判決を下した。社会的関心を集めていた裁判の争点と、匿名通貨ZCashのCEOの見解は。

コインハイブ事件で男性に無罪判決、横浜地裁

サイト閲覧者のPCを使用して仮想通貨モネロのマイニングを行う「コインハイブ」をめぐる裁判で、横浜地裁は「無罪判決」を下した。被告人は、ウェブデザイナーの男性(31)だ。

コインハイブ事件は、これまでの経緯もTwitterなどで大きく拡散され、傍聴人が殺到するなど社会的関心を集めており、関心度の高さが伺える。

男性は2017年10月30日〜11月8日の間、自身のウェブサイトに「コインハイブ」と呼ばれる仮想通貨モネロの演算を行うプログラムを設置したところ、ウイルスを仕込んだとして警察に摘発され、「不正指令電磁的記録(コンピュータウイルス)取得・保管」の罪で横浜簡裁から罰金10万円の略式命令を受けた。

その後、これを不服として正式裁判を請求していた。

不正指令電磁的記録取得・保管罪(不正指令電磁的記録取得等)

第168条の3

正当な理由がないのに、前条第1項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

警察庁によると、閲覧者のPCを無断マイニングしたとして、18歳〜48歳の学生や会社員など全国で計16人を検挙しており、内3人が逮捕されている。

Coinhiveとは、サイト訪問者がページを閲覧している間に仮想通貨をマイニングさせてサイト運営者が収益を得るサービスで、ネット広告の代わりとして作成された。

HTMLにCoinhiveが提供する「数行のコード」を埋め込むことで、サイト閲覧者のブラウザからCPUを動かし、匿名性通貨「モネロ」のマイニングを行うことが可能で、獲得したモネロは、サイト運営者7割、Coinhive3割の比率で山分けされる仕組みだという。

本来は、仮想通貨マイニングを行うコミュニティーが、余剰分のCPUパワーを貸し合う善意の目的で作成されたとされる。

裁判の争点

「こういう形でクリエイターが取り締まられると、IT業界に良くない」として、罰金10万円の略式命令を不服として裁判に踏み切った男性。

コインハイブ事件の争点は、以下の3点だ。

  1. コインハイブは、不正指令電磁的記録にあたるか
  2. 「実行の用に供する目的」があったと言えるか
  3. 故意があったと言えるか
の3点と、「不正指令電磁的記録保管罪」の解釈について争点となっていた。

IT業界に詳しい中島弁護士は以前、「他人のパソコンに対し、所有者の意図に反する”不正な指令”があったどうかが争点になる。」「一般的な解釈では、不正かどうかは社会的に許容されるかどうかになるが、コインハイブは新しい仕組みなので、裁判官によっても判断が分かれる可能性もある」と指摘していた。

コインハイブ事件に関して、警察側の主張は以下の通りだ。

  • 訪問者の同意なし(明示せず)に、訪問者のパソコンを使用して仮想通貨マイニングを行う行為は、違法性がある。
  • 訪問者の「了承なし」のマイニング行為は、社会的な合意が得られているとは言えず、報酬を得るために他人のパソコンや電力を使用することは、許容範囲を逸脱している。

マイニング(採掘)行為は、インターネット上で仮想通貨を獲得できる手段の一つだが、サイト上に仕込まれたプログラムにより、無断で閲覧者のパソコンやスマートフォンにマイニングを行う不正サイト急増が国内外で問題視されている背景もあり、PCの動作が重くなったり、不要な電気代が発生することから、「違法の可能性」を指摘する専門家もいる。

被告側の主張

対して、被告側は、以下のように主張している。

  • コインハイブの技術自体は面白く、サイトのユーザビリティを考え、広告に代わる新しい収益源として試験的に導入した(1ヶ月で1000円弱の収益が生じたが、条件を満たしておらず、受け取っていない)
  • 動画広告やバナー広告など、了承を得ずに動くプログラムは他にも存在している
  • インターネットにおいて、プログラミング言語であるジャバスクリプトは勝手に動くものであり、広告も個別的な同意なく動作している。個人情報漏えいなどの被害が生じるわけでもない。(弁護側)
  • 道義上の問題であり、法的責任を追及される刑法上の問題ではない。(弁護側)

広がる波紋

男性は、略式命令を受けたあと、「コインハイブに興味を持ったエンジニアが同じ目に遭わないように」注意喚起するため、家宅捜索と取り調べまでの経緯をネットに公開したところ、大きな反響があり、テレビ局などマスメディアでも取り上げられている。

周囲のエンジニアも、

問題点が”了承を得ずに動くプログラム”とするならば、ネット広告やアクセス解析と変わりない。

「社会的に許容されるかどうか」という判断基準も、合法か違法かの線引きが曖昧であり、技術革新に対してエンジニアが萎縮しかねない(技術者の意欲が削がれる)。

などと懸念を表明しており、警察の取り調べ方法や摘発に対して反発する声も寄せられていた。

プログラムに関する類似事件

2019年3月、インターネット掲示板に無限アラートが表示されるURLを書き込んだとして、兵庫県警が不正指令電磁的記録供用未遂の疑いで、13歳の女子中学生を補導、男性2人を書類送検した。

メッセージダイアログが無限に表示されるプログラムの内容は、

クリックすると、画面の真ん中に「何回閉じても無駄ですよ〜」という文字や、顔文字などが表示され続ける

というイタズラだが、補導の基準について、Google Chromeのwebセキュリティ担当者などは「法令(不正指令電磁的記録供用)の拡大解釈ではないか?」と、警察の判断を疑問視。

よくあるメールマガジンや有料会員ページへのアナウンスと仕組み自体が同じであり、曖昧な定義で逮捕されるリスクが生じることで、日本のIT業界が萎縮してしまう点についても懸念されている。

なお、CoinPost編集部は26日、日本初のミートアップ”Intro to Zcash Discussion.“を開催していた、匿名性通貨ZCashのCEOにコインハイブ事件について見解を伺い、以下の回答をいただいた。

ZCash CEO Zooko Wilcox-O’Hearn氏

日本の規制当局は、法整備に向け前進していると思うが、新たな技術を試す際に、エンジニアの萎縮を避けるために、しっかりと規制を定める必要がある。また、徐々にではあるが、そうしたグレーゾーンは少なくなってきていると感じている。

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仮想通貨モネロのマイニングを他人のPCを使用して不正に行ったとして、全国10県警が「不正指令電磁的記録(ウイルス)供用容疑」などで計16人を逮捕・書類送検した問題に関連した裁判が、9日より横浜地裁で行われる。検察側、弁護側双方の言い分は。
仮想通貨時価総額10位のモネロ(XMR)のマイニングの約1%がCoinhiveを利用して行われている事がドイツアーヘン工科大学が発表した論文で明らかになった。

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「仮想通貨」とは「暗号資産」のことを指します

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